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悪徳は栄える、正義を踏み潰して

「……………ずいぶんと自信があるんだね?」


公爵令息君はそんなことを嘲るように言ってくる。

まぁ、普通は信じんわな。


「そりゃそうだろ、だってウチの子たち強えもん。今朝方の竜騎士駐屯地の爆発、あれウチの軍がやったんだぜ?」


シン、と教室から音が消える。

え?マジで?嘘でしょ?みたいな空気だな。


「………君は今自分がなにを言ってるのかわかってるのかい?これを僕が父上に報告したら――――


国家反逆罪の(・・・・・・)自白をしまし(・・・・・・)たがなにか?(・・・・・・)

捕まえれるもんならやってみろよ。ただし


――――――――――garden(中庭だ) do it(やれ)


俺はニヤニヤと、自覚できるほどにむかつく笑みを令息様に向けて挑発する。

そして通信機に吹き込んだ空爆の合図に応え、上空で王国軍を警戒しつつ待機していたF15から


「copy GBU'(誘導爆弾)s away(投下)


というように了解と爆弾投下の合図が返ってくる。


その、瞬間


ズドンッ!!


と腹の底に来るような大音声と爆風が教室内をかき回す。

GAINSと呼ばれるGPSと慣性誘導の複合システム、並びにレーザー誘導という二つの誘導システムによって誤差10センチメートル単位の精密な着弾を可能にする1000ポンド級ペィヴウェイⅢ誘導爆弾による空対地攻撃である。

それは学園の中庭に着弾し、爆発。

そこにある植物やベンチを衝撃波でもって千々の破片にし、炸裂した弾頭の断片によって庭を囲む壁をズタズタにしてしまっていた。

この爆弾の効果半径は50メートルを越える広さだ。学園の壮麗な中庭はその全てが破壊の渦に叩き込まれていた。

スゲー、久々に見たぜ空爆の跡地。シリアでPKOやってたとき以来か。なつい。


俺は仁王立ちのままだがハンスもその他も皆風圧で吹っ飛ばされるか倒れ付している。モヤシどもめ。

体幹を鍛えろ体幹を。


「このとおりあれをやったのはウチのやつらで間違いないし、俺の軍勢はいつでもどこでも好きなとこを吹っ飛ばせる。ゆめゆめ忘れるなかれ、だ。軍を差し向けるなら覚悟しろよ。」


そういってやると、坊っちゃんは悔しそうにこちらを睨み付けて


「恫喝と暴力による強制支配しかできないのか貴様は。

――――――――この狂人め。」


と、忌々しげに吐き捨てた。

ははっなにを今さら。



「そんなもん自覚済みだし常々妹とかにも言われてることだ。

今更言われたってそれがどうかしたか?としか言いようがねぇよ。」


俺の返しに、今教室で意識を保っている数名の豪の者は息を飲んだようだ。

自覚してなお、貫くのか、と。

そんな狂気に、狂気とわかった上でなお堕ちるのか、と。

お前のやり方(破壊と恫喝)は人間として忌むべき事ではないのか?と。


でも、当たり前だろう?

俺はテメーのお気持ちを理由にして「この世界を平和にする」なんつー無理難題を目的に掲げる、エゴイズムの塊みたいな人間なんだ。どんなことでもやるさ。

俺は正義じゃない、そんなもんになる気もない。


目的を達成するにはどこまでも汚れよう、

目的を達成するにはどこまでも内に潜む害悪なる本能に従おう、

俺は、正義の味方じゃなくむしろ虐殺者(・・・)であり暴君(・・)であり脅迫者(・・・)であり――――――――人類の敵(パブリックエネミー)だ。


少なくとも、今は、そうあらねばならない。

誰もが恐れる、絶対なる恐怖であり悪徳でなければ。


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