公爵令息、バーサス
「…………君。だれ?」
とりあえず誰何だよね。そんで敵か味方か見極めよう。
「え、あ。ごめんよ、僕は東部公爵令息のハンス=ヴァイツロイ。よろしくね。」
あぁ、例の公爵さまの息子か。
ホワイトに近い髪に金色の目をした美少年、俺に声をかけてきた男はそう名乗ると、ふわりと笑った。
カラーリングのせいなのかなんなのか、その笑みはどこか脆く壊れそうな印象を受けて。
俺は、一言。
「なるほど?公爵から俺に取り入ってこいと言われたんだな?で、庇護欲をそそる仕草があんたの十八番って訳かい?」
まぁ、そーゆーことだろうな。
というか公爵様につけといた監視から
公爵はなにやら息子に吹き込んだようだ
と報告があったし間違いないね。
それを指摘してやると、ハンス君はうぐ、と喉をならして
「………大体みんな気づかないものなんだけどね。男性も、女性も。」
認めた。
潔ぎいいな、まぁこれ以上食い下がるのは無駄だとわかってんだろうな。
「そりゃあ君、そいつらが阿呆なんじゃない?もしくは気づかないふりしててお前が道化じみて踊らされてるか、だな。」
俺は優しいから「バレてますよ」と教えてあげたけどね。
少年の顔がひきつる。
親はそこそこポーカーフェイスが様になりかけてたけどこっちは全然だな。
「ちょっと待ってな?」
俺は一旦話を切ってから東部方面軍の基地へと通信を繋ぐ。
「何してるの?」
公爵の息子が訝しげに聞いてくる。
なにって…………。
「報復。大方王子と騎士の件で俺が暴れるのを恐れたんだろうが、嘗めたちょっかいかけてきたんで警告をね?」
まぁ一歩遅く、すでに竜騎士の基地が吹っ飛んだあとですがそれはそれ。
今回はなにを吹っ飛ばそうかな。
あ、いいこと考えた。
「面倒くさくなってきたし公爵にやりかえすより王宮吹っ飛ばそうかな。そしたら誰からもちょっかいかけられないようになりそうじゃね?」
国家反逆罪確定のヤベー発言だがみなさん聞こえないふりしてますねぇ。関わりたくないらしい。
まぁやったらお隣の帝国との間でパワーバランス崩れて確実に軍事進行を招きますがそれ口実にお隣の国も潰して見せしめにできるしね。
俺の主目的は恐怖と暴力による強制的な世界平和だから目的にも沿う。
倫理?人道?
んなもん12にもなってない少年兵撃ち殺したときそいつの頭と一緒に粉々になったわ。
そんなもん持ち合わせてたら目的達成の邪魔になるしな。いらないいらない。
アホみたいな難題を成し遂げようってんだ。これくらい狂わなきゃ確実にポシャるよ。
「…………国と戦争を始める気?」
喉をならして、彼はそう問う。
それも、いいかもね。
一旦国ぶっ潰して自身に友好的な勢力をトップにすげ替える何てのは常套手段だし。
ただ、彼の言葉には間違いがある。
「はっ、戦争?自惚れるな。俺とタスマニアが敵対したら戦争になんぞならん。
起こるのは、俺の軍からタスマニア軍に対する一方的な大量虐殺、蹂躙だよ。」
現代軍隊と前近代軍隊が“戦える“などと、“戦いになる“などと―――――――いつから貴様は自惚れていた?
と、そう突きつけてやった彼は、完全に絶句していた。