思わぬ副産物
朝日が上るより少し早めに起きた俺は銃の手入れをした後、腕立てや縄跳び等の筋力トレーニングを限界まで行っていた。
「なな………ひゃくっ………。」
人間の腕立て伏せの限界は300程度と言われている。
それの二倍を超える数をほかの筋力トレーニングと合わせて週2ペース、それ以外の日にはランニングや山で狩り。
土日はしっかりと体を休めて回復させる。
これが俺のディフォルトだ。こういった日々の積み重ねが40キロ超の装備を背負っての行軍も綽々こなせる体を作る。
トレーニングの〆の腕立ては、汗が吹き出し、視界がブラックアウトしそうになってもやめない。
オールアウトからの超回復が良い筋肉を生むのだ。
銃さえあれば良いってもんじゃないんだよ、筋肉も必須なんだよ筋肉も。
750まで数えたところで、地面にぶっ倒れる。
あーー死ぬ。
でもアドレナリンどぱどぱでクソ気持ちいい。
「……………おっ。」
そんな風に俺が無防備な姿で十分ほど休憩していると、視界のはしにチラリと光が見えた。
夜明けだ。
「…………ランニングするか。」
たぶん俺はマゾヒストだ。
町人たちが起き出し活動を始める明け方、俺が町を一周して戻ってくると妹も起きだしてきた。
「おはよう、マリア」
「んー…………。」
妹は朝が弱いです。
しかもここの宿はとにかく布団が気持ち良く、宿で有名ってのもうなずけるフカフカ加減だった
マリアが覚醒するのを待つ間に店の人に聞いてみたところ近くの町で卵のために恐鳥類を飼育しているところがあるらしく、|産卵を終えた恐鳥の羽毛を格安で譲ってもらってそれを布団にしているんだとか。この恐鳥ってやつがまたすさまじい。ガタイを太くしたダチョウのような外見で、嘴には鋭い牙まで生えている。その恐鳥のなかでもハンサ種は馬よりも早く強靭な乗り物として使える他、ここの宿の布団みたいに良質な羽毛製品を産み出すのだそうだ。
本来はかなり高価な羽毛だが、距離が近いから輸送の手間が少なくて、比較的安価で買えるらしい。
そりゃあマリアもいかにも起きたくないオーラを出すってもんですよ。
宿に備え付けられた井戸で歯を磨いたり顔を洗ったりして目を覚ましていると、ここまでつれてきてくれた兵士たちもやって来た。
四人で朝の準備をして宿の受け付けに戻り、チェックアウトを済ませる。
「く~~~~っ!ぷはっ。」
声を上げて、延びをして体を解す。
気持ちいい。
「あ、そういえば。」
と、ふと気づいたことをみんなに話してみる。
「この町治安良いよな。なんかあったの?」
明け方、俺が一人で町中を走っていても襲われなかった。
この世界の文明レベルなら押し倒されてヤられてたとしてもおかしくないのに。
まぁHKやらM45やらナイフやら持って歩いてるから返り討ちにするんだけど。
「しかもスラムも無いし、」
その名残らしき汚い区画はあったが、人の気配が全く なかったのだ。
スラムに住むような人間、孤児とか浮浪者の多さは治安悪化に直結するので、スラムに人がいないことが治安が良いことと関係してるのは間違いない。
「それ、は、おねぇちゃん、が孤児や浮浪者、他国からの難民、を、片端、から、うちに引き入れた、から。」
マリアが答えを言う。
あぁー、なるほどー。
うちの軍に人手がほしくて何年もかけて100万単位で孤児やらなんやらを集めたからな。
膨大な数の、“後がない人間“を集めた。1000万超えそうになるまで、他領からも集めた。
軍隊として機能するのが後方部隊を含めて約200万人、あとは生産、建設、開発とかに回している。
タスマニアは覇権国家クラスの超大国だから人口6000万人
その6分の1をうちの軍で集めたわけで、これはタスマニア国内の貧しい人間たちの割合とほぼ同一だ。
そりゃ国内のスラムが根こそぎ無人になるわ
恐ろしい。
「報告によるとタスマニア国内全域で著しい治安の向上が見られるそうです。」
マイクが教えてくれる。
そうか、そうなんだ。今知ったわ。
思わぬ副産物に少し上機嫌になりつつ、車を預けた衛兵の詰め所へ。
BRVを返してもらって乗り込んで、出発する。
今日の昼頃には目的の町に到着する予定だ。
エールの町というだけあってそこのビールは格別な味に違いない。
今から楽しみだ。
治安悪化の要因は沢山考えられますが、貧困層の数が多いこともそのひとつです。
ですので貧困対策をしっかりやらないイン〇やアメ〇ケンは治安がやばいです。