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軍需物資

というわけでやって来ました防疫部。

いつも隣に居るアンや俺の愛しのマリアは留守番です。

前者は俺が指示した任務の指揮をやってるだろうし、後者はなんかまた用事らしい。


防疫部のトップ、防疫部長に案内されて施設を見て回る。

ICを作ったときに使った、クリーンブース、それを部屋全体に応用した無菌室が各所にあり、その中のようすを廊下からガラス越しに見ることができる。

そこではポリマーコートと特殊樹脂製の不織布で作られた防護服と、呼吸時に空気をフィルターに通して有害物質を濾過する、所謂ガスマスクを装備した職員が作業をしていた。



防疫部長いわく有精卵を使ってウィルスを培養し、ショ糖液を加えて高速遠心分離機にかけることでウィルス粒子を取得。

そいつをエーテルで感染力を無くし、かつ発症しないように処理することでワクチンというやつは作られるそうだ。

「まぁマリアさんからの受売りですけどね。」

と言いながら恥ずかしそうに頭を掻く彼にはどことなく愛嬌がある。



というか、あいつ(マリア)、薬学とか医学にも通じてたのか……………。

おねぇちゃんちょっとついてけないよ。


抗生物質についても、青カビから作られた世界最初の抗生物質であるペニシリンや、結核に有効なストレプトマイシンなどの薬を研究、製造しはじめたそうだ。

これらは微生物が持つ、コロニー(勢力)拡大のための武器である“他の細菌を攻撃する物質“を利用しているらしく、どの細菌から出てくる攻撃物質が何の菌に対して効くのかという研究を進めているらしい。


是非とも頑張ってほしいところだね。


彼らの作業を見ていると俺が関わった覚えのない機器もちょこちょこ見え、どうやら開発部のやつらとマリアで作っていたらしい。後で労ってやらないとな。


と、思いながら俺は防疫部の施設に別れを告げ、

陸軍から回してもらった車両に乗り込む。


おや?ハンヴィーじゃないなこれ。


「あぁ、こいつはハンヴィーの後継として開発部が作った新車両ですよ。ハンヴィーの弱点だった地雷対策や電磁パルス対策、装甲の脆弱さを改善した車両です。」


運転手がそんなことを教えてくれる。電磁パルスの概念はたぶんマリアが教えたんだろうな。



うーん、あっちのアメリカ軍でもハンヴィーの後継としてJLTVと呼ばれる計画が進められ、L―ATVという車が採用されたらしいが、これはそれと同じようなもんってことかな。

外装デザインは、これたぶんマリアが関わってるな。L―ATVと競合してたBRV-Oっていうのにかなり似てるし。

JLTVでコンペに出てきた車両の中では一番デザインがマリア好みだったやつだ。



「そうか、なかなか良いなこれ。後で開発部の奴等にはなんか奢ってやるとしよう。」


「あはは、そうしてやってください。ボスみたいな綺麗なご令嬢に労われると奴等もやる気が出るでしょうし。」


にこやかに和気藹々と雑談しながら進み、俺は開発部の施設群に到着した。

いくつもの石油貯蔵庫や製造のための工場施設、そして金属加工用の巨大な高炉や転換炉が立ち並ぶのが遠くからでも見える。

この世界にある冶金用の高炉はふいごなどによって熱量を保ち、うちでも最初はそのような仕組みだったが、現在では自動化されている。

兵器製造のみならず、資源として購入、採掘した鉱石を金属に加工したり合金として溶かし合わせることもここで行えるのだ。




―――――で、今見ているのは、UV―LEDと、そのついでで作られた白色LEDのタクティカルライトである。



タクティカルライトについては夜間戦闘とかでも役に立つ…………と思ってたら更になんか出てきたので試しに使ってみる。


…………お前ら(開発部)、なんだこれ。

光学系と赤外線、二種類のタイプを1つに組み込みスイッチ操作で切り替えられる暗視装置だと?

クソヤバいなおい。

しかもそれぞれのモードにしたときの性能としては前世地球のとそこまで変わらんぞこれ。


………ライトの意味。

まぁいいけどよ。


で、問題はUV―LEDだ。

こいつは紫外線を照射するライトに使い、いろいろなものを紫外線殺菌するために開発してもらった。

そんなかでも軍用の保存食を作るのがメインの目的だな。


こいつによって消毒した真空のプラスチックパックに食料を詰めて密閉することで、保存性の高い持ち運びできる飯が作れる。

食料自体については150℃で2秒ほど加熱することで殺菌するか、調理の各工程で材料の洗浄とUV―LEDによる紫外線消毒を行う。


これらの行程は全てクリーンルームで行われなければいけないが、その設備ならもう建設可能だからな。


問題は今のとここいつを製造するのに適した部署がないってことだ。クリーンルームを保有してるからと各種の菌なども扱う防疫部に頼むわけにもいかんし。

新しくレーションを製造する部署でも作るか。

そんなことを考えて話したら


「すみません、意見具申いたします」


開発部の人が手をあげた

彼いわく


「レーションを製造する部隊を新規で作るなら、この機に製造と開発の部署をキチンと分けていただきたいのですが。」


だそうで、採用することにしました。


言うなれば彼ら開発部はこれまで軍需企業1つぶんの仕事、とくに製造と開発を1つの部署で行っている状態だった。

そんな状態では分業も糞もない。

有名な戦闘機製造会社であるロッキードだって、その中には開発や製造といろんな部署があるのだし、そろそろ開発と製造はキッチリ分けて編成した方が良いとは俺も思うし、彼の言い分はまっとうだ。


早速再編成しておかねぇと。



と、こんな感じで開発部で少し話し込み、UV―LEDをレーションの除菌処理に使う他にも、防疫部の無菌室に取り付ける案が採用された。入り口とかにこいつを照射する装置を設置して、中に入る人間を消毒するという使用法だ。


これの他にはボディーアーマーの素材だったりの相談を受けて、その日は解散した。




帰りの車で運転手に話しかける。


「ちょっと遠出したいんだが良いか?別の町まで、そうだな、エールがうまい町が良い。」


エールというのはビールの一種だ。前世の主流であるラガービールが爽やかなのに対してこいつはまろやかで芳醇な旨味を持つ。

今回は開発部と防疫部の連中にこいつを飲ませてやろうと思ったのだ。

現地まで行って俺が直接買い付けてくるつもりで。


ま、視察させてくれたお礼兼頑張ってくれてるご褒美ですわ。

他の部隊のみんなには内緒だよ?



「エールですか。

王都近くの都市でビール作りで有名な町があるんでそこに行きますか?」


そんなことを運転手が教えてくれる。おっいいじゃん。そこにしよう。


「決定、そこ行くわ。マリアも誘ってきたいんだが。」


「連絡してどっかで合流すればいいのでは、燃料を補給して基地からそのままその町まで出発しましょう。」


そんな風に提案される。

そんじゃあ言われた通り途中の町でマリアと合流して、そっから一緒にいこうっと。


楽しみになってきたぞ。


















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