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空の闘争

鍛冶屋のオヤジことこの俺―――“ウルフ1“の僚機たちが二人一組のツーマンセルになり、F16を駆ってドラゴンに格闘戦を挑む。

管制からの通信によるとお嬢が見ているらしく、無様なことはできない。士気も覚悟も最高潮だ。


「Wolf19 guns guns」


「Wolf18 guns guns guns」


部下たちの機銃発射の合図が無線から聞こえてくる。

最初のアタックでは竜たちが混乱から抜けきっていなかったこともあり易々と部下たちの放った20㎜バルカンがヒットしていく。

俺もHMD、つまりヘルメットの表示装置に出てくる、コンピュータで試算した目標の未来位地にレティクルを合わせてバルカンの発射ボタンを押す。

電動モーターにより6つの砲身を回転させ秒間100発の弾を打ち出すM61バルカン砲はリクエスト通りに竜の脳みそを吹き飛ばしてくれた。


いくら未来位地を表示するサポートシステムがあるとはいえ、機銃には誘導性能はない。

機首を最適な方向に向けて一瞬で照準を合わせてベストなタイミングで発射することを求められる。

だから、機銃による戦闘はかなりの腕がないと難しい。

その点、うちのやつらは相手の動きが鈍っているとはいえ的確にドラゴンを撃ち落としている。さすが自慢の部隊だ。


――――そんな事を考えながら次々と的を撃ち抜いていると、徐々に相手も冷静さを取り戻してこちらに反撃を試みるようになってくる。

やつらの武器は旋回性能と失速領域での運動性。

そして遠距離攻撃としての火球や火炎放射(ブレス)だ。

それは、空戦機動による格闘戦、つまり被我の距離が一キロメートルほどのガンファイトの領域においてはかなりの威力を発揮する。

とたんに俺たち戦闘機部隊は苦戦を余儀なくされ、追い込まれることとなった。

部下達は戦闘機にとっての弱点である後ろを取られないように必死に旋回や急降下を繰り出す。

とはいえ、そういった激しい機動は体力と集中力をすり減らす。

そう長く続けられるものではなく―――――――――


…………ちっ、今、視界の端で一機、味方が背後からブレスをエンジンに食らって撃墜された。

パイロットはイジェクト(緊急脱出)して無事だ、即座に彼の僚機がフォローに入ったお陰で脱出直後に食われるようなことにはなっていなかったのが救いか。


E767のオペレーターに戦闘後救助部隊を寄越すように言って、考える。

…………前述した通り、ドラゴンというのは戦闘機では考えられない運動性を発揮する。

なんせ体の可動部位の数が航空機とは桁が違うのだ。直線的に飛行しているかと思って戦闘機で後ろを取ったらいきなり翼を拡げてエアブレーキにして急減速し、後ろを取り返すなんてこともやってのける。

しかも戦闘機の最高速度はマッハ2。格闘戦時の基本的な速度は1000キロ毎時くらいで、

ワイバーンの最高飛行速度は700キロちょいから格闘のときは100キロと被我の速度に開きがある。

飛行生物は大きいほど飛行速度が速くなるとの法則に漏れずファイヤードレイクはそれよりは速いが、それでも最高で時速900キロちょい、格闘では200キロまで落ちる。

そのため、少しでも速度の管理を誤ると相手を追い抜いて背後を晒すなんてことになりかねない。

逃げるのを追いかけたり上空から一気に奇襲をかけたりするなら速いのはアドバンテージなんだがな。


巴戦、つまりはタイマンで機体コントロールにより後ろを取って撃墜するのは不可能に近いのだ。


このような場合に取る戦術として、ロッテ戦法が上げられる。


自らよりも運動性能が高い飛翔体を撃墜するため一機が囮になり、そいつの後ろについた敵機をもう一機が撃ち落とすのだ。

まぁ、とはいえこれは数の有利が前提の話。

隙をついた機銃で俺だけで6体は落としたがそれでもまだ翼竜は数が多い。

まだ50以上は居るぞこれ。


しかも、ここまで的に複雑な動きをされるとバルカンの命中率もガクンと落ち込む。

やつら先程までのように隙だらけではなく、コンピュータの未来予測も役に立たない凄まじい機動で飛び回ってはブレスを吐きかけてくる。

しかもそれが首を曲げて放たられたら、真横や斜め後ろに機体をつけたとしても食らうのだ。


ずっりぃなぁ…………ドラゴンのやつら素でオフボアサイト(真横に攻撃)可能とか…………。


部下たちは即座に落とされた機体の穴を埋めるように二機編隊を組み直しロッテによる格闘を仕掛けるがなかなか墜とせない。

しゃあねーな。


俺は機体を大きく旋回させると敵の前を通り抜けて挑発する。

それを至るところで繰り返し、30ほどを誘い出す。よし、これでやつらはこっちに来る。

いいだろう、トカゲどもに見せてやるよ


戦闘機の闘争――――――――ドッグファイトってやつをな。




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