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クリーニング

そこから俺とアンでオルトロスのオペレーター達と組み手を行ない、解散した。

彼女たちはこのあとそれぞれの持ち場である各都市に帰っていくのだ。

さ、俺たちも辺境伯邸に帰るとしますかね。



「ふぅっ……………」


辺境伯邸のリビングでソファに倒れこむ。

連続で格闘戦をこなしたせいでかなりつかれちったよ。

あー、アンもだいぶやばいなこれ。ふらふらしてる。


「あー、アンー。となりに座ってもいいぞー。いったん休め。」


「………しょ、承知しました……………。うぅ…………。」


指示を出して座らせる。

このあとはマリアといちゃついても良かったが、彼女付きの侍女によると妹は自分の部屋で新しいソフトウェアを開発中とのことなので、しばらく出てこないだろう。


「クリーニングでもすっかな……………」


体に鞭打って自分の部屋のガンラックから愛銃のHK417を取ってくる。

今回のオルトロス視察には持ってかなかったんだよな、HKは。

ヴェトナムのアメリカ兵がM16アサルトライフルの整備をせずに弾詰りを起こして死んだなんて話もあるように、分解清掃というのは大切なことだ。

俺は毎日の日課としてやっているし、うちの軍のやつらは皆そうだろう。

ソファに戻って、HKをバラバラにしてからそれぞれのパーツを丁寧に磨いていく。

クリーニングロッドと呼ばれる清掃用の道具を使ってバレル内部も丹念に清掃する。

あぁ………おちつく………。


あれだ、ほら。飼っているワンコを撫でたりブラッシングしたりするのと似た癒しがある。

ふと横を見ると、アンの方も銃を取り出して清掃を行っていた。

彼女が使うのはマグプルとグロック18だ。そのどちらもが部品ごとにピカピカになっていく。

それを見ながら二人でカチャカチャキュッキュと愛銃を磨いていく。

俺の方もHKが綺麗にできたらM45ハンドガンも磨かなきゃならんからなー。


そんなふうに考えながらカチャカチャキュッキュやっていると、俺たちに声がかかった。


「む?アンとリアーナは何をしているんだ?」


お、父さんじゃん。そーいや今さらだけど、銃のことを教えたのはうちの軍の隊員以外じゃ公爵と騎士団長だけだったな。

そっから王様くらいには話が回ってるとは思うが、たぶんキツめの戒厳令しかれてんだろうな。


民衆にバレたらダメだろうしなぁ……………。すぐに騎士が殺せるようになるってのは反乱の芽になるし……………。

ぶっちゃけ俺の方はここまで力付けたら滅多なことでは相手からちょっかいかけられねーし情報が広まれば戦争を起こそうとしてる輩への威嚇にもなるから銃やら砲やらを隠す気もあんまねーけどさ。

情報統制はすでに解除されてるんですよ。ええ。

と、言うわけでふつーに答える。


「武器の手入れですわ、お父様。」


俺の返答に父さんは怪訝な顔をする。


「武器?それがか?」


俺たちの銃に興味津々ですね。お父様。


「はい、これらは私達の銃ですわ。お父様もマスケットやライフルと言ったら聞き覚えはありませんか?」


ガーランドライフルなら俺がわりと大量にこの世界に流してるしマスケットなら中世くらいの技術レベルのこの世界にもあっておかしくない。

おかしくはないが…………


「ふむ………マスケットは聞いたことはないがライフルならうちの領にも配備されているな。」


お、すでにこっちまで流れてきてたのか。ガーランド。それに案の定マスケットは開発されなかったようだな。

ライフルがあるならそれをコピーしちまえばいいし、マスケットをわざわざ作る意味が無いもんな。


「同盟国から技術給与されたものを我が国でも生産し始めていてな、知っての通り我が領地は国境線に面しており軍事上重要な位置にある。最新のそれを配備できるよう軍務大臣、ひいては国王陛下から命が下ったというわけだ。」



同盟国か。

俺がライフルの製造法教えた国かな?

たぶんあそこがライフルを製造できるようになって、蓄積したノウハウをこっちに渡してきたんだろうな。


………………ってか、タスマニア(うちの国)の王様には俺の方からもガーランドの販売は持ちかけてたはずなんだが、こっちを蹴ってあっちを取りやがったな。

まぁわりかし値段吹っ掛けてやったからしゃあない気もするが。


うーん、この世界でコピー、製造され始めたら取引してる国も俺たちの作ったやつに頼る必要もなくなるし、製造法を売ろうにも相手はより安く買えるとこからを買おうとするだろうなー。

ガーランドは現物も製法もあんま高値じゃ売れなくなるなこりゃ…………新しい方法を追々考えるとしますかね。


そんなふうに思案していると父さんが俺の持っているものをじっと観察しながら聞いてくる。



「お前の持っているそれもライフルなのか?」


「えぇ、そうですわ。」


ガーランドなんぞ比べもんにならん高性能だけどね。


「ふむ………なぜお前がそれを持っている?」


え?何でってそりゃあ


「私がこれを作らせたからですわよ?」


鍛冶屋さんにね。

本当に、感謝してもしきれんよオヤジには。当時まだガキだった俺のことを信じてくれて。俺がちょっと仕組みを言っただけでここまでのもんを実現してくれたんだから。


「リアーナがか………。それで?お前はそれを使えるのか?」


父さんの疑問に隣のアンが食いぎみに答える。


「マジェスティは今この世界に居る誰よりもライフルの扱いがお上手でいらっしゃいます。どのような的であれ、外すことはあり得ません。」


………なんか盲信じみてて怖い気もしつつ。まぁ、使えますよ。元軍人ですのでね。


「そこまでか…………悪いが私もそのライフルとやらに興味があってな。良ければ見せてくれんか?」


アンから俺への呼び方に対する突っ込みは無し。慣れてんな。

んー、まぁ、クリーニング終わったばっかでなんだけど減るもんじゃないし普通にいいけど。


あ、ちなみにですが中世のイメージにあるような女の貴族は戦場に出るな云々はうちはほぼ無いです。

そもそも、まぁこれはマリアからの伝聞だがあっち(地球)の中世でも14世紀ごろは相続の問題で領主となった女性が兵を率いることはあったらしいし、それはこっちのタスマニア王国でも同じだ。

ましてやうちの家は子供が俺とマリアのみで俺がここを継ぐ可能性だってわりかしある。

他の家から婿養子を取る?確かに王国法上は可能だが政治的に旨味がありゃともかくこんな、この世界基準では資源が乏しく旨味のない領地の婿養子に来るやつなんていねーよ。

居たとしてもよほど困窮した、むしろ来られたらこっちが困るやつとかだろうよ。

ここら辺のことは父さんもわかってるはずで、感情的にはどうか知らんが理屈からしたら俺が戦闘に興味を持つことは咎められない。

で、うちの父さんは感情のみで突っ走るバカじゃないからね。

他のとこの貴族様はどうか知らんけど。


あ、せやせや、王国西部の教皇領とか呼ばれる教会直轄領じゃ女の従軍はかなりタブーなんだ、たしか。数百年前まではあっちでも女性の従軍はあったらしいけど最近はアウトなんだってマリアが言ってた。

ここは南部なんでどーでもいいですが。


閑話休題。

とにかく俺は父さんの申し出を受けることにした。


「わかりましたわ。では馬車を用意してくださいませ。これを撃てる場所までご案内いたしますわ。」


ま、演習みたいなもんだよねー。

最初の攻略対象者との邂逅まであと約一月もない。

それまではのんべんだらりと過ごしますよ。










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