護衛、道中、翼竜の宴
平原を鋼鉄の巨獣がひた走る。
それは、ハンヴィーと呼ばれる現代の騎馬。
騎士たちを護衛しながら領地まで行くために俺が呼びつけたその車は世界最強の国家の兵士達を乗せて戦地を走るために作り出された、頑強かつ悪路走破性に優れた車両だ。
空にはそれを追う影が数十も飛び、それらはこの鉄の騎獣を狙ってその爪や顎でもって襲いかかる。
「仲間がやられて怒り心頭って感じかね?」
そんなことを呟く。
そういえば前世地球でも、以外と恐竜やワニなどの大型爬虫類は家族――――クランの仲間への情が厚いものも多かったらしい。
それに外見が良く似たこの影たち………ワイバーンたちも、仲間がやられたら黙っていないと言うことだろう。
「血で嗅ぎ付けやがったな。仲間の死を。」
車に揺られながらそんなことを吐き捨てる。たしかTレックスの鼻は犬よりも利くとかなんとか聞いたことがある。
やつらもそんなかんじで、嗅覚が発達しているのだろう。昼行性の肉食飛行生物な以上、地上の獲物を狙うために視力も発達しているかもしれん。
そんなことをアンに言うと
「確かに、生態調査の結果そのようなことを確認されてあります。」
事実だったらしい。猛禽の目の良さと、肉食竜のパワーと嗅覚。
なるほど、騎士団じゃあ手に余るわけだ。
そんな竜が大群で追ってくる今の状況は、いかなハンヴィーがこの世界の馬車より速く頑丈と言えどちと分が悪い。相手は空飛んでるから機動性でも負けてるしね。
だから、これは、正当防衛だ。
そう言い訳して、俺は
HK417を彼らの脳天に向けて、その引き金を引く。
「キュウゥオオオンン!」
スチールコアの銃弾は頭に中り、頭蓋を易々と貫き大脳をミンチにする。
――――――脳幹には当たらなかったか――――
即死はしてない。なんて生命力だ。
放った二発めは弾が翼に当たってズタズタにし、翼竜が墜ちる。断末魔の声と共に。
「っははっ。」
それを見てついつい笑みが溢れる。
ダメだなぁ、仕方なくやってるはずなのに。
仕方なく、殺すって、そう自分に言い聞かせてるのに。
どうにもナニかを殺すのが楽しくていけない。
ライフルのセレクターはセミオート。
ガオンッ、ガオンッ、と
文字にするならそんな感じの発砲音を立てて
引き金を引くごとに一発ずつ弾が飛ぶ。
放たれたそれは過たず翼竜の頭に着弾しては頭蓋の守りが薄いこめかみから脳を抉り、またあるものは翼を切り裂き相手を地面に叩き落とす。
「あははははははっ」
まるでマリアナ海戦だ。
面白いようにバタバタおっこちやがる。おい見ろよ、トカゲどものあの愉快なこと!ん?なんだ?皆こっちをヤバイものでも見るような目で見て。
ほら、笑えよ。笑えってんだよ。
あんなに、あんなに、おもしろいんだから。
「ははっはははははっ!」
哄笑を迸らせてワンショットワンキル。
ハンヴィーの天井にあるハッチから上体を車外に出した俺は、発砲一発につき一体のワイバーンを無力化してクルマの安全を確保する。
近づいて来たものから脅威度を割振り、的確に、確実に撃ち落とす。
なぁに、簡単だ。サイトを敵の未来位置に合わせて、リズミカルにトリガーを引くだけでいい。偏差射撃ってやつだな。
それだけで、俺のHKは素直に俺のオーダーに答えて鉛弾をクソッタレのトカゲに届けてくれる。
30発撃って、同じ数ほど墜として、弾が切れたからマガジンを交換。
そしたらまたルーチンワーク。
サイトを合わせてトリガーを引く、引く、引く。
「あっははははっ!…………あー、……クッソたのしっ。
永遠に沸いてこねーかなー。弾も、竜も。」
俺の手の中でライフルは吠え続けて、そのたびに竜はその爪を車に届かせる前に絶命していく。
そうして、俺が三つ目のマガジンを半ばほど消費したとき、すでに空には何も飛んでいなかった。
戦闘シーンが書きたかったのです