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触らぬ神に

国王の名前をガリウスに変更しました。

タスマニア王国王城、その一室。ここは公にできない話をするための、遮音の魔方陣が刻まれた部屋。

その部屋では今、国王と公爵が向かい合っていた。

この国の最高権力者二人が話すのは、もちろん


「以上が、私が南部辺境伯領で目撃した全てです。」


「うむ……………。」


そう、彼らが深刻な様子で話しているのは、辺境伯令嬢リアーナとその妹マリア、並びに彼女達の率いる軍勢についてである。

彼の地より出立する荷馬車については、ライフルと呼ばれる新型の兵器であったらしく、令嬢の方から、かなり高額でではあるが国に卸そうかとの打診があったそうだ。



「余とて一国の王。それほどまでのことを容易に信じるわけにはいかん、しかし…………お前が嘘をつくとも思えん。」


王が顎に手をやりそんなことを言う。

目の前に居る忠臣は、自分を謀るようなものではない。しかし


「リヴァイアサンを木っ端微塵に粉砕する軍を、10になったばかりの令嬢が率いるなどとは。」


それは、現実ではあり得ないこと、もし、あったとしたら、神話の中にのみ。

通常のドラゴンですら、人間が倒すのは不可能。ましてや、今回殺されたというのは神話に出てくるような相手なのだ。


「信じられずとも、どうか、どうかアレには決して手を出さぬよう。さもなくば…………滅びます。」


公爵は青ざめた顔で嘆願する。

とはいえ、それを信じぬとしても王とて妄りに彼の令嬢に構う気はない。

公爵の話が虚偽であるなら王が目をかける理由もなく、真だとしたらそれは関わることすら慎重にならねばいけないシロモノだ。


その旨を伝えられると、公爵はあからさまに安堵し息をついた。

普段表情を表に出さぬ彼にしては珍しい。


……………まぁ、表情を出さないと言ってもリアーナのように化けものじみた観察眼と微表情の知識を備えた相手には通じないが。


閑話休題。


家臣が帰ってからガリウスは、この国の長を勤める男は溜め息をついた。彼の治める国は強国であり、保有する騎士団や竜騎兵部隊も大陸で1、2を争う練度と物量を誇っている。

王直轄の騎士団は全軍で100名以上、王都に居をかまえる正十字教が有する神殿騎士たちを加えればその数は倍以上に跳ね上がる。さらに、各地の領主から農兵や戦時に彼らが雇う傭兵団の戦力を集めれば、その戦力は10万を優に越える。

それが、たった一人の少女の意思で容易く滅びる。

そういったのだ、公爵は。

唯一“それ“を見たと言う、かの真面目を絵に書いたような男が。

尋常一様のことでないのは確かだろう。


かくして、王はその報告を受けとり、リアーナとの接触はすでに顔の知れた公爵を通じてのみにすることに決めたのだった。




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