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海原統べる神龍は粛々とその鉄槌を下す

轟音と共に竜が木っ端微塵に吹き飛ぶ。

レヴィアタンの46㎝三連装主砲はその火力を遺憾なく発揮し、一回の咆哮につき1体、ときには纏めて2体の海竜を、タングステンを弾芯に使用した弾頭でぐちゃぐちゃに貫き内部から高性能爆薬で焼き付くし四散させる。

水上レーダー、そしてソナーと火器管制システム郡はその出鱈目な破壊の力を正確に竜どもに誘導する。

いくら海竜がその身を固い鱗で覆っても、いくら彼らがこの世界の主流のフネである帆船を寄せ付けない泳力や機動性があっても、回避も防御もそんなものは一切無いとばかりにレヴィアタンは食らい尽くす。


「榴弾を使った方がいいな。CIC、主砲弾種変更、継続して敵目標を破壊せよ。」


その光景を見るや、艦長が貫通力が高く対装甲に用いられる徹甲弾から榴弾に変更するよう指示を下す。

榴弾とは、その炸裂の際に飛び散る破片によって対象を切り裂くタイプの砲弾だ。

貫通力はそこまでではないが、対多数の目標や素早く動く相手に有効である。


CIC、つまり艦艇の火力投射の制御を行う部屋では兵士達が上官の指示に答えるべく動き出す。

とはいえ人間がやらなければならない仕事と言えばコンピューターのディスプレイ上の輝点、エネミーを示すその点からいくつかを選択し射撃の指示を入力するくらい。

あとはレヴィアタンが勝手にそこに砲弾を送り込んでくれる。


「砲手、一番砲塔HE(榴弾)により敵目標を破壊せよ。トラックナンバーは2―5―3。」


「copy トラックナンバー2―5―3対水上目標、砲弾HE(榴弾)


―――――――fire(発射)。」



一番砲塔――――もっとも艦前方に備えられた三連装の主砲が即座に狙いを定め、その三つの砲門から榴弾を吐き出す。


ドゴォォォォォ!!


艦橋の窓ガラスを震わせるとてつもない砲声。発射の衝撃は海面を五百メートル先まで粟立たせる。


「圧巻だな」


俺はそれを見て口の端を歪める。

隣に立つマリアも満足げだ。


音速を越えて飛翔した三つの砲弾に突っ込まれた竜の群れは爆散の破片と衝撃波で一気にその体を引き裂かれ、潰滅まで追い込まれた。


戦闘開始一分、あと残っているのは―――――


「こちら観測機、着弾観測をする。発射された砲弾の直撃を確認。

残敵は3、現在混乱して暴れているようだ。第二次攻撃の要あり。」


残っているのは三体か。

上空で竜の群れを見ていたオヤジが観測を担当してくれる。


艦長が攻撃続行の指示を出して発射された榴弾は恐慌をきたしたトカゲ(ドラゴン)の群れを完璧に叩き潰した。

上空を飛び回る護衛の戦闘機や、この艦の周囲を固める駆逐艦の出番など全く無かった。

一隻のフネの、数回の砲撃でドラゴンのスタンピートは鎮圧されたのだ。



「ん、これ、で、終わり。」


マリアがむふんと息を吐いて言う。心底満足げなのは、自らが作り出したものの圧倒的な力を目にできたからだろう。


だがな、マリア。まだ終わりじゃないぞ。


「ソナーに感。でかいのが浮上してきます。」


CICに居るソナー手から何者かが現れるとの通信が入る。

その言葉のとおり、数瞬の間を置いて海面が盛り上がる。


「来たな」



俺の呟きと同時、海を割って現れたのは海面上に出ている部分だけでも300メートルはあろうかと言う、巨大なドラゴン。


体の各所にヒレを生やし、我が艦隊のどの船より巨大な、翼を持たぬその龍を見て、これまで空気だった公爵が息を絞り出すように呻く。



「リヴァイアサン……………だと…………!」


聖書の怪物、俺たちが載る艦(レヴィアタン)の名前の元ネタ。

海龍の王、火と水を操るデミゴッド(神に近きもの)


――――――リヴァイアサン


ヴゥゴオオオオオオオ!!

と、

龍は咆哮しその存在を天地に示す。

我はここに居る、絶望は、ここにある。

海竜を屠る程度でいい気になるな、

我が、本物のドラゴンというものを見せてやる。


そう、言わんばかりに。


「っこれは…………。

おい!リアーナ殿、勝てるのか!?あんなものに!!あれは神話の怪物、神すら死力をかけて挑む化け物だぞ!?」


青褪めるを通り越して真っ白になった表情と共にこの国で最高峰の権力を持つおっさんが喚く。

それを一瞥してから、俺は


「…………………艦長、あのトカゲを捻り潰せ」


copy(了解)


ごくごく普通に、なんの感慨もなく、ちょっとあれ邪魔だから掃除しといてと頼むように、艦長に指示を出す。

指示を貰った彼も、全く、なにも問題ないと言わんばかりにそれを受け、我らの艦の火力を解放するようCICに通信を入れる。


その、直後


一番と二番、艦橋の前方に備えられた二つの46㎝三連装主砲は、徹甲弾を一斉射撃。


計6発になるそれは全弾が狙いたがわず同時に着弾すると、リヴァイアサンの絶対不破と言われる甲殻を容易くぶち抜き、弾体を体内にねじ込んだ。

一瞬、信管によって爆薬が炸裂。

海を統べると言われる龍を、体内から焼き焦がした。


「ゴッ……………ゥウウオオオオオンン……………」


情けない悲鳴をあげて、巨龍の―――――――獲物(・・)の体が崩れ落ちる。


「第二射、撃て」


砲雷長の号令に応え、戦艦はその身に備え付けられた自動給弾システムにより、主砲に弾を送り込む。

このシステムはみんなで作り上げた。

新鋭の戦車でも人の手で行う砲弾の装填だが、それを自動化することでコンスタントに、装填手の体力などの不安定な要素に左右されず弾を叩き込める。


そして、徹甲弾が装填された直後。

レヴィアタンはもう一度轟音と閃光を撒き散らし、その火力を哀れな龍に対して振るう。


2回目の斉射は、その着弾時の爆発によりリヴァイアサンの体をバラバラに引き裂き、俺たちの見ている前で巨竜に止めを刺した。

肉片となって沈み行くそれを見ながら、マリアがポソリと言葉をこぼす。


「これで、レヴィアタンは、その神話は、私たちの、もの。あなたは、神話を担う、器じゃ、なかっ、た。さよう、なら。哀れな、トカゲ。」


そうだ、そうなのだ、旧約聖書の偉大なる神話。

その、怪物。

リヴァイアサンやレヴィアタンと呼ばれるそれ。

その玉座は、今、唯一




俺たちのものだ。




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