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弾薬と試射

とうとう、この世界で最初の銃が生まれる。

さて、カートリッジとは、弾薬だ。薬莢、プライマー、つまり雷菅、そして弾頭に、火薬。これらを合わせて作る。


厄介なのが火薬と雷菅だ。様々な化学反応を駆使して、しち面倒くさい化学物質を作らねばならない。冷却やらなんやらも要るし、炉もいる。辺境伯令嬢としての権力をフル活用してやるぞこん畜生。


と、いうわけで、冷やし燃やし混ぜ合わせて、できましたよシングルベース火薬。木から取った線維を、濃硝酸と濃硫酸の混合物で硝化してニトロセルロースと呼ばれる火薬のベースを作り、原油とゼオライトと呼ばれる石を加熱して反応させて作ったトルエンに酸を混ぜ合わせて作った混酸をぶちこんでジニトロトルエンにし、これらを組み合わせる。

すると、だいたいシングルベース火薬の基礎ができると。

ちなみに、硝酸や硫酸はハーバーボッシュ法を使って作ったアンモニアから作り出すのが主流だが、天然の鉱石としても採取できる。工業力が皆無の俺たちとしては天然物で賄うしかないのだ。



あー、面倒くさかった。


とはいえ、これは自分でやらねばならない作業だ。

火薬を作る作業だし下手したら腕とか吹っ飛ぶしな、命がけだ。

いざというとき死ぬのは、俺一人でいい。


そうして火薬を作り、レシピをまとめあげて、次に作るのはプライマーだ。苛性ソーダに硫化ナトリウム、ピクリン酸、これらの物質を1から製造し混合し反応させて、ジアゾニトロフェノールを作り、銅で覆い、発火用の金属を取り付ける。

なにがあれってピクリン酸くそ面倒なんだよ。塩化ナトリウムは塩だから普通にあるし、苛性ソーダは原料が消石灰と天然でも取れる炭酸ナトリウムだからなんとかなったけど、こいつはフェノールが必要になる。

コークスから分離させてフェノール作るのがこの世界の技術レベルだと、まぁ、くそムズい。

ここまでで、それこそ何十日とかかっている。

何十日とかかっているのだが……………


あるとき、ふと思い出した。絹を硫酸と硝酸の混合物で溶かしたら手に入ると。


真面目に自殺するレベルで愕然としたがまぁ、しょうがない。



とはいえ、あとはやり易い。プライマーのレシピをまとめながら、オヤジたち職人に指示を出す。

アルミを整形し、そいつで鋳型を作り、真鍮の合金を流し込んで薬莢を大量生産する。

また別の職人たちは、レシピを見ながら平行して火薬やプライマーを生産、できた薬莢にプライマーを取り付け、火薬を詰め、鉛を成形した弾頭を嵌め込む。

弾頭?糞楽だったよ?形とって鋳型作って鉛流し込んで、先端だけ残して銅で覆うだけだもん。一発で、前世では違法だが、糞ほど殺傷力が強いダムダム弾とかソフトポイントとか呼ばれる弾の完成よ。

まぁ、とはいえ。うまく綺麗な形を作るのにトライアンドエラーは繰り返したけど。こっちは死にゃしないし。


それを、2種類、薬莢や弾頭の形状を変えて作る。俗に言う、45ACPと7.62㎜NATO弾というやつだ。


さーて、しちめんどくさい作業は終わり。わっくわくの試射のお時間ですよー。


以前に作ったバレルを一つ拝借し、ケツに金属盤をつける。金属盤に穴を開けて、そこに、鉄製の矢をスルリと入れる。矢を弓にかけて、弓の持ち手はバレルにキッチリと固定する。そうして、矢の、本来羽がつく部分に糸を固く結ぶ。

よし、試射の装置の完成だ。


その装置の弓とバレルを纏めて木にくくりつけ、作りたてホヤホヤの弾薬をバレル前方からロッドで押し込んで矢のケツからひょろりと伸びた糸を引く、


そして、手を、離した


引き絞られた弓の蔓が、溜め込んだエネルギーを矢に伝え、矢が放たれる、本来弓から離れて飛んでいくであろうその鉄の矢はその鏃で、バレル内部のカートリッジ、その雷菅をぶっ叩く。


瞬間、轟音。


雷菅が叩かれ、火薬に着火したカートリッジは、燃焼エネルギーを遺憾なく発揮し、弾頭をバレルに沿って真っ直ぐに撃ち出す。そのエネルギーは当然、薬莢の側にも伝わる。作用反作用の法則により、薬莢は弾頭と反対側、すなわちバレル後部に向かって発射されようとして―――――――先程自身のけつを叩いた鉄の鏃を、ぐいと押し、バレルから出そうと動く。

ごくごく単純化した、ブローバックの原理だが、それは長くは続かない。矢がバレルから押し出され、弓が引き絞られた後、弓は折れ、蔓はちぎれ、矢は薬莢に押し出されるようにバレル後方にむかって打ち出された



遮るものなき弾頭は真っ直ぐ射出されて、射出先に発射機構が備えられていた薬莢は、それを破壊した。

すなわち―――――――――


「ああ、くそっ





――――――――――――――大っ成功だ………………………!」


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