だめだこいつ早くなんとかしないと
パーティーがつつがなく終わって、翌日。
俺は自分の屋敷で公爵をもてなしていた。
間諜が来ると思ってたが、自分で来るとはなかなかいい根性だ。
その根性に免じてうちのメイドに茶を入れさせよう。ゆっくり飲め。
「うめぇだろ?うちのメイドは優秀なんだ。」
「……………それが素かい?」
うん、そーだよ。
まぁ、繕うのだるいし今回は俺がホストなんで素でいかせてもらうわ。
相手は目上の貴族?
俺がやれってひと言言っただけで領地ごと吹っ飛ぶ男の立場とか興味ないね。
「本日マジェスティの命で公爵様の給餌を勤めます。アンと申しますどうぞよろしく。」
「アン、さすがに給餌はまずい。何が不味いってニュアンスが失礼すぎる。ちゃんと給仕って言いなさい。人間扱いしてあげなさい。」
「マジェスティの命があればこそ渋々やっているだけで私としては下賎のものに餌をやるなどしたくないのですが。」
待ってほしい、こいつは優秀なメイドだったはずだ。いつから壊れた?
てか、なんか怒ってる?
「とりあえずリアーナ嬢への呼び方とか侍女が公爵に対して下賎とかあまつさえ餌とか突っ込みどころは多々あるけど、僕君に何かしたっけ?アンさん?」
顔をひきつらせながら公爵が発したその言葉と同時に、アンはその手に持ったもの
小ぶりなプラスチック製の鞄にしか見えないそれを、
ロックを外して展開した。
出てきたのは、T字のボディをしたサブマシンガン。
内部に、G18というフルオート射撃が可能な拳銃を組み込み、ストックを畳んでロックをかけたら鞄のようになる隠し武器。――マグプルFPGと呼ばれるコンパクトなサブマシンガンだ。
アンは展開したそいつのストックを肩に押し付けて、片足を前に出しつつ前傾姿勢
頬はストックの上に添えて、サイトを除きこむ。
アンはそこまでを一瞬でこなしてマグプルを構えると
公爵に向かって発泡した。
一秒ほどフルオートで撃って、硝煙たなびくマグプルを彼に突きつけながらドスの聞いた声を発する。
「我が領地にネズミを放ったのはどこの誰か忘れたと抜かすのなら私のマグプルが火を吹きますが?」
銃弾に目の前のカップを粉砕されて公爵は汗がダラダラだ。
当たらなくて良かったねー。
しかし火を吹いてから火を吹きますが?とか、ヤベーなこのメイド。
はぁ、しゃあない。やめさせるか。
「アン」
俺の呼びかけにアンがこちらを向いたので
「俺の顔に、泥を塗るな。メイドの粗相は主の恥だ。」
俺を人質にしてONEGAIする。
それだけでアンはしゃきんと背筋を伸ばし。
「先ほどは失礼いたしました、公爵閣下。私はリアーナお嬢様の専属侍女筆頭を勤めます、アンと申します。以後お見知りおきくださいませ。」
………………よし。
「あ、う、うん。よろしく。」
ドン引かれたけど、よし。