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挨拶の後、父さんはどっかにいった。

大人同士のお話ってやつだろう。


まぁ実は俺の方も話す相手がいるんだけどね。


「失礼いたしますわ公爵閣下。お時間いただけますでしょうか?」


そう、公爵様。このパーティーの主催者にして、この王国の中でも王、宰相に続くナンバー3。

これはこの世界のことを色々と調べているマリアから聞いたのだが、王国西部で行われる夜会ではこのように身分が下のものが自分から上のものに話しかけるのはNGらしい。まぁここは東部だから関係ないが。



「君は…………リアーナ嬢か。なにかね?」


にこやかに笑うその人に、俺はぶちかます。


「我が領地のどこに興味を持たれてネズミを放たれましたの?」


つまり――――――なんで間諜を送り込んだ?

と。


「――――――!」


公爵が息を飲む。

ダメだろポーカーフェイスしてなきゃあ。


「なんの、ことかな?言っている意味がよくわからないよ。」


すぐに立て直して切り返してくる。まーテンプレ。よく公爵になれたなお前。


「あら、では、なぜ今日が私のデビュタントだと知っていましたの?少なくとも閣下は、私の年齢と、スケジュールを把握していらっしゃるということでございましょう?

まさか、全ての令嬢のデビュタントの時期を覚えていると?」


初めてなのに、と、こいつはそういったのだ。

これが、逆ならわかる。

位が下のものが、上のものとのコネを作るために色々と情報を得るのなら、わかる。


「でも変ですわね?私の家はたしかに高位貴族ではありますが、特筆すべきところもない家ですわ。なぜ、閣下はうちの事情をお知りになっていたので?」


諦めろよ。おっさん。推測からのカマかけに引っ掛かった時点であんたは詰みだ。


「…………………君の領地で、ドラゴンが討伐されたんだ。」


へぇ、その件か。


「調査でございますか?なぜ、こそこそとネズミを送り込んだので?アポイントを取って正面から聞けばよろしかったのに。」


「何か隠していることがあるのではと思ってね。君の領地から出る荷馬車が、隣国に向かっている記録を見つけたんだ。それだけなら良いが、その量が、明らかに多すぎる。」


へぇ。気づいたのか。


「そして探らせた猟犬も、帰ってこない。」


犬……………ようは間諜(スパイ)やら刺客のことだよねぇ。今回は話の流れからしてスパイの方かな。


「裏切りか、処分されたか、さてどっちかね。」


公爵の瞳に剣呑な雰囲気が混じる。

ははっ、知ってるよ。

その解はあんたが提示したどちらでもないことも。


だって、その犬とやら。


「あら、公爵さま?猟犬、番犬の血統書はきちんとお確かめになった方がよろしくてよ?もしかしたら、それは、あな(・・)たが噛めと(・・・・・)指示した(・・・・)相手が親(・・・・)かも知れない(・・・・・)んですもの。(・・・・・・)


あんたのじゃなくて俺の(スパイ)だもの。裏切るもなにも。あんたのものじゃなかった。それだけ。

二重スパイの回収をあちらさんから手伝ってくれて手間が省けたよね。


で、まぁ、俺の言葉に奴さんは察したようだ。


「番犬………護衛かね?」


そう、スパイは彼の護衛にも入り込んでる。

ぶっちゃけると、彼の護衛隊長がそれだ。

もっと言うと彼の家のメイドにも俺の兵隊は居る。メイド部隊の隊員だ。

しかし………よく顔に出るなこの人。

さっきも笑ってはいたが口の端がピくついてた。取り繕うくらいしろって。よく貴族やってけてるな。

でもまぁ、あんたはこのあと冷静になって、ホッとするはずだ。だって。


「……………おもしろい冗談だね。だが、放った猟犬は君のとこの領地の産まれじゃないし、番犬だってそうだ。残念だったね。」


ニコリと彼は微笑む。

身辺調査をして、俺のところの出身じゃないやつを送り込んだ、と。この世界じゃ基本的に貴族の手駒はその土地の出身者を使うからな。まぁ、自分の権力の及ぶ範囲から集めたらそうなるんだろうよ。だが


「公爵さま?犬が懐くのはなにも同じ土地で産まれた主人とは限りませんわ?王国東部で産まれたシェパードが南部の生まれの者に飼われることだってありますもの。」


王国東部、それは、この公爵様の領地。

これで俺は暗にあんたの領地の出身者にも俺の駒は居るぞと示す。

残念なことに俺の軍勢は多()籍なんでね。なんせ表向きは孤児や失業者に職を与える人道的支援だ、横からゴチャゴチャ言われずに集められる。なんならあちらさんから望んで引き渡してくれるまである。浮浪者や失業者、孤児が増えると治安は悪化するからな。

治安を省みずに人助けするお人好しの間抜けに、体よく押し付けられると思ってたんだろうよ。


彼の顔が一瞬驚きに満ちて、それから歪む。


「………………それを、証明することは?」


「まぁ。良いのですか?証明しろと言われればしますが――――――――あなたの外出を守るはずの騎士に切りつけられる経験をしたいとおっしゃるので?」


後半は小声ね。


「私じぶんのワンちゃんにそんな酷いことさせれませんわ。」


ニコリと微笑んで返してやる。

まーでも本心を言うと、やれってんならやるよ。



「……………やっぱり護衛にも潜ませてるのか…………誰だ?」


ん?そりゃあ


「誰でしょうね?ヒントは、明日あなたの前から消えた人間ですわ。」


護衛隊長とかね。ここまで言ったし、ばれないうちに俺の手元に帰すよ。まぁメイドの方は残しとくけど。

これでスパイは帰ったと油断してたーくさん情報を落としてくださいよ。公爵さま。


「………………はぁ、参った。まさかデビュタント直後の小娘に踊らされるとはね。」


いや、だって微表情とはいえポーカーフェイスもできないんだものあなた。

あ、微表情ってのは0.2秒間ほど、眉が数㎜動くとか口が僅かに持ち上がるとかいう風に現れる表情変化ね。反射的なものなので消すのはちとコツが要る。


「寝首を掻かれないかと心配だから君を潰していいかい?」


にこやかに言ってきやがる。

なら


「やった瞬間焦土ですわよ?次、あなたが寄越したワンちゃん(密偵)は素通りさせてあげますから色々と

荷馬車の件も含めて確かめなさいな。」


ま、思いしるがいいさ。俺と、そっちの、圧倒的な差ってやつをな。



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