兵器と兵隊
なんだかこう、メイドに甚だしく引かれたような気がせんでもないがそれはいい。
今は肉が一番大切だ。
というわけで俺はオヤジをはじめとする職人やらうちの軍の兵士やらを呼びつけると、皆でドラゴンの死体を解体してそれぞれの車で基地まで運搬した。
新鮮なドラゴン肉だ。きっとうまいぞ。
よくよく考えたらこいつは肉とかを食いまくる大型肉食動物なため、臭みが強い可能性がくそ高いとかあんだけの運動量の動物だし脂なんてほとんどなくて糞固いに決まってるだろとか考えてはいけない。きっと美味しいって心配するなよ。
そんな風に俺が自分を無理矢理説得しようとしていると、オヤジが声をかけてきた。
「しっかしお嬢はすげーな、とうとうドラゴンスレイヤーか。喜べよ、お嬢。世界初だぞ。」
あー、ドラゴンって殺したらそれだけで英雄認定されるんだっけ。
前の世界の神話ではそうだったな、ベオウルフしかり、ジークフリードしかり。
しかし………ドラゴンか、ドラゴンねぇ…………。
「ワイバーンはともかく、ドラゴンは撃退できたら英雄だ。殺すなんて誰も考えすらしねぇよ。」
前世ではバカスカ乱獲されてたがな。ゲーム内でという但し書がつくが。
冗談はともかく、現実の話なになったらそりゃあスケールちっちゃくなるか。
「まぁでも、お嬢ならやるとは思ってたぜ。パンツァーファウストでドッカーン!ってな、あ、それともスティンガーか?」
オヤジが笑いながら俺の肩を叩く。痛いし、つか勘違いしてるな。このおっさん。
俺が使ったのは―――――――
「お嬢様が使ったのはHK417とマガジン壱つです。」
うん、そう。今アンが言った通り、アサルトライフルのみだ。
っと、それを聞いたオヤジが笑顔のままフリーズした。
「はっはっは。アンさん?すまねぇが難聴みてーだ。お嬢はなに使ったって?」
「…………アサルトライフルです。信じられないかも知れませんが、お嬢様はアサルトライフル1挺で龍を討伐しました、ワイバーンじゃない、本物の龍を。」
顔を固めたまま話すなよオヤジ。怖いぞ。
アンも、そんな苦みばしった顔しないの。
「…………………幻聴であってほしかったがマジみたいだな。そういややけに死体が綺麗だとおもったが、マジか………………。お嬢はマジモンの鬼神かなんかか?」
オヤジがマジで鬼を見る目でこっちをチラチラ見てくる。おいやめろ。
令嬢になんて目向けてんだお前ら。
……………つーか、あの程度を倒したくらいで神なもんかよ。
「みん、な、倒したこと、じゃ、なくて、アサルトライフルでって、とこに、驚いて、る。」
おぉっ。居たのか、マリア。
「そうだな。お嬢の作った兵器で、今ここに居るやつらならその大半がドラゴンスレイヤーになれるだろう。でもそれはあくまで、兵器の力が大半だ。
なぁ、アンさん?お嬢の戦闘を見たあんたに聞きたい。それは、弓や剣、ナイフとかでもできていたと思うか?」
その問いに、大きな間を開けてアンが答える。
「…………………………微妙、かと。」
ほーらな?銃がなきゃそんなもんだよ俺なんて。弓だと刺さった一本目が邪魔で同じとこに二射三射と通せないし、目を貫通させて脳を抜くのは無理だった。剣や槍、ナイフだとそもそも弱点まで届かない。
たぶん無理だそれじゃ。
「微妙、か。勝率は?どれくらいだと思う?」
これにはアンはさらりと答える。
「半々かと」
うぉい?50%って微妙とか言わないんじゃねぇのかメイドさん?
いや、さすがに無理だろ。いくらなんでも。
あ、でもあれか。よじ登るとかすれば、いけるか。
………………いけるか?
「そんなにかよ……………詳しい話を聞こうか。」
「はい、私の話でよろしければ。」
オヤジがなんか興味津々なんだけど。
ちらっと横見たらマリアもふんふんと頷きながら聞いてる。
ドラゴンスレイヤー………ねぇ。
リアーナ自身は過大評価されてると思ってますが、実際、彼女の技はバケモノと呼ばれていいレベルです。
とはいえ、他のなろう主人公のようにガチの神を殺したり個人の力で大陸を吹き飛ばしたりはできませんし、これからそうなることもありません。
オヤジさんの言った鬼神云々は日本人もすごい人とかによく言う「アイツマジ神」みたいな比喩表現です。