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Dea Ex Machina ~~悪役令嬢戦略譚~~  作者: 中腸腺
ドラゴンスレイとライフルマン
31/167

メイドは主を畏れる

皆様ごきげんよう、私の名はアンと申します。

私は光栄にも上級貴族の令嬢の専属侍女筆頭を勤め、なんの因果かお嬢様直轄部隊の総指揮官の役を賜ることになってしまいました。


いわく、才能がありそうだった、とか。


自慢ではないですが、お嬢様の狂気的な訓練を潜り抜けた私たちは歩兵の中であれば精鋭無比。高い練度とこの世界ではあり得ないほどに強力な兵器を保有しています。よって我が部隊の隊員であれば騎士団すべてを相手取ってもそれを殲滅することが可能でしょう。


本当に自慢ではないのですよ?

えぇ、自慢などできるものですか。こと、殺し合いに関しては。

―――――あんなものを見せられた後では、ね。


始まりは、お嬢様がお暇をしてらっしゃると私に相談されたことでした。

狩を御所望のお嬢様のため私は大物中の大物、ドラゴンの情報を差し上げました。

お嬢様はそれに興味を持たれたようで、すぐさま狩に行くとおっしゃられました。



私が驚愕したのはこのあと


なんと、お嬢様は明らかにドラゴンに対しては威力の不足するアサルトライフルのみで狩ろうとおっしゃられたのです。

レッサードラゴンのワイバーンならともかく、相手は本物のドラゴン。

ライフルの7.62㎜弾はその鱗に傷ひとつつけることはできないでしょう。


たしかに、お嬢様はお強い。それはわかっていました。

我々が悲鳴をあげながら完遂する訓練を、お嬢様は齢9つにして涼しい顔でこなされます。

ですが、いかなお嬢様がお強いといえども、攻撃を弾かれてしまってはどうしようもありません。


このままでは、お嬢様は負けて食われてしまう。


私はこっそりと今回使う車にパンツァーファウストを乗せて、いざというときには私がこれを放ちドラゴンを倒そうと考えていました。

それが、とんでもない侮辱だとも知らずに。


えぇ、えぇ、お嬢様の強さはわかっています。

わかっていたつもりだった(・・・・・・)のです(・・・)


結果から言うと、お嬢様はお一人で龍の討伐を、世界でまだ誰も成し遂げたことのないそれを達成してしまわれました。

………………いや、かの方の所業は達成などという言葉で表して良いのかどうか。


事も無げに、退屈そうな様子すら滲ませて、完璧に、かすり傷ひとつ負わず、ほとんど服すら汚さず、

私が何かする暇もなく―――――魔物の王たる龍が私に注意を割く暇もなく


我が主は、たった一人

たったマガジンひとつぶんのライフル弾で



――――――――(ドラゴン)を完封しきって見せたのです。


あぁ、達成ではない、完封。

そう、あれはまさしく、完封。


相手が動いたとき、お嬢様はすでに安全圏に悠々と待避している。

相手の時間は、お嬢様から一拍遅れて流れている。


そう、思わされるような、不思議な光景でした。


嗚呼、あぁ、私は、愚かにも、思い込んでいました。

ひとひらに鍛え続ければお嬢様と同じ領域にたどり着けると。

不遜にも、傲岸にも、あのお方の紡ぐ戦さに着いていけると。


ですが、それは夢幻でしかないと、私はこのときお嬢様の狩りを―――――えぇ、まさしくあれは狩りであり、かの魔物は…………ドラゴンは、獲物(・・)でございました。――――――狩りを見て、思い知ったのです。

お嬢様

あなた様は、

私などが頂など仰ぎ見ることもできず、その山肌の凹(・・・・・・)凸ひとつが(・・・・・)登坂するべき山(・・・・・・・)脈だと錯覚(・・・・・)するほど(・・・・)()







高みにおられたのですね。









メイドの忠誠心ゲージがそろそろオーバーフローしそうです。

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