リアーナ流暇潰し術
2019年3月19日7時30分
第23部分からここまでの物語に対し内容変更を含む大幅な加筆を行いました。申し訳ございませんが、未読の方は先にご覧ください。
基地から帰ってきて、俺は物憂げなため息をついていた。
俺も10歳になった。デビュタントの年だ。
とはいえそれまではまだ数ヵ月ほどの間がある。
兵器もほぼ完成したし今のとこ考えているのは人工衛星を打ち上げてより通信をしやすくすることと、偵察衛星として使用すること。あとはGPSによってミサイルや砲弾を誘導するシステムだが、そちらはこれまでの技術的ノウハウででっち上げられる。
ソフトの方はマリアがすでに組んでるしな。
と、言うわけで、俺はそっちにはノータッチでオヤジや職人たちが頑張っている。
では、なにに悩んでいるかと言うと、
「アンよ、俺は暇なんだ。」
「はぁ。」
暇なのだ。暇なんだよ。マリアはオヤジたちに技術面でのアドバイスをしに行ってて居ないし。
まぁ、ここで困惑した顔を晒すアンやその部下の戦闘メイド達と訓練やら組手やらするということも考えられるけどぶっちゃけなんかこう、生き物を撃ちたい。
トリガーハッピーなお嬢様なのだ俺は。
なにいってるかわからん?安心しろ、俺もだ。
ま、いい。
ともかく今は暇潰しがほしいのだ。なので、俺はメイド達の長に指示を出す。
「アン、ちょっと面白そうなモンスターとか居ないかお前の部下に探らせてくれ。」
「かしこまりました。」
忠実なる俺のメイドは指示に従うべくインカムから部下に命令を下す。
こいつが長を勤める部隊は俺が直々に訓練したうちの歩兵部隊の最精鋭だ。
発足してから一年。うちの領に集まる孤児のうちから見所のあるやつを選抜し、部隊に編入することで最初の10名から増員を繰り返し今では100名近くが部隊の隊員となっている。
その任務はタスマニア王国各地で、情報収集や欺瞞情報の流布を行うと言った情報戦に始まり、有事の際の即応やら砲撃誘導そして暗殺と多岐に渡る。
編成は俺付きのメイド筆頭であるアンを総指揮官として、その下に直属の部下が10名と、9名の小隊長、彼女達がそれぞれ2分隊ずつを率いる。
基本的にはアンの部隊は俺の側を離れず、その他の9つの部隊がアンの指揮のもと王国全土に散らばり動いている。前世の地球とは隊の単位とその人数が違いまくっているがそこは増員したら追々整えるつもりである。
即応にして精強そして堅牢、そんな彼女たちは一分もたたないうちに情報を俺にもたらしてくれる。
「お嬢様、トレスの部隊がここから20キロほど離れた町でドラゴンの目撃情報を仕入れたそうです。」
トレスというのは、第三小隊を率いる小隊長だ。
彼女の部隊をチーム3にした理由は、名前的にぴったしだったから。名前がトレス、スペイン語の3はトレス、語呂合わせだ。
ちなみにこれは余談だが、小隊長の9名はアンと同じく、最初に俺のもとに来た10名のうちから選抜した。第一期生ってやつだな。
閑話休題。
とにかく今は暇潰しだ。
「ドラゴン?」
どうやら大物が出たらしいので、確認する。
「はい、トレス自身が目撃証言を辿り、存在を確認。現在位置をマークしているそうです。如何いたしますか?」
ふむ、裏取りもできてる、と。
なら行かない理由も無かろう。妹もいなくて暇だし、ちょっと一狩りいきますか。
「車輌を、基地の方に申請して用意させろ。ハンヴィーがいい、装備はHKで行く。」
「かしこまり…………お嬢様?」
ん?なんか訝しげってか
なにアホなこといってんのこいつ?
って顔ですねアンさんや。
「どったの?メイドさん」
きょとん顔できいてやる。なんや?
「いえ、相手はドラゴンですよ?確かに我々の武力であれば歩兵でも制圧可能ではありますが、それはパンツァーファウスト等の対装甲火器を使用した場合の話です。」
パンツァーファウスト、
成形炸薬弾と呼ばれる弾頭をロケット推進によって無誘導で飛ばす、歩兵携行火器である。
この成形炸薬弾というやつは、円錐形の窪みを着けた形に固めた爆薬によってモンローノイマン効果を発生、内部に備える金属製の内張りを金属片に変え、メタルジェット、つまり細かい金属による超高圧かつ超高速の噴流を発生させる。
その威力たるや、前世の最新鋭戦車、こっちで俺たちが使っているM1エイブラムスや、それと同世代のレオパルドなどと言った固い装甲を持つ車両をも撃破できる。
まぁ、あれならこっちの世界では破壊不可能と言われてるドラゴンの鱗とか装甲とかぶち抜いて内臓をぐちゃぐちゃにできそうだけど。
「アサルトライフルで充分。高価な弾の無駄使いはいくないぞ。」
HKでもイケるよ。腕さえあればね。
「わかり…………ました。」
うん、素直でよろしい。
さ、というわけでちょっとドラゴンスレイヤーになってこようか。