最高の贈り物
辺境伯爵邸、つまり俺とマリアの愛の巣の中にある俺の私室には、今、十名の女性が立っていた。
彼女達は元々は男爵家の令嬢である。彼女達のような低位貴族の娘は、淑女教育と高位貴族との繋ぎを目的に辺境伯やら公爵やらの家に従者として仕えることがままある。彼女達もそういうもののうちの一部だ。
さて、俺は彼女達を一瞥して、筋肉のバランスや骨格、それらを総合した現時点での傾向をおおまかに測る。
うんうん、みなさん引き締まったよい体です。あ、変な意味じゃないよ。
「さて、良く俺の専属メイドになってくれた、まずは感謝を送ろう。」
俺の言葉、たぶん、感謝するという内容とその口調に、彼女達は軽い驚きを浮かべる。
「そして、感謝というものは言葉だけでなく、何かしらの対価でもって示すのが望ましい。そうだろう?」
その問いに彼女達はどう答えたものか悩む。
イェスと言えば何かをくれとねだることになるし、貴族にノーと言うのはすこしばかり失礼だ。
よって返答は期待してない。
「…………ま、いい。諸君らがどう思おうと俺はそう考える。喜べ、諸君らにはこの世界で考えうる最高の贈り物を用意した」
その言葉に、様々な教育を受けて礼節と心構えを叩き込まれたとはいえまだまだ10代後半の少女である目の前の女性達は顔に喜色を滲ませる。
そうかそうか、喜んでくれておいちゃんも嬉しいよ。たぶん、君らはこれを望んでねーけどな。
でも、それがあれば、なんでもできる。なんでも手にはいる。
尊敬も、称賛も、憧憬も、自由も、なにもかも。
「俺が君たちに送るものは、一般に、こう、呼ばれる」
俺の部屋に備え付けてあるガンラック、俺はその鍵をあけ、中に収まった大量の銃器の中からスカーを取り出す。
スカー、それが体現するもの
嗚呼、偉大にして高貴なるそれの名は――――――――
「武力、と。俺が君たちに与えるものは、そう呼ばれるものだ。」
そんな言葉とともに、スカーを手にした俺は歯茎を見せて笑った。