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工業力=資源×工作機械

さて、前準備だ。

さて、茶会を終えて、俺は従者のアレンに案内させて鍛冶屋を訪れていた。


茶会?盛大にスッ転んだ俺を見て、笑うやつが少数、笑いをこらえたヤツが多数、心配したヤツがほんのごくわずかってか俺のこっちでの父親。ま、どーでもいいが。


……………そういやこの状況になって思ったんだが俺の本来の中身ちゃんはどこに行ったのかね?

こけたとき頭打ってたし死んだか?


まぁ、いい。今更気にしてもどうにもならん。

そんなことより鍛冶屋だ鍛冶屋。


俺は、店の軒先、筋骨粒々の店主を前に、それはそれは綺麗な



ジャパニーズ土下座をキメていた。頭は地に、プライドは捨てた。


「頼む、この通りだ。俺の言う通りのものを作ってくれ。」


そんな風に頼み込む俺に、店主は


「いや、金さえ払えば作るけども、貴族にそれされると俺が困る。」


「後生だ!!頼む!!」


「だぁぁっ!!やめろ!!周りの目が!!とんでもないことになってっから!!!幼い少女を苛める成人男性に対する風当たりの強さを舐めるな!!?」


涙目ですがり付いてだめ押しするとそんな風に狼狽し出す。狙ってやってるんだからやめるわけないだろ。


「なんなんだコンチクショー。わーったよ、お貴族さま、やってやるよ。金さえ払えばな。」


俺は土下座によってドレスに付いた埃やら泥やらもろもろをはたいて落としながら立ち上がる。


「ふっ、勝った。」


「おぉ、そーだな。そのかわり貴族どころか人として越えちゃいけない一線をぶち抜いてった気がするけどな。

で?何を作れって?」


甘いなおやっさん、なにかを得られるやつはなにかを捨てられるやつなんだぜ?アニメイションで言ってたから間違いない。


なんて、そんなどうでもいいことを考えつつ…………。


「俺の使える最大量だ。こいつであるものをつくってほしい。」


代金を渡す―――――――具体的には、坑山が一つ二つ、安物の剣なら何十何百と揃えられるくらいの金貨を。


「とんでもないな………お伽噺に出てくるような魔剣でも作らせる気か?」


店主のその言葉に、俺は鼻で笑って答える。


「魔剣?んなちゃちなもんじゃねぇよ。それこそ、そいつがありゃあ、戦場が変わる、名馬に乗った騎士も重装歩兵も象の隊列も、ロクセファランクス――――――練り上げた隊列も、それこそ魔剣持ち(・・・・)の英傑も(・・・・)、徴兵でかき集めた雑兵と同じく、等価に、みんなみんな(・・・・・・)ゴミになる(・・・・・)、そういうもんを作れと言っている。」


俺のその言葉を聞いて、店主がポカンとした間抜け面を晒す。

そうして、しばらくそのアホ面を晒して、彼は、


「ぶっ、ふぁっははははははははは!!!」


呵々大笑した。


「いいぜ、乗った、乗ってやるともよ。お嬢のその与太に、俺の鍛冶人生、名誉も溜め込んだ素材も、全てすべてベットして(賭けて)やる」



うわ、糞外連味あふれる言いまわしだ痛すぎる。しかしどこかで覚えがあるなどこだったかな?

まぁいい、まず作るのは


「ドリルと旋盤、だな。」


俺のその言葉を聞いて、店主が首をかしげる。


「なんだそれ?」


「工作機械。あれならエネルギー変換やら切削やら機械工作やらの基本を覚えるにはちょうど良いと思ってな。

動力、電力やらモーターはまだ無理として、水力くらいしか使えるものは無さそうだけど――――――とにかく水圧が必要だな。ポンプとかあるか?」


端的に教えて、質問する。今はこれで我慢してくれ。まだ怪訝な顔してるけど。


「あるにはある。手押しポンプの噴射口をすぼめりゃ水圧も増すとは思う。必要十分まで向上するかは別としてな。」


手押しポンプか、案外進んでるな。

…………それでもいいが、どうせなら自動で汲み上げと噴射をさせたい。


「そんなら水車を使えば良い。」


水車、水車ね。

水力ってだけで出力が不安なのに、水車となると水の運動エネルギーが水車の回転に使われてさらに落ちるような………………とはいえぶっちゃけ俺は専門外だから理屈をこねくり回すには知識も経験も無さすぎる、やってみて改善するしかない、か。


「一応、採用で。ダメだったらまた考えれば良いさ。」


そこから数日。そこそこ流れの早い川で何度か試し、ポンプに改良を重ねて、弱い力でより大量の水を出せるようにしていくと、なんとか満足な水圧を確保できた。それこそ――――――小さめの、鉄製の水車を高速回転させるに足る程度の水圧は確保できた。


こいつはとりあえずの動力源だ。こっから出力向上は必須だが、それでも動くことは動く。


「オヤジにつくってもらった本体に部品を取り付けて………っと。」


「これで完成だな。」


こうして、この世界にボール盤のプロトタイプ一号が誕生した。水力駆動、パワーはもといた世界のに大分、いやかなり劣るが、それでもこれが“重工業“の――――“近代兵器“の萌芽となってくれると信じて、俺は薄く笑った。


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