怪物四匹
ひとつ、部隊が粉砕された。
それを聞いた騎馬民族の将たちは動揺────することなく即座に情報収集に入った。
結果出力されるのは鋼鉄の天馬による蹂躙、なるおとぎ話の産物。
ここで彼らは馬鹿馬鹿しいと、鼻で笑うなような│無能ではない《・・・・・・》。上がった報告を事実と受け止め、その上で適解を導き出す。即ち
「直接の削りあいは避ける」
「当然」
「腕利きのハサシンに頭を直接刈らせよう」
「武力想定は?」
「決まっている、最大だ。とことんまで搦め手で行く。」
色仕掛けに誘引分断、あらゆる手を使ってのトップへの暗殺。
そして
「頭が死ねばまた生まれる」
「なに、そこに毒を仕込んでおけば良い」
「回り回ったら狩り取るまで」
その次の継承者に対して、騎馬民族の手の者を番わせる、もしくは次の継承者そのものを彼らの身内に│すり替える《・・・・・》、という最適解を。
だが
「ごきげんよう、そしてさようなら」
「雁首そろえてご苦労なことだ、こちらはやりやすくて助かるがね。」
こと殺し合いにおいて、拙速は巧遅を食らう
事前に潜ませた者たちの報告によって特定した敵前線拠点、リアーナは進出してきた敵部隊が粉砕されてすぐさま、そこに突入していた。
「っシィッ!!」
誰何も疑問も不要とばかりに反応した将たちが刀を
抜いて斬りかかるも、すり抜けるように奔った銀線2本が彼らをまとめて死体に変える。
数的不利を覆せるからこその、たった二人での特攻なのだ。
「どれだけ策を練ろうが実行前にぶち抜かれたらおしまいだわなぁ」
「殺すべき相手は何も考えずに即座に首を落とせ…………正しいね、基本のきだとも。」
怪物、2匹
どれだけ有能な軍人兵士でも────勝てるはずもなく。
勝てるとすればそれは
「ばちぼち………頃合いかな。」
同等の怪物だけ。
Su57、T14アルマータ、Su35
…………数多の兵器が地を、空を埋め尽くす。
「お転婆娘にお灸を据えにいこう」
そして、怪物は彼らだけではない
「大カーン、準備ができました。」
「素晴らしい、平らげるぞ。」
それはアバドンの化身、物量の極み
大陸の国々を平定し全てを我が物とした大帝国の主が率いる軍勢────3000万
真の意味での国民皆兵を体現する遊牧民族を筆頭にどれだけ死なせても惜しくない捕虜、奴隷でもって構成されるが故の、無理無茶無謀。
補給要員の一切を持たずに略奪しながら速攻をかける、という蛮行
本来であれば瓦解するだろうこの軍を、群をまとめられるが故の“怪物“
遊牧民族大帝国初代皇帝
ツォライ・カーン