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大空へ

俺の前に現れた天使、いや、そう見まがうような美少女は名前をマリアと名乗った。

マリアはウチの遠戚で、両親が死に、孤児院に入れられていたところをウチで引き取ったらしい。現在7歳、俺の一個下だそうだ。


「あの………よろしく、おねがい、し、ます」


たどたどしく喋る様が庇護欲をそそる。くそっ。可愛いなぁ。今日からこの子は俺の義理の妹になるらしく、俺は内心歓喜で跳び跳ねていた。


「あぁ、よろしくマリア。今日からはここがお前の家だ。俺のことは是非ともおねぇちゃんと呼んでくれたまへ。」


やべっ、平静を装おうとしたら語尾が不思議なことに。

うーん、前世から義理のとはいえシスコンのケはあったからなぁ。こっちでもその性癖は健在か厄介な。


「は、い。おねぇちゃん、よろし、く………」



おっへぇ。これは凄まじい破壊力ですぞ。

んー?でもなんかこう、ちょっと距離を取られてるような?

そんな可愛らしい(天使)を見ていると、ある記憶が甦ってきた。

そう、俺が今居るこの世界のモトネタ、乙女ゲーのタスマニアンラプソディー。

そこで、オリジナルのリアーナは急にできた妹を苛めまくるのだ。


何てことはない、マリアの美貌に対する下らない嫉妬で。


ゲームでは、それを主人公が助けることによってマリアと友達になり、様々なサポートを受けることができるようになる。便利なキャラだ。

とはいえ、この世界の住人であるマリアがそんなことを知るよしもないので俺を避ける原因は別にありそうだが、それはいい。

オリジナルがこの子を苛めてたとかも、俺には関係ない。

新しくできた妹が、前世でそれはもう可愛がっていた義妹と重なったこともあり、俺はこのマリアを命を懸けて守ることを誓った。


それこそ



たとえこの(・・・・・)子以外の、(・・・・・)自分を含む(・・・・・)すべてを(・・・・)血に染めて(・・・・・)でも(・・)




さて、そうして俺は新しく来た妹との挨拶を済ませて、部屋に戻ってきた。

本心を言えば頭を撫でたり抱きついたりしたいくらいだが今あの子はこちらを避けている。

むやみに触れて余計に怖がらせることもあるまい。

俺は机の上でバラされたままのHK417を素早く組みたて、ガンラックにしまうとベッドにもぐりこんだ。




翌日、朝早くに俺は鍛冶屋を訪れていた。

今回ここに来たのは、また新たにつくってほしいものがあったからだ。

以前頼んだICチップはまだ未完成だが、ここの職人たちは人手もあるしそれぞれが精鋭だ。

並行して作業させても問題ない。


「さて、今回つくるのはターボファンとターボプロップ、二種類のジェットエンジンと、アクチュエイターだ。」


俺の言葉に職人たちがざわめき、オヤジが彼らの意思を代弁する。


「この前作ったガソリンエンジンとは違うのか?」

その言葉に俺はニヤリと笑って返す。


「あぁ、全く違う。なによりも、パワーが段違いだ。」

ジェットエンジンとは簡単に言えば、外気を取り込み燃料と混合し、それを燃焼させて噴流とし、その反作用で推進力を得るエンジンだ。

今回作るのはこの中でもガスタービンと呼ばれる部類のもので、内部に備え付けられた大量のタービンが燃焼エネルギーによって回りそれによって起こるタービンブレードの回転によって空気をガンガン取り込んで燃焼エネルギーを増大させるとともに燃焼ガスをものすごい勢いで吹き出させるというものだ。

こいつは燃料に関してはケロシンを使う。原油を蒸留して、処理を加えてできるもので、これは今すぐにでも作れる程度の技術的ノウハウはある。

また、この燃料燃焼はノズルからの燃料噴射とスパークプラグで行う。

プラグは完成しているので、噴射機構はガソリンエンジンでも使ったピストンの仕組みを流用して燃料に圧力をかけて噴射させる。動力は、少し前に開発したバッテリーだ。電池とか、下手したら個人でも作れるのでこいつは簡単に作れた。

こいつの電気を使い、コイルと鉄芯で作り出した電磁石から磁界を発生させて鉄製のピストンを動かす。そしてピストンはスプリングを押込み縮め、その反動によって戻り、を繰り返して駆動するのだ。

ちなみに、ピストンを動かすこの機構は職人たちのオリジナルだ。だって俺もさすがにここまで細かい部分の設計覚えてないしー。

磁力とスプリングの強さのバランス悪いとスプリングが押し込まれっぱなしになったり逆に押し込めなかったりして糞難しそうだけど是非とも頑張ってほしい。

ただ、まぁここで使う鉄、実は我が領地ではあまり取れないので、事前に作っておいたガーランドM1小銃と呼ばれるタイプの、俺たちの使うスカーやHKとは比べ物になら無いくらいの型落ちのライフルの製造法と引き換えに、鉄がよく取れる国から継続して供与してもらっている。スッゲー喜んでた。強力な遠距離武器はやっぱ魅力的なんだろうな。あ、もちろんこれはオフレコ(機密事項)ですよ?


しっかし………………あらためて、ここの職人たちの進化がやべぇ。鍛冶師のレベルじゃねぇぞこの仕事。

ま、それは今は置いとこう。

さて、今回作るのはこのジェットエンジンのウチの二種類。ターボファンエンジンとは、全長20メートル級の鋼鉄の塊(戦闘機)を、音より早く飛ばせるバケモノ。

ジェットエンジンの空気(エア)取り込み口(インテーク)にタービンと同軸のファンをつけて、亜音速域での空気取り込みを安定させたエンジンだ。


そして、もうひとつはターボプロップエンジン。ファンのかわりにプロペラやらローターをつけて、噴流よりもどちらかと言うとこのローターやプロペラによって推進するものだ。



アクチュエイターとは、これは一言で言えば飛行機の翼を動かすシステムだ。基本的には油圧式を使う。

飛行機の翼は本体とエルロンに別れ、エルロンは本体にくっつく小さな翼だ。

このエルロンが動くことで飛行機は機体を制御する。


さて、ここまでを図を交えて説明すると、職人たちは目を見開き一言一句聞き逃さぬようにかじりついてきた。

やる気に満ち溢れているようで大変よろしい。



あとはアクチュエイターのしくみだが………油圧システムを説明しようとしたところで、オヤジが口を開く。


「アクチュエイター…………固定した翼に小さい翼(エルロン)をくっつけてそいつを動かす仕組みだったか?それもピストンを動かすために思い付いたアイデアを応用して作れるかもしれんぞ。」


………………なんだって?


「電磁石の磁力で水平に着けた翼を上下動させればいい。平たい翼と言ってもそんなでかいもんにつけるならそこそこの厚さになるだろう?

なら磁石をエルロンに一つと翼本体二つくっつけてだな……………」


つまり本体の上下に着けた電磁石に電気を通す通さないで操作するのね。

ごくごく単純な電磁式アクチュエーターって感じですね。


翼本体上部の磁石に磁力を通せば、エルロンの磁石が引っ張られてエルロンは軸を固定したまま持ち上がる、

下部の磁石に磁力を通せばエルロンはそっちに引っ張られて今度は下がる。


面白い、細かい舵の調整に難があるかもしれんが、下手したら複雑で何段階かのステップを踏んで作動する油圧式より機敏に動くかもしれんぞ。

やってみる価値はあるな。


「OK、ならその仕組みでやってみよう。出来上がるまでにかなり時間がかかりそうだが、出来上がったらかなり良いものになりそうだ。」


俺はニヤリと笑ってOKを出した。


お願い》


皆様お察しの通り今回から作るのは航空機ですが、オリジナルの作動機構で翼を動かすようです。

このように時々オリジナルな機構を入れていくこともあります、読者様がご覧になって物理的、化学的な不可能性が発覚した場合。

または現実の機構を流用した描写の際も、事実との齟齬が発覚した場合、感想欄などでご助言を賜ると大変助かります。

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