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活路はすでに

「がっ………はっ…………。」


ブリタニア王城、謁見の間

広大な城内の中央に位置するそこで、俺は血溜まりに沈んでいた。


―――――クソッタレ。


胸中で毒づいて、左側の視界が完全にブラックアウトしていることを認識する。こりゃ戻らねぇな、たぶん眼球がツブれてやがる。

ジクジクしてきやがった、徐々に周囲が寒くなって

いや、これは俺の体温が無くなってきてるのか。


あぁ、クソッ。こりゃダメだ。


無理矢理首を動かして部屋の入り口、豪奢な装飾の扉のあるそこを見ると、一緒に突入してきた部隊の仲間たちが敵兵と撃ち合っている所だった。

連続した発砲音はあきらかにアサルトライフルのそれ……………、俺たちじゃない、相手が使っているのだ。


「―――――無様であるな。暴虐の君よ。」


ふと、鈴をならしたような声が耳を打つ。


「てめぇの、っ、おかげでな……………っ。」


固まりになった血反吐を吹き出しながら、皮肉を返す。

うまく不適な表情が作れているかすら、もうわからない。


「ふっ、ははっ。重畳、重畳、まだ囀ずる元気があるか。」


心地よさを感じる――――いや、強制的に感じさせられる声音。

1/f揺らぎと呼ばれるそれは、人間を鎮静させ言っていることを信じこみ易くさせる効果がある。


(呑まれるかよ、タネはわれてんだ………。)


這いずりながら睨み、その不快な笑顔を眼に焼き付ける。

必ず殺す、そのために、絶対に忘れない


「アルトリア・ドレイク……………俺の戦友に手を出したことを後悔させてやる……………!」


俺の戦友――――――アリスの横で嗤うブリタニア国王を。


「………………。」


無色透明、感情を出すまいとしている(・・・・・・・・・)表情でこちらを見下ろしながら、アリスが一歩踏み出す。

両手にはククリナイフ、あれを振り下ろされたら抵抗する術もなく死ぬだろう。

共に突入した味方からの援護は―――――絶望的

玉座の間の外からは先程から絶え間なく銃声が聞こえている。

うちの軍の6.8㎜と、ブリタニアの7.62㎜弾の銃声が。


誘い込まれていた


斬首作戦は事前にターゲットの周りに戦力を集められていたらあっさりと瓦解する。

少数で潜入して不意打ちの一撃を加え、敵の頭を切り落とすのが肝なのだ。これではもはや成功は絶望的だろう。


「………………リアーナ。」


そんなことをつらつら考えていたら戦友の冷えた声で現実に引き戻された。


「いくら負け惜しみを言っても君がそこで血反吐を吐いている現実は変わらない。おとなしくここで死んでくれないかな………?」


苦しげに、そう、宣う。

あぁ、ブリタニア王のにやけ面がやけにイラつく。どんなタネか容易に想像はつくだけに――――こいつにそんな顔をさせた暗君を生かしちゃおけねぇ。

そんな光景を眺めて、俺は


「くっ、く、ははっ。ははははははははっ!!!」


口の端から血を撒き散らしながら哄笑する。


「どうした?とうとう狂って――――――「間抜けだなぁ………えぇ?アルトリア・ドレイク。」何………?」


だって、そうだろう?


プランAを潰した(・・・・・・・・)程度でいきがる(・・・・・・・)お前が滑稽だと(・・・・・・・)、そう、言ってるんだよ。」


きちんと言葉になっているだろうか?ゴポゴポと喉の奥から音が聞こえる。濃い鉄の味を飲み下しながら、淡化をきる。


仕込みは上々。少数での浸透潜入、斬首作戦なんざハナからダメもと。


「通信を傍受して、情報を盗んで、こっちの裏をかいた―――――そんな都合の良い幻想(・・・・・・・)、気持ちが良かったか?クソッタレ。」


俺たちが本気で秘匿しようとしたら、お前らごときが暗号化された通信を解読できるものか。

お前らに渡した(・・・)作戦はただの表向き。

本当の狙いは


「てめぇは、慎重で、賢しい。大軍で直上陸、平押しなんてしたら軍は壊滅させられても遅滞戦闘やられてる間に逃げ切ることなんざ目に見えている。だから、わざと少数で王宮に踏み込んだ。」


「…………っ、と、すると―――キサマッ」


そう、そうすれば。


「お前は戦力をここに結集させ、俺たちを迎え撃つ。お前をここに釘付けにできる。そうしたところを―――――――そら、来たぞ。」


ごぅ、と

死神の羽音が聞こえてくる。


そのステルス能力によって滞空網を潜り抜け侵入してきたF35C、4機。

火力を高めたビーストモードのそれらは、先日の演習をなぞるかのように王城から30キロ地点でペイヴウェイ(誘導爆弾)を投弾


その第一陣が、今――――――――


「きさ―――まぁぁぁっ!!!」


「吹っ飛びな。プッシーキャット。」


俺たちの居る謁見の間に飛び込み、爆ぜた。


「斬首作戦が一番人道的――――――

だからどうした。何万無辜の人間を殺しても、お前一人巻き込めりゃ勝ちなんだ、よ………………。」


そんな風に言って口の端をつり上げながら、落ちてくる瓦礫を暗転する意識の片隅で認識した。









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