首切り侍
「レヴィアタンからHQC、当海域にて確認した敵潜水艦の殲滅を確認。」
今まで対潜戦闘をこなしていたレヴィアタンの艦隊から通信が入る。
うちのシーウルフ級やジャパンネイビーのソウリューみたいな現代潜水艦ってやつは、それはもう涙ぐましい消音措置がとられていたものだが、この世界の潜水艦はまだ“潜水も可能な船“でしかない。そこまでの静粛性はまだない。
対潜ヘリや駆逐艦から水中に投下された曳航ソナー、そしてアーレイ・バーク級艦首に備えられたバウ・ソナーからすれば良いカモだ。
そうして補足したらあとは詰み、アスロックなり魚雷なりが追尾して直撃、バブルパルスが船体を引き裂き深海一万マイルへご招待だ。
「copy、良くやった。艦隊はレヴィアタンのalphaとベルフェゴール及びマモンのbravo、二つに別れ、alphaは補給後タスマニア近海を哨戒、bravoはブリタニア東部の軍港に艦砲射撃を行ない陽動とせよ。砲撃開始と同時、空母航空団によりseedを開始、我々もヘリにてブリタニアの防空網を突破する。」
指示を出しながら王城までのルートを確認。この世界では目分量の雑な地図でも戦略物資であり機密指定されているような状況だが、俺たちならば数十機の衛星によって地形どころか敵の布陣、部隊移動に兵士個々人の顔に至るまで把握できる。情報での優越は戦争の結果を勝敗付ける大きなファクターだ。
敵がどこにいるかがわかっていれば、効率的な奇襲ルートもわかるし会敵タイミングもこちらの思いのまま、相手の闇討ちだってかわせる。
戦場における不確定要素を戦場の霧と呼ぶが、現代軍隊の情報網は完全ではないにしろそれを晴らすことを可能とする。
近代に差し掛かったばかりの、ブリタニア軍とは竜と蟻ほども差があるだろう。
日が落ちる
もうすぐ夜だ
「夜闇は俺たちの味方だ、HMDをナイトビジョンモードに、状況開始。」
ヘルメットのバイザーを下ろし、側頭部につけられたスイッチを操作すれば視界が緑に染まる。
黒一色から、濃淡のある緑へと―――――。
それに伴って、HKのレイルハンドガードに取り付けたレーザーサイトをオン、これで暗闇だろうが問題なく狙い撃ちできる。
暫くすると、進行方向から爆発音が聞こえてきた。
先行した戦闘機隊が順調に敵レーダーや対空砲を吹き飛ばしてくれているらしい。
「ブリタニア王都まであと少し、戦艦打撃軍より対地攻撃の開始を確認。匍匐飛行にて侵入する。降下準備。」
隊員たちが一斉に立ちあがり、銃をコッキング。
眼に剣呑な光が指して、戦闘準備完了だ。
眼下に金属塊――――レーダーサイトの残骸を見下ろしながら、悠々と、前へ。
「降下ポイントまで5、4、3、2、1、降下。」
しばらくすると、合図と共にブラックホークの側面扉が開放
ロープにウェイトをくくりつけて地面まで投下し、カラビナに繋がれた俺たちがそれに続く
着地の衝撃をゴロゴロと転がって逃がしつつ、即座にライフルを構えて周囲を警戒、着地ポイントを確保する。
「――――――降下完了、運搬感謝する。ヘリは即座に撤収せよ。」
二十秒もかからず全員がブリタニア王都近くの森に降り立ち、夜に溶けるように木々の影へと消えた。
設定などの見直しによりこの話以前の各所を改稿しています、物語の流れには関係ありませんが、台詞回しなども変更されています。