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轟沈

モニターに戦艦がまっぷたつになって海中へ沈んでいく様が映し出される

マッハ3の高速からくる運動エネルギーで装甲をぶち抜いたASM3(対鑑ミサイル)はそのまま艦中央の弾薬庫を誘爆させて160メートルの巨艦を内部から断裂させやがったのだ。

あの沈み方をした船の乗員は助からねぇ。

急速に沈む船の周りには渦状の海流が出来、全てを水底に引きずり込む。退艦する暇もなかっただろうし、生き延びたのはよくて数十人ってとこか


「ん、とうぜん、の結果。ドレッドノートで、レヴィアタンには、勝てない。」


レヴィアタン艦橋で、自慢げに妹が鼻をならす。

自分の船が敵を叩き潰したのがよほど嬉しいらしいな。


「軽いねぇ、人の生き死にが。」


苦笑しながら呟く。

戦場ではどんな人間でもあっけなく(・・・・・)死ぬものだ。それこそ、栄誉の戦死をするヤツよりパニックになった味方の誤射で犬死にするやつのが多いほどには。

こいつ(マリア)も俺もそれに慣れちまったからか、一発で数百人死んだというのにほとんど心も動かない。…………嫌になるぜ。


「…………いまさら、すぎ。

こっち、きてる、駆逐艦、は?どう、する?」


彼女はちらりとこちらに目をやりつつそんなことを聞いてくる。

そうだな、奴らは――――――


「“街灯に吊るされた死体“だな。見せしめになってもらおう。観戦武官たちをヘリに乗せておけ。」


タスマニアと、イタリカ

現在はうちの勢力と同盟関係のようなものを結んでいる二国だが、俺たちは両国の貴族、兵士を結構な数殺している

当然…………その家族や友人、近しいものからの恨みを買っているだろう。万単位で。

だから徹底的に脅す。


前にも言ったと思うが国家運営というのはマフィアのシノギのようなものだ

攻めてきそうなヤツが居れば人身御供を―――――文字通り吊し上げて(・・・・・)警告しておく必要がある。

俺たちは国ではなく軍だが、国家と渡り合う以上それは同じだ。


「タスマニア、の王様、は、優秀。自分の、憎悪の、感情を、切り捨ててる。」


ふと、マリアがそんなことを呟く

…………なるほど。タスマニアでは王子を脅し、近衛を殺し、竜騎士を殺していた。普通に考えればタスマニア王から俺たちへの好感度はマイナスどころの話じゃねぇな。

とはいえ―――――


「そもそもヘイト自体無いっつー可能性もあるがな。よほどアレな為政者でもない限り王なんてもんからしたら兵士ってのは駒…………っつーか道具だぞ、この世界ならなおさらだ。道具をいくら壊されても恨みも糞も無いだろ。」


…………まぁ、そんなもんだ。

王ってのはいちいち兵士の戦死の度に悲しんだり傷ついたりするようなヤツに勤まる仕事なワケがない。


「ん……………それは、そう。でも、タスマニア王、は、たぶん、違う(・・)


……………?

含みを持たせたマリアの言葉に俺は首をかしげる。


「彼は、元々――――騎士の出自」


「あー………………。」


わりと前にタスマニア国王のことは調べさせていた

その時に、たしか彼が元々騎士だったことが記されていた。

膨大な報告の中の一文だったはずだが………………よく覚えてるな。


「ってことは、ちとヤバイかな?」


「ヘイトは、買って、る。まちがい、なく。」


うん…………読み違えたな。

頭の痛い問題が増えた。


「殺しちまうのが手っ取り早いけど…………。」


「タスマニア、と、大義なき(・・・・)戦争が、したい、なら、お好きに、どう、ぞ。たぶん、かてる、し。」


俺の呟きに対してマリアはクスクス笑いながら返事をする。

現状、タスマニアは獅子身中の虫だ

普通ならとっとと切り捨てる所だが……………………。


「……………さんざん初手空爆かまして、その上条約破りやらかして国を滅ぼすと?これから先、いくら武力で脅しつけたとしても効果が無くなる(・・・・・・・)ぞ。マリアなら理解してると思うが、脅迫ってのは要求に反したら殺られるってのと同じくらい、要求に従ったら安全が保証されるってのが大事なんだ。そこをトチっちまったら脅迫も和平も通用しない血を血で洗う修羅の道に填まり込むしなにより―――――――大義なき戦争ほど不毛なもんは無い。」


苦い顔で言い捨てる。

ガリウスがこっちに手を出して来ていない現状、こっちからはキッチリとアメをやらなければならない。従ってもリターンが無いと、人と言うものは「抗って果てた方がマシ」と考えるものだ。


「ん、その、とおり。これ以上の恐怖政治は、悪手。だから―――――今が、チャンス。」


クスクスと喉を鳴らすのを止めて、マリアが静かに頬笑む。

ゾクリ、と俺の背筋が凍るのがわかる。こういうときのコイツは大抵よからぬことを考えている。これは、経験則だ。


「いま、王国、に、むかってる、ブリタニアの、航空部隊。それ、を、

タスマニア王都近郊まで、素通り(・・・)、させ、る。」





誤字報告で「街灯に吊るされた死体」は“街頭に吊るされた“ではないかとのご指摘がありましたが、この言い回しは2018年、暴行を受けた人が街灯にくくりつけられた状態で発見された事件と、2012年、橋に男女の遺体が吊るされていた事件から「マフィアの見せしめの手口」をイメージしたものです。

誤解を与えてしまったことをお詫び申し上げます。何卒ご理解のほどをよろしくお願いします。


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