戦艦打撃群、出陣
リアーナの有する海軍、そのトップである海軍長官はそれを見て即座に動いた
「ブリタニアが最高司令官殿のおわす町に向かっている。演習のため、レヴィアタンを含む第1戦艦打撃群とコーストガードのインディペンデンス級が近くまで進出していたはずだ。すぐに向かわせろ。」
第1戦艦打撃群―――――リアーナの海軍の誇るレヴィアタン級戦艦が所属する艦隊
海軍最強と呼ばれる第一艦隊の双璧であり、空母打撃群と並ぶ決戦戦力。
その編成は空母が戦艦に入れ替わっている以外は空母打撃群と同様のものになっている
「補給はどうしますか?」
副官が聞く
「随伴するジョン・ルイス級からの燃料給油だけで十分だろう。やつらなら弾薬満載で向かっているはずだからな。」
タブレットからデータリンクによって送られてきた部隊の状況………現在位置や弾薬量などを確認し迎撃に向かうよう指示を出す。
無人偵察機から上がってきた報告によると敵はブリタニアの大艦隊だ、あの国は軍の兵員数こそそこまで多くないがタスマニアや帝国を遥かに上回る装備を有する。
“魔法“と呼ばれる技術群は、かの国を軍事技術における最先進国までのし上げたのだ。
「とはいえあちらはいまだにFCSすら搭載せぬ旧式の戦艦部隊。我が軍なら、あるいは。」
彼は陸空のトップへと通信を行い、次の手を思案し始めた。
さて、所変わって今まさにブリタニアの侵攻を受けんとしているイタリカの町
その上空では数十を越えるワイバーンが隊列を組んで飛行していた。
「ブリタニアは我が国とタスマニアに宣戦を布告した!すでにあちらの艦隊は海岸から30里まで迫っている!諸君ら精鋭なる竜騎兵はこれを殲滅しイタリカに集まる貴族たちを守らねばならない!」
先頭を行く隊長の激が飛ぶ。
計20のワイバーンがドレッドノート級戦艦へ突貫―――――――そして
「対空戦闘。」
艦橋で艦長が一言発した数瞬後、両舷に備えられた対空砲が火を吹く
一瞬の内に打ち上げられた砲弾は数十を越え、内蔵された時限信管によって発射後一泊の間を開けて炸裂する
「なっ――――――!!」
破裂した弾体の破片が撒き散らされたそこへ竜たちが勢いよく突っ込む
金属片に鱗をズタズタに引き裂かれ乗っている騎士ごと絶命。
そこここに水しぶきを上げて撃墜されていく。
元来………このような高角砲というものはまともに中るものではない
しかし、たかだか百キロで飛行するワイバーンが相手であれば弾幕の量と砲手の練度によっては全機撃墜すら夢ではないのだ。
「…………………この時代、っつーかドレッドノートに高角砲?」
「ここに、は、竜が、いる、し。」
その光景を高度15000メートル、ブリタニア艦隊の索敵範囲外を飛翔するRQ4グローバルホークを通じて観察する人物がふたり。
我らが主人公リアーナとその妹、マリアである。
「あーそうか、この世界には昔から航空戦力が居たか。そりゃ対空戦闘も発達するわな。」
妹からの指摘に納得しつつタブレットの画像を切り替えるリアーナ、
そこには輪形陣を組んで航行する自軍艦隊が写っている
開発部謹製、偵察衛星の超高解像度カメラはあらゆる場をリアルタイムで撮影することを可能にした。
「ワイバーンは全滅…………か。」
ポソリとつぶやき、歩き出す
向かう先はタスマニア国王ガリウス
「とりあえず、二国から観戦武官を調達しなきゃな。」
ニヤリと顔を綻ばせ、最強の軍の長は企みを巡らせる
「本拠地であるタスマニア、そしてその友好国であるイタリカ………………彼らには絶対に俺たちに逆らえないよう、キッチリと教育して差し上げんとな?」
「ん、悪く、ない。」
酷く悪趣味な
恫喝
彼女たちの十八番である。
「第1BSG、敵迎撃前にこちらに迎えをくれ。観戦武官を乗せる。それと―――――――」
追加で指示を出しながら、戦略目標を設定していく
目的もなしに戦争をするほど彼女たちは愚かでも野蛮でもない
ブリタニアから搾り取れるもの、なるべく多く搾り取るために最適な攻撃目標…………。
「めぼしい資源、としては、天然ガス。それと、あっちの、持って、る輸入路、あとは商業進出とか?」
「天然ガスか………詳しい埋蔵場所を調べさせておこう。」
妹と相談しながら絵図を描く。勝利の仕方と、勝利の使いかたを導き出すために。
「っと、居た居た。おーい、ガリウスー。」
目的の人物を見つけて声をかける
話してみると、タスマニアからは近衛騎士団長がレヴィアタンに乗るそうだ
問題はイタリカだが、こちらもガリウスの仲介で無事武官を二名派遣されることとなった。