超超弩級
翌日、リアーナ私兵団海軍旗艦“レヴィアタン“
全長263メートル、排水量6万トンクラスの巨艦――――――その、艦橋
「隣のアレ、見たかね?やはりウチの軍の開発部はおかしいな。」
艦の操船を司るここで、レヴィアタン艦長は側の副官に話しかける。
「リアーナ総司令が主なレアメタル、ボーキサイト、領外の鉄坑山を押さえてますからね。油田も海上油田を十以上揃えてますし…………。基本的な資源を自軍で押さえて好きに使えるんです、そりゃ異常な生産性にもなりますよ。」
副官も苦笑いでそれに応え、自艦の隣を航行するそれに目を向ける。
「レヴィアタン級戦艦二番艦“ベルフェゴール“、三番艦“マモン“。
レヴィアタンだけでもバケモノだというのに、それが、三隻か。」
それは、自分達が今乗船する艦とまったく同じ構形、防御、武装を携えた戦艦――――――
七大罪の悪魔の名を冠した超弩級戦艦、ベルフェゴールとマモン。
ただでさえ大量の資源と金を食らうこの巨艦を三隻も揃えたのは、リアーナ達の経済力と工業力、そして国内資源地を軒並み掌握して得た資源量あってのことだと言える。
なお、艦艇というものは、三隻でワンセットである。
一隻が出撃し、二隻目が後備えとなり、三隻目が整備に回る
これをローテーションすることで運用するのだ。つまり………これでリアーナたちは常時レヴィアタン級を展開させておく体制を揃えたことになる。
洋上を航行する彼らの回りにはアーレイバーク級駆逐艦、まや型巡洋艦が輪形陣で侍り、海中にはシーウルフ級潜水艦が控えている。
先導するのは沿岸警備隊のインディペンデンス級LCSだ。
「今回はブリタニア海軍との海戦だ。実弾はどれ程積んである?」
「観艦式のつもりで来たのでほとんどない…………と言いたいところですが、ウチの軍の信条は“Si Vis Pacem, Para Bellum“ですからね。もちろん全砲、全VLS満タンですよ。」
ニヤリと口を歪めて二人が笑い会う
海の王、戦艦
空母に立場を奪われた彼らは、この世界で再び気炎を吐く。
さて、そのころリアーナ達は観艦式のために沿岸部の湾港へと訪れていた。
徐々にタスマニアやイタリカのガレオン船や戦列艦が集結しつつある。
その一角で、一人のタスマニア貴族が他の貴族を引き連れて入港する一隻の船を自慢していた。
「あれは…………!?」
「公爵殿、あの船、帆を張らずに航行しておるではないですか。手漕ぎ、というわけでもないのでしょう?」
「ふふふ…………まぁ落ち着きたまえ。あれは外輪船、蒸気の力で櫂を回して漕ぐことで推進する最新の軍船だ。」
左右に水車のような推進装置をつけたそれは、蒸気式外輪船。有名なものだと日本に来た黒船などだろうか。
史実では18世紀ごろに実用化される代物だが、未だ16世紀ごろの技術しかないはずのこの世界ではすでに試作がなされていた。
「全長は198尺。左右に砲を100門ずつ、これに勝てる船などおりませんぞ。」
貴族の世界はナメられたら終わりだ。
自信の持つ強カードを見せびらかすことは彼らの日常である。
彼らは自身の保有する艦艇を自慢し会う
それらが…………玩具に見えるほどのバケモノが迫っているとも知らずに。
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「外輪船だぜ外輪船。すげーな、初めて見たわ俺。」
「マジェスティが仰有ると嫌みにしか聞こえませんね……………。」
俺とアン、マリアは現在、艦観式に出席するため港町に来ていた。
なかなか栄えた町で、ブリタニアとの交易の窓口としてかなりの経済規模を誇る。
「戦列、艦?門数は、100くら、い。」
そんな町を歩きながら屋台で買った魚のつみれをパクつきつつ二国の軍艦を眺める。マリアは帆船に興味があるらしい。
「買うか?自家用に。」
「いら、ない。レヴィアタン、のが、万倍、良い。」
さいで。
まぁあれは強さもロマンもオーバーフローしてるからな。コストは死ぬほどかかるが。
「ん、きた。」
ふと、マリアが港の方に目をむけて呟く。
つられて俺もそっちを見て、固まる。
「俺の目がおかしくなったのか…………?レヴィアタンが三重に見えやがる。」
「増やした、から。」
大和と似た艦形の巨大戦艦
それが、…………三隻?
「ぶっ、ははははははっ。サプライズってこれかよ!飛行船じゃなくって!?すげぇなおい!」
「ん、誰、も、飛行船、が、そうとはいって、ない、し。」
なんつー屁理屈だ。
でも…………あぁ………最高だ。
「おぅ、貴族どもがマヌケ面になってやがる。」
「120メートルほどのLCSさえタスマニアやイタリカではとてつもない巨艦ですからね。マジェスティ。」
うん、そうだな。
この世界では50から70メートルの船で巨大軍艦とされる
260以上あるウチの戦艦なんかは島にしか見えんだろう。
「はは、まぁ、ウチは世界の警察にならなきゃいけねーからな。並の戦力じゃ話にもならんよ。
さて…………………。」
おもむろに起動したタブレットに海上に展開させておいたRQ4グローバルホークからの偵察映像が映る
そこに見えるのは、ブリタニアの大艦隊
その、先頭を往く船―――――それは、どう見ても
「ドレッドノート…………か?」
それは、イギリスの全盛期を支えた戦艦
それまでの軍艦すべてを陳腐化させた革命児
英国製弩級戦艦……………ドレッドノート。