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携行性と拳銃と

さて、後のことは職人たちに任せ、俺は自分の住む屋敷への道を歩いていた。


そろそろ帰らないと両親が心配しちまうし、何よりもうすぐダンスのレッスンの時間だからな。


…………ダンスが似合わないのは承知だっつうの。

しゃあないだろ、これでも貴族令嬢なんだよたぶん皆忘れかけてるけど。

ん?お前は心配されるようなタマじゃない?

ハハッ大丈夫、俺がくそ強いのはオヤジやその弟子の職人しか知らない。今のところは。

と、言うわけで家族から見た俺はまごうことなき貴族令嬢なんですわ。

か弱い乙女(ようじょ)なんですわ。



まぁ、それは、家族に限ったことじゃねぇけどな。

たとえば―――――――今俺の後ろを付いてきてるやつみたいなのには、親も護衛もつれずに一人であるいてる(幼女)はさぞちょろそうに見えるだろうよ。


ふーむ、ひぃふぅみぃ…………ネズミは六匹か。

ま、問題ねぇな。

俺はわざと人通りの少ない裏路地に入り、そいつらを誘う。

哀れにも、愚かにもそれについてくる六人の男たち。

気配がバレバレなそいつらの狙いは金か、それとも他のなにかかは知らんが、俺の蜘蛛の糸(ウェブ)に引っ掛かってきやがった。


さて、ショータイムだ。


「止まってください、お嬢さん。」


そんな声をかけられて


「…………へぇ、あんた、案外女の扱いをわかってるらしいな。」


想像していたものと180度なその口調に俺は思わず驚く。


「…………?意味がよく。」


と、なにやら訝しげにする襲撃者くん、これは…………しらばっくれてんのか?

いや、まさか――――――――


「ミステイクかっ、伏せろ、ボーイ。」


目の前で、丁寧な口調で話す青年、俺の後ろをつけてきてたそいつの、背後。

そこにいる輩が握っていたソレを見て、俺は咄嗟に叫んで自らの太股に素早く手を伸ばす。

そこにあるのは、ホルスターに収まったPPK。

これはドイツ製のコンパクトな拳銃で、護身用に最適な拳銃である。

俺が今持っているこいつは、職人たちが持っていたベレッタと同じ9㎜パラベラム弾を使用するタイプのものだ。

俺はそいつをクイックドロウ―――左手を胸に押し当て体幹がぶれないようにしつつ心臓をガードして、右手で股の強化プラスチック製ホルスターからそいつを引き抜くと腰の辺りで保持し、PPKの銃口を青年の後ろ


大降りなナイフ(・・・・・・・)丁寧な口調の若者に(・・・・・・・・・)振りかぶる野郎に向けた。


俺の叫び声に反応して、青年は頭を抱えてしゃがみこんでいる。ナイスだ。


ナイフを認識してから0.2秒で俺はPPKのトリガーを引いていた。

この撃ち方は精度が著しく落ちるが、俺はこいつで拳銃の基本的な交戦距離を少し越えた、10メートルまでなら頭をぶち抜ける。


そして、俺とナイフ野郎との距離は8メートルもなく―――――――


腰撃ち(ヒップシュート)で放たれた拳銃弾は、今まさに凶行に及ぶ直前のそいつの脳幹をぶち抜き、即座に命を奪った。


「な!?な?なに?」


青年が困惑してしゃがんだまま辺りを見回す。なるほど、これは


「Shit、この俺としたことが。ヤキが回ったかねっ。ハハッ、やっぱ生まれ直しなんてするもんじゃねぇな、感覚が鈍ってやがる。」


確かに、この青年は俺についてきていた。

たしかに、どこからか殺意は向けられていた。


だが、その殺意を向けてきていたのは


「ごめんなにぃちゃん。俺を害そうとしてたのは」



今ぞろぞろと出てきた、レイピアを持った男四人組と青年の後ろで脳漿をぶちまけて死んでるナイフマン。

急に物々しい雰囲気の連中がぞろぞろ現れて、このおとなしそうで、礼儀をわきまえた青年は目を白黒させている。


「今あんたの後ろにいるその5人だけ、あんたは俺に敵意なんぞなかった。くそ、俺も見誤ったな、あんたも俺をどーこーしようとしてたと勘違いした上、一緒にここに引きずり込んじまった。

その詫びに――――――」



キッチリと五体満足でおうちに帰してやる。





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