Down the sky
「HQCから全隊、辺境伯軍殲滅。戦闘を終了す」
辺境軍を軒並み死体に変えて隊員たちが勝鬨を上げる。
俺は今回の前哨基地となっている公爵の砦へと戦闘終了を報告していた
今回共に戦ったアリスは、すでに戦場から離脱しており、公爵から報酬を貰いに行くとのことだった。
「あとは帝国軍だな。マリア。」
「ん。諸兵科連合、を、いくつか、向かわせて、る。」
ヴァランクスの車内でHK417をクリーニングしつつイタリカに居るマリアと通信を行ない、帝国側の状況を確認する。
まぁまずは前線を食い破って、それから――――――
「帝都爆撃だ。奴等に恐怖を刻み込み、二度と戦争をできなくさせてやる。」
心臓部を叩く。
この世界では想定し得ない、敵国中枢部への直接攻勢。
帝都は城門で囲われているが、なぁに俺たちの航空機部隊にはそんなもんあって無きがごとし。
「おねぇ、ちゃんは、あっち、むかう、の?」
ん?あぁ、俺がそっちの帝国侵攻に参加するかって?
んー、どうしようかね。
「一応、何かあったときにすぐ対応できるようにはしときたいし、現地に行って待機しておくわ。C17を回してくれ。」
前線へ
その本能には逆らえなかった。
指揮官にはあるまじき習性だが、俺の本質は地球にいたときから変わっていないらしい
一兵卒の………………「オルトロス」と呼ばれたあのときから
名前をメイドたちに譲っても
性別や立場が変わっちまっても
それは、俺の中でしっかりと変わらず根付いている
厄介な性分だよ、本当に。
「…………ん、わかっ、た。てはい、しておく。」
小さな笑い声とともに妹は了承してくれる。
彼女はわかってくれているのだ、俺のどうしようもない悪癖を。
「あぁ、助かる。さんきゅ」
返答しながら苦笑いひとつ、
さて、迎えが来るまで待ちますかね。
一方その頃、
帝国国境では帝国の竜騎士による哨戒が行われていた。
二騎で編隊を組み、タスマニアからの侵攻を警戒する
「しかし…………敵はワイバーン200を撃退した怪物。我々だけでどれ程役に立つか………………。」
二人の騎士のうちの年長な方がひとりごちる
彼らに聞かされていたのは、敵の成した凶悪なまでの戦果
彼はそれを相手にたった2騎でなにができるか、とため息をついた。
と
シュパアッ
と空を切るような音が聞こえたその瞬間
彼と後続の若い竜騎士は何かを考える間もなく爆裂四散した。
それをやったのは、20キロほど離れたところにある二つの影
「growth17 area clear」
「growth18 area clear」
流線型の、優美な曲線で構成された白灰色の機体――――――――「F22ラプター」ステルス戦闘機のロッテである。
彼らはタスマニア東部にある基地に所属する戦闘機隊であり、“世界最強の戦闘機“たるラプターを操縦することを許されたエリートたちである。
「good job growth quarter ―――――タイタン2からCP、第352戦闘航空団の戦闘機隊が空域から敵を排除。」
グロウズから敵の竜騎士を排除したと報告を受けた、グロウズを指揮するE767――――コールサインを「タイタン2」とする第18航空団所属機のオペレーターから前哨基地へその旨が伝えられる。
現代戦のセオリーはまず空を取ること
戦闘機同士の空中戦により、その戦場の空での優位、つまり航空優勢を確保するのだ。
これをやっておかないと味方の地上部隊は敵に空から攻撃され放題となり、対空戦闘、対空防御にリソースを大幅に割かれる。
逆に初手で空を制すれば、いくら敵が遮蔽物の影に隠れようが上空の味方航空部隊からは丸見え
支援要請ひとつで敵を纏めて吹き飛ばせるし敵は地上と空両方に攻撃を行わねばならずこちらに向けられる火力が分散するのだ。
「CPからタイタン、ご苦労。
戦闘機隊はCAPに回して指示があるまで継続。」
CPはそれを受けてグロウズ隊を空域のパトロールにまわす
F22とE767であればその強力なレーダーシステムと150キロまで届くミサイルにより上空のかなりの範囲を死守してくれるだろう。
いや、グロウズだけではない
作戦に参加した他の航空部隊からも次々に帝国の竜騎士を撃破したと報告が入ってくる。
「帝国の哨戒網はズタズタだな」
国境近くに設営されたテントの中、前哨基地の通信手がボソリと漏らす
指揮官はそれを聞いて頷き、すぐさま報告をあげてきた部隊をCAPに割り振っていく。
空はすでに堕ちた
なら、あとは
「地上部隊、前進。―――――――グチャグチャにかき回してやれ。」
ここからは戦車と、砲と、歩兵
陸の支配者たちの出番だ。