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エネミーダウン

「対帝国部隊からHQC、これより作戦外の帝国との戦闘を行う。繰り返す、帝国兵から帝国国民への略奪行為の報告を受けたため、略奪を行う帝国軍との戦闘に入る。」


「承った、新規の作戦を承諾。本隊の方からも報告は貰っているからしっかりと相手国民間人の信頼を勝ち取ってこい。」


少佐がリアーナに通信を繋いで、本来のプランになかった帝国との戦闘について報告すると、すぐさま許可が出た。

今回農村を保護する主眼はHearts&mindであり、作戦地域においてそこの民間人に協力的な行動をしてもらうようにするためである。

民間人の信頼というのは案外バカにできないもので、これを軽視すると戦線を伸ばしたときに補給路として市街地を使いにくくなったり相手国の市民がゲリラ化したりする。

リアーナが農村への支援をすぐに受け入れたのも、それを理解しているからであった。


「copy …………ところで司令、先程から銃声と断末魔が聞こえるのですがなにをしてらっしゃるので?」


「騎兵100とやりあってる。二人で。」



その返答にオープン回線でそれを聞いていた隊員たちがスッと無表情になる。竜を殺したり近衛を殺したり、最高司令官にあるまじきアグレッシヴさなのは聞いていたが今回もやらかしているらしい。


少佐は、御武運を、とだけ告げて通信を切ると


「………さて、諸君。聞いていたと思うが司令どのからゴーが出た。



―――――――暴れるぞ。」


そう宣言した。


それに対し兵士たちは………不敵な笑みを浮かべて、応えた。

無人偵察機により、あと数刻で帝国兵たちが到着することはわかっている。

一部の隊員はギリースーツ(偽装服)を着込み、皆がライフルに弾薬を装填し、運転手たちは歩兵戦闘車のエンジンをかける。

村の、家屋と家屋の隙間に入り込み、空き家に侵入し、身を隠す。



そして――――その時はやって来た


蹄の音を鳴らしながら、馬に騎乗した兵士がやって来る

その後ろにはフルプレートアーマーを着込んだ屈強な男たちが控え、物々しい雰囲気を醸し出している。



「おい、どういうことだ?村人どもがいないぞ?」



「わからん………………おい、誰かおらんか!食料を献上せねばこの村ごと火炙りにしてやる!」


彼らは村につくや否や恫喝を始めた。実は、村人たちはリアーナの兵士たちが誤射を避けるために全員を家屋の中に避難させていたのだがそれがお気に召さなかったらしい

徒歩でここまで来た兵士、おそらく下級の兵卒たちが松明と油を用意しているところを見るに本気のようだ。



「村人たちの証言が真実なのはこれで確定だな……録画は?」


「バッチリです。」


その様子を空き家の中から見る影が二つ

オプスコアヘルメットの側面レイルに取り付けたカメラで未だにわめいている騎士たちを録画しつつ会話している。

その二人とはもちろん、少佐とその副官である

彼らは現在村人たちの証言が真実かを確かめ、その証拠となる映像を録画している最中であった。


この世界にカメラというものが無い以上タスマニアや帝国などでは証拠としては使えないが、自軍内でどのような経緯で戦闘に至ったかを報告する際に重宝するのだ。



「ちっ…………出てこんか、もういい。やれ、見せしめにはなろう。」



そうして、ついに帝国の、おそらく指揮官だろう男が火を放つ指示をしたその瞬間――――――



「全部隊、やれ。」


少佐の指示、そして


「copy」


返答と共にバラララララララっ!!と耳をつんざくような轟音が響き渡る。

遮蔽から銃口を覗かせて、兵士たちが帝国の騎士に鉛の礫を食らわせる。

横向きに寝転がり、上半身を民家の陰から露出させた状態で片足を壁に押し付けて体を安定させ、フルオートで撃ちまくる。


「リロード、カバー」


「copy」


弾が切れると即座に遮蔽に隠れて待機していた仲間に援護を頼む。

そこをカバーするように、即座に別の分隊員が膝だちで体を傾けた状態になり、肩と頭のみを遮蔽から出して射撃。


見れば、そこここで同じように仲間と互いの隙を補いつつ連続してHK417が撃ち放たれている。



「なっ、なんっゴペッ………。」


「に、逃げましょう!たいちょ…………がぶっ」


訳もわからぬまま帝国軍の軍人たちは、馬を、そして自身の頭や胸、体を7.62㎜スチールコア弾の雨に晒されて吹き飛ばされていく

たかだか数㎜厚のフルプレートメイルなど紙と同じ

そう主張するように厚さ2㎝の鉄板を撃ち抜く銃火が鎧を穿ち、内部の肉体をぐちゃぐちゃに噛み千切っていく。


優勢などというものではない。

認識すら許さず、一方的に殺し尽くす

ただの処刑だ。



と、いつのまに逃れていたのか、一人の騎士が民家から何かを引きずって出てくる。

射撃中だった兵士たちはそれを認識すると一斉にトリガーから指を離した


彼らが見たもの、それは

つい昨日花冠を渡してきたそばかすの少年が顔にアザをつくって、目に涙を浮かべてナイフを突きつけられた光景。


「てってめぇら!何者か知らんが追ってくるんじゃねぇぞ、来やがったらこのガキを――――ペゥっ」


少年を引きずって逃走しようとした騎士の頭がトマトを壁に投げつけたがごとく破裂する。

直後、その場の兵士たちの耳にはタァーン…………と間延びした銃声が届いた。


「スナイパー、敵を排除。」


チームリーダー(少佐)からスナイパー。こちらでも確認した。good job」



そう、村から出てすぐの丘の上では擬装のために藁を張り付けたギリースーツを着込んだスナイパー(狙撃手)が伏せていた

そしてその隣には照準の補助をするこれまたギリースーツを着たスポッターも確認できる


狙撃手の手にはAWMスナイパーライフル、

これは高威力のラプアマグナム弾を1.5キロ先まで命中させられる狙撃銃であり、これによって彼らは距離500メートルからヘッドショットを行ったのだ。

このライフルは精密さに定評のあるL96の大口径バージョンだけあって、人質に危害を加えられる前に目標(・・)のみを撃ち抜くには十分。


彼らは仕事の成果を称えるかのように互いにサムズアップをした。


そして





「……………エネミーダウン、全ての敵を排除。総員戦闘終了、繰り返す、戦闘を終了。

人質の保護と村民への報告を行う。」



少佐が部隊全員にそんな通信を飛ばす。


こうして、帝国とリアーナたちとの初戦はリアーナたちの勝利で終わった。






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