表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/167

ワルキューレの騎行

さほど時間をかけずに今回の戦場に指定された平原へとたどり着く。


戦車隊が列を組み、その後ろにM2ブラッドレー歩兵戦闘車と呼ばれる砲を搭載した兵員輸送用車両と、ハンヴィーやヴァランクスが隊列を組む。

最後尾には自走砲……M109パラディンが並ぶ。

上空にはAH64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリが飛び回り、敵への火力解放を待っている。


機甲部隊と呼ばれるタイプの諸兵科連合―――――ヘリ部隊、歩兵部隊、砲兵隊、戦車部隊を組み合わせたウチの軍の戦闘時の基本編成だ。


それを見ながら自分の装備であるHK417の簡単な整備や弾薬の補充を行っていると、上から甲高い音が聞こえてきた。


「モンスター?」


車内で目をつむっていたアリスが反応する。

ワイバーンの鳴き声とかと間違えたか?


「いや、違うよ。これは」


二人で窓から身を乗り出して上を見る、そこにあるのは、もちろん。


「うちの航空機部隊だ。」


F16Eファイティングファルコンの四機編隊と、A10C攻撃機の二機編隊。

前者は二機がAIM120とAIM9を装備した対空戦闘用の兵装。

残りの二機がペイヴウェイとAIM9二発を装備した対地攻撃仕様だ。

A10については、まぁ、追々語るとしよう。



「なんだぁ、味方か、にしても凄まじいね。竜騎士より速いんじゃない?」


まぁ倍以上の速度は出るわな。


さてと


「偵察部隊、敵戦力を報告。」


通信機に吹き込んだそれに応えて、偵察衛生やグローバルホークを有する空軍の偵察部隊から報告が入る。


「敵目標総数は1万、歩兵はガーランドライフルや(パイク)で武装。ヴァーゲンブルグ(装甲馬車)並びにカタパルト、カノン砲も散見される。」


おぅ、なかなかに集めたな。

この世界の基本的な編成通りだとすると、徴兵で集めた民兵と傭兵団が多数を占め、辺境伯自身が指揮を取る感じだろう。

傭兵は忠誠なんざ無いし民兵も戦闘に馴れてない。三割も削れば散り散りだろうな



――――――だが


「了解した。今回の戦闘はいわば絶対戦争(・・・・)だ。一人も生かして帰すな。」


逃がさない。逃がすものか。

クラウゼヴィッツの戦争論いわく、戦争における分類にはふたつある。現実的戦争と絶対戦争―――――これらのうち現実的な戦争は相手にダメージを負わせて敗走させることを目的とする、この世界における基本的な戦争はこれだ。

対して、絶対戦争とは

逃げる敵を追撃し、徹底的に壊滅させ、相手の息の根をまるっと止める。

苛烈に、非情に、どこまでもぐちゃぐちゃに壊して相手を心を芯まで折り、屈服させる。

残酷だと思うものも居るだろう。歴史書には稀代の悪人として名が記されるだろう。だが、そこまでやらなきゃこういう手合いはまた報復に来る。

戦乱の連鎖が起こってしまう。ガンジーの言ったように、「“目には目を“では全てが盲目になる」のだ、だから――――――


「目には命を、だ。攻撃してくるものは徹底的に叩き、踏み潰し、反攻の目を摘む。我々ならそれができる。対抗してくるすべての勢力を潰し我らがこの世界を強制支配する。


―――――――それが平和への唯一の道だ。」


徹底的にやる

叩いたら叩き返されるのが必定なら、叩き返される前に叩き壊せばいい。



オオォッ!と怒号によって俺の言葉に応える兵士達は、すぐさま自らの駆る鋼鉄の騎馬、その火力を統制するシステムをホットにする。

ディーゼルやターボファンの音と、油の匂いが俺の脳をハイにしていく。

隣に座るアリスも目を細めて口が歪み、狂相と言うに相応しい笑顔になっている。

いい具合に戦闘狂だなこいつ、悪くない。


車を発進させるとほぼ同時、両脇を固めるようにピタリとM1戦車が並んできた。後方には機械化歩兵の車両が追走して、戦車が取りこぼした敵を掃討する任務につく。

パラディンはそのままの位置で砲撃の準備を行っている。

そのまま横一列に進んで、戦車と車両は行進する


くはは、鉄塊の行軍だな。


地面が揺れ、土煙が立ち込める。


そして、時速50キロで走る50トンクラスの戦車の群れは轍を刻みながら――――――敵を射程に入れた


時は満ちた、息吹をあげろ。我が軍勢。


この世界にその力を示せ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ