スフォルツァ公爵
車を走らせること暫し、俺たちは公爵領の端にある砦に到着した。周囲は平原が広がって見晴らしがよい。
石作りで所々に物見のための塔が見える。
周囲は堀に囲まれ、橋で門へと繋がっている。
「ヴァランクス、もつかな。あの橋通って。」
俺たちの車は装甲でメタボぎみ、約六トンもある、木で構築された橋の上を通って崩れ落ちないか心配になってくるね。
「マジェスティ、あちらに我々の軍の車両が固めて停めてございます。」
と、アンが指差す方向を見てみると自走砲やヴァランクス、ハンヴィーやM1戦車がところ狭しと並んでいた。あー、まぁ、数十トンある戦車はさすがに無理があるわな………………。
よし、俺たちもあそこに停よう。
アクセルを踏んでそこまで進み、ゆっくりと駐車する。……………よし、綺麗に停めれたな。
「アン、公爵に話は通してあるんだろ?」
「はい、イタリカ王から戦闘の許諾を頂いたさい、辺境伯の討伐を勅命として発していただきましたので、そのためにこの砦付近で戦闘を行うことを公爵様も承知になられております。」
うむ、なら問題ねぇな。
全員で車から降りて、橋を渡って砦に入る。
「イタリカ王の勅命、辺境伯討伐のために参った、リアーナ・セレスである!門を開けられよ!」
上に向かって声をかけると、木と鉄で構成された門がギシギシ音をたてつつ開く。
ヒューッ、まるでゲームオブスロー………やめとこ。
「よく来たな、リアーナ卿」
と、これぞ中世騎士の時代と言わんばかりの光景に見惚れていた俺に渋い声がかかる。
前方に視線をやると――――――
「ははっ、これはこれは、スフォルツァ公爵殿、直々のお迎え痛み入ります。」
フォルト・スフォルツァ
アデリーナの父にして、ここスフォルツァ公爵領を治めるイタリカの最上位貴族。
「リアーナ卿、この度は娘と領地が世話になった、礼を言う
それはそれとして――――――――よくも余分な火種を我が国に持ち込んでくれたな?」
…………おっさんが青筋を立ててにこやかに笑いかけてくるんじゃねぇよ夢に出そうだろうが。
「はっ。しゃあねぇだろ奴んとこの領民がいたいけな子供を迫害してたんだ、ウチの愛しの妹だってブチキレてたし
―――――――――殺さない理由がどこにある?」
それにたいして俺は挑発するような笑いと共にそう返す。
審判は下っていた、奴等がルーを虐めていた時からな。
「…………ふっ、ははは。
まぁ、そうだな、我等としても奴等辺境伯領は目の上のコブだったのだ。」
おっ、公爵よ、そこまでぶっちゃけていいのか?
「思想も相容れぬし領土で揉めたことも1度2度ではない、正直、辺境伯はここで潰しておけるなら潰しておきたい。」
ふーん、まぁ、利害が一致したなら何よりだが…………。
「潰したらあんたは国境も治めることになるんだぜ?軍備とかどうすんの?」
そう、これからやりあうのは辺境伯。
それを討伐したら自然、その領地はスフォルツァ公爵領となる。
つまり、彼は国境を治めることになるのだ。
常備軍を持たねばならなくなるし、国境警備の義務を負うことになる。
そこらへんどうする気なのかね。と、
「問題ない。この時のために傭兵団からめぼしいものに引き抜きの打診はしていた。制度の整備も抜かりなくやっておったからな。」
おっさんはそんなことを宣いやがった…………つまりそれは
「………てめぇ、本当は俺たちがやらなくても戦争起こしてたろ、さては。」
半目で公爵を睨みながら言うと、相手は肩をすくめてはぐらかしてきた。
いや、うん、ここまで準備良いってことは、ね、そもそも辺境伯領狙ってたでしょこの人。
そこに俺たちが代わりに喧嘩吹っ掛けたから便乗してきたってことだろ。
「はぁ、まぁいい。公爵さんよ、そっちからは兵は出すのか?」
「一応傭兵団を雇っておる。不服か?足りぬと言うのか?」
いや、そうじゃなくて。
「いらない。辺境伯軍程度俺たちだけで十分潰せる。」
足手まとい。砲も銃も無い傭兵団なんて前線に出られてもこっちの砲撃に巻き込んですぐジエンドだ。
「ほぉ、たいした自信だな。では、お手並み拝見といこうか。」
俺と公爵はニヤリと笑みを交わす
お手並み拝見、ね
じゃあメンタマ開いて特とごろうじろ
現代軍隊の戦争ってやつを、な。