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鋼鉄と油

今回から無双できると思ったかね?残念。まだ作業パートだ。


もう少し待ってください。一応次回から何話かは(軽い)俺teeeeをやります。

「よー、オヤジ、上手くいってる?」


HK417が完成してから2年、その2年間特に何事もなく、銃の試射もかねてお忍びでオヤジやオヤジのとこの職人たちに熊やら猪やらを狩ってきてやりつつ、令嬢教育を受けてバチクソ淑女としての格が上がった俺は、また鍛冶屋を訪れていた。

今製作しているのは、ICチップと、エンジン。

現代機械の根幹を成すこれらの仕組みを教え、職人総出で作らせているのだ。



「エンジンはもうそろそろだ。鉄にコイルを巻いて、そいつを機械制御で鉄片と接合、解離を自由にできるようにすれば、完成する。」


おお、あとはスパークプラグだけか。

エンジンというものは燃焼エネルギーでピストンを動かす。

基本的な仕組みは、容器内部にガスを注入し、そいつをスパークプラグで爆発させる。それによりピストンを動かし、連結されたシャフトの回転により、ピストンはもう一度もとに戻って、容器内部に再度注入されたガスを圧縮、そしてまたガスに点火、それを繰り返す。

まーこいつを連結させて、シャフトの回転をタイヤに伝えればクルマは走る。

幸いにも燃料なら、購入した地上油田があるし、うちの領地近くの海域で海上油田も見つけた。漁村の噂を元に位置をしぼり込み、人夫を雇ってガレー船で何往復もしながら採掘してきたのだ。

こいつでガソリンでもなんでもこいだ。ステアリングに関しては、機械制御のものならすでに試作できてるらしい。ま、ハンドルの回転をいくつかのパイプの組み合わせによってタイヤに伝えるだけだし。こっちはすぐできたらしい。

というわけで今作ってるのは戦闘車両だ。

ハンヴィーとも言う。

エネルギーの変換と物体の運動、これらの理論は俺がわざわざ教えなくてもこの世界のお偉い学者さんたちが研究してくれている。貴族ならばそういった知識を記した書物の入手も不可能ではないからして。

そうした体系化された知識とオヤジたち鍛治職人の経験と勘は機械工作にも発揮された。

しかも手付かずの油田なんつー潤沢過ぎる燃料によって何度でも無駄使いを恐れずトライできる。そのおかげで出力不足で動きすらしなかったプロトタイプからかなりいいところまでしあがっている。

このまま任せといても、一月もすれば組上がるだろう。


問題は、


「ただ……………電子基板?あれが難しくてな、手間取ってる。」


そう、ICチップの方だ。


これを作成するにはクリーンブース、つまり簡素な無菌室がいった。

石油から作成したビニールで壁と天井を作り、その中に目の細かいフィルターによって空気中のチリ、ホコリ、粉塵を濾過した空気をファンで送り込む。

そうすることで内部と外部の気圧差により外部のチリを含んだ空気がビニールの部屋の内部に入ってこれないという寸法だ。

これは普通に作れたので問題ない。


そして、チップ本体の作成だが、精密な演算装置やら記憶装置は作るのにかなり手間取ってるらしく、一応そっちの知識がある俺が、鉱山で取れた半導体(シリコン)をどう加工し、それらと金属端子をどう繋げればいいかを図面に起こしてもなかなか上手くいっていないようだった。

型にはまればひとつ12時間でできるんだがな。50以上行程あるけど。

ここは焦らずひとつひつと進めていこう。

シリコンはうちの領地の鉱山から結構な量がとれ、なんとか有効活用できねーかとオヤジが溜め込んでたからわりと量があるしな。

…………オヤジはごみとかもったいなくて捨てれないタイプだと思うの、どうかな。


「液晶画面は?」


「完成してるぞ。精度はまだまだいまいちだがな。」


少し前、薮を払って山にわけいり、大量の虫が繁殖している木を何ヵ所か見つけていた。

甲虫の羽から画面につかう液晶を作るためだ。

そいつと石油から作った―――――というより銃のフレームのためのポリマーを作ろうとして、試行錯誤した副産物のポリビニルアルコールで作った偏向盤、着色したポリマーなどを組合せて作成した。

とはいえ、前世での液晶はリオトロピック(甲虫の羽)じゃないまた別の液晶を使っていたので、ほぼほぼ1から開発するようなもので―――――――。

二年間、エンジンやらICチップやらを製作する傍ら、新しく職人を雇い入れて作り上げた。しちめんどくせーのなんのって。やっぱ化学反応を使うようなもんはこの世界だと知識があってもナイトメア(鬼畜難易度)過ぎるね。

ディスプレイに使われてるのはサーモトロピック液晶というやつ。製造できる工業力がついてきたら是非ともそちらに更新していきたいところだな。




「お嬢の錬金術はすごいな。思いもつかないようなもんをポンポンうみだしちまう。」


「はは、なわけ。

あれだ、ここまでやってこれたのもオヤジたちの腕のお陰だよ。知識だって所詮借り物だしな。」


それに、なにより俺は産まれに恵まれた。

貴族という立場もそうだが、産まれた土地が良かった。鉄はそこまで採れない代わりに他の鉱物資源、とくに現代工業製品に不可欠なチタンがけっこう出る。

前世では中国やアフリカに主な鉱床がありヨーロッパにはほとんどなかったレアメタルも、大量とは言えないが最低限産出される。

地球の中世ヨーロッパに似ていたとしてもここは曲がりなりにも異世界ってことか?

この領地に生まれてなければもっと早くに詰んでただろうよ。


もし、この世界を管理する“何者か“がいて

そいつが俺を呼んだのだとしたら、きっとこう言っている。


―――――――力をつけろ、すべて蹂躙しろ、



停滞した世界をかき回せ。







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