砲撃殲
翌朝
俺たちはヴァランクスの車内から双眼鏡で村の様子を観察していた。
村からは距離もそこそこ離れて、土気色の布で覆うことでカモフラージュもしてあるのでこちらに気づかれることはないだろう。
「騒いでんなー。」
ボソッと呟く。レンズの中では今回の攻撃目標である村の住人が大勢走り回っている様が伺える。
「二人行方不明になって何人か死んでますからね。」
同乗する特殊部隊員が反応した通り、昨日村に侵入したさい、何人かの村人を始末していた。
その死体が見つかって村はかなりあわただしくなっている。
「マリア、宣戦布告は?」
昨日やったのは秘密裏の隠密作戦だからともかく、今からやるのはかなり派手だ。
宣戦布告無しでやろうと思ったらまともな国までこっちに不信感を持つだろう。
「書面、は、届けた。証拠も、ばっ、ちり」
マリアから済んでいるとの返事が返ってきたので問題はないと判断。
「OK、なら――――――状況開始。」
そういって通信機に合図を吹き込むと、一分もしないうちに村が爆炎に包まれる。
超音速大質量の飛翔体が絶え間なく降り注ぎ人口数百の村を徹底的に破砕し、燃やし、粉微塵の灰にする。
「ハッハー。壮観だな。」
これを引き起こしたのはウチの旗艦である戦艦“レヴィアタン“。
彼女の46センチメートル主砲から初速マッハ4で放たれた砲弾だ。
この村があるイタリカ王国は南北に細長く伸びた半島型の形状をしており、幅は200キロ無い。
射程200キロを優に越える射程延長弾を使用すれば国内のどの場所にでも46センチの洗礼をお届けできるというわけだ。
ただ、これは
「オーバーキル過ぎますね…………。」
そうだね。
一発でも十分なのにすでに村に届いた砲弾の数は10を越えた。
着弾地点がどうなっているのか想像もしたくないな。
「しっかしとんでもねぇ。マリアのやつとんでもねぇもん作りやがったな。」
「ふふん、もっ、と、ほめ、て。」
誤射が一発もなく全弾村に着弾させる精度ととてつもない威力に関心呆れ引き半分で話すと通信機からマリアのレスポンスがあった。
褒め……………いや、うんポジティブなのはいいことだ。
と、そんなかんじで見物を決め込んでいると、急に村とは別の場所から爆発が起こった。
村近くの森の方だ。
「あっちのは?」
「UAVにより森の中で隠れる村人数名を発見したため砲撃しました。狩りにでも出ていて砲撃から逃れたのでしょう。」
俺の疑問にレヴィアタンの艦長が即座に答えてくれる。
彼の戦艦は無人偵察機や偵察衛星が得た情報を砲撃にリンクさせて撃つことができる。
今回もその性能は遺憾なく発揮され、上空を飛行するグローバルホークの監視と合わせて蟻一匹逃さない徹底した殲滅を可能にしていた。
「そりゃ可哀想に。せっかく森に居て助かったと思ったやつらも数分寿命が延びただけだったな。ホッとしたとこで吹き飛ばされるとか涙でそうだ。」
俺がそんなことを宣うと皆は白けた目で見てきやがる。
どの口が言うかって目ですね。
まぁいい。
そんなこんなでちょっと話していると、砲撃が止まった。
こっからは俺たちの出番だ。
まぁ焼け野原になった村の跡地や周辺を見回って生存者がいるかどうか確認するだけなんですがね。
ここは西洋です。繰り返します、ここは“西洋です“