ハンティング
「任務を受領、完遂したら連絡する。アウト。」
「あぁ、任せたぞ。」
今の通信相手はAGC。うちの軍の最精鋭特殊部隊だ。彼らにはこれから先帝国との戦争にあたって必要な任務をこなしてもらう。
空挺や潜水、潜入に室内戦闘その他にも語学や爆発物の扱いと特殊作戦に必要な技能を全て高いレベルで納めた対非正規戦部隊のオペレーターたちは、俺から発令した作戦をすぐさま実行してくれるだろう。
「目的地までは?」
ヴァランクスの車内、防護服を着込んだ男どもに問いかける。
今回はイタリカで起こっている疫病の調査任務だ、俺は周辺の偵察と部隊の護衛を行うために同行している。
嘔吐に米の磨ぎ汁のような便、そして脱水による死亡という症状からコレラではないかと当たりをつけた防疫部の面々は二人の隊員を近くの河川へと送り出した。コレラの主な感染源は汚染された水らしいからな。マリアに聞いた。
周辺地域の水源になっているその川まではあと30分ほどかかるそうなので、しばらく周辺警戒をしておくとしよう。
「ん、鱗狼か?」
と、車から100メートルほど離れたところをガルムの群れが並走していた。
大きいのが二匹とそれより一回り小さいのが三匹。
狼はスタミナと平地での速力が高く、車を追走することも可能なスペックだが、それはガルムも同じだ。
そんな獣が群れるわけだから、ガルムバックは村落への脅威になる。だからここで殺す。
俺はすぐさま車の天井ハッチから上半身を出し、HK417を構える。防護服着てるせいで多少動きにくいが、まぁイケるだろ。
しっかりと肩と頬をストックに押し付けて、ハンドガードを握り込む
――――――コスタ撃ち。
得意の構えで構えて銃上部のレールに取り付けられたホロサイトを覗き込み、息を吸う。
フゥー…………
スゥー………………
息を、止めて。
「bye――bye」
言葉と共に吐き出して。
射撃。
“ガウンッ“というような、後を残しつつ響く音。
間を置かずにHKの7.62㎜弾が音を置き去りに進む。
それは、車と同じほどの速度で横移動する的にすっと吸い込まれた。
的――――いちばん体がデカイやつの、心臓部から鮮やかな赤い血が霧状に散らばる。
まず、一体。
そして
二体目、母狼は
それを認識する直前に俺の第二射を腹に食らって疾走の勢いそのままに顔から地面に突っ込んだ。
「フゥー……………。」
息を吐き出して
三発、四発、五発と続けて撃つ、撃つ、撃つ。
それらの弾丸は過たずに残った子狼を殺していく。
「……………脅威を排除。周辺クリア。」
殲滅だ、一匹も逃さずに。
って
「……………互いに同じ方向に並走しながらの射撃で一発必中は人間には不可能だから諦めろって兵士たちに教えてたの誰でしたっけ?
あれ嘘だったんですか?リアーナ司令。」
気づけば防疫部の連中から白い目を向けられていた。
えぇ…………。
しゃあないじゃん、普通は今みたいに互いに動きながらだとマジで中らないもん。
普通は。
「マジで化け物ですよね。司令。」
どーも。
「お、はぐれオーク見っけた。」
ガウンッ
はい射殺。
「ハンターとか騎士とかも減ってましたからねー。獣やらモンスターやらが多少増えてるかもしれませんね。」
そーだねー。
あ、ケルピーとかも狩らなきゃ。
作物を食い荒らしにきやがるからなあいつら。
「あ、司令。」
ん?なんだね?運転手くん。
「左の森、バンビーですよ。」
「はい射殺。」
宣言してからのんきに木の皮をはがして食ってるケルピーの腹に一発。
HK417のスチールコア弾が小さな腹をぐちゃぐちゃにして絶命させる。
「……………リアーナ司令。容赦ねぇ。」
「狂気だ…………あんな可愛いのに。」
なんか防護服のおっさん二人が怯えた声で罵倒してきやがった。
害獣にかける情けとか、無いよね。