第七話「パーク再突入」
家で手に入る武器なんて知れてるから
家から手に入れてきた武器を再チェックしながら、迷路の最後の扉に目をやる。深い緑色をしたそれは、昨日と変わらずそこに鎮座していた。
カチンカチンと音を鳴らしながら、高枝バサミを動かす吉田。当たり前なのだが、我が家には武器になりそうなものが殆どなく、仕方なく数少ない武器の中でも長さがある程度あった高枝バサミを持ってきたのだ。
一本しかない包丁を木の枝にくくりつけた簡易的な槍も作れたのだが、吉田と相談し、俺が使うことになった。吉田いわく、「お前のほうが運動神経が悪いだろ」とのことらしい。
扉に手をかけ、力を込めて開ける。昨日と同じように、扉の開いたところからまばゆい光が差し込んでくる。手で目を覆いながら扉の中に一歩踏み出す。
光が消え、覆っていた手をどかし、槍を構えながら辺りを見回す。右には受付のようなものがあり、左はガラス張りになっている壁だった。
目の前には本棚がスーパーの棚のように並び、さらに向こうには大きめの机と椅子があるのが見える。
「ここは…図書館か」
吉田が高枝バサミの刃を開いたまま言った。他人から見れば少しおかしな格好である。
「しかし、外が暗いな…。電気が点いている中の明かりは問題なさそうだが」
吉田が外の様子を見るのと一緒に、俺も外を見る。空には紫色の普通では考えられない色をした雲が空を一面覆っており、日光が入ってくる気配は全く無い。
カツカツと図書館の中に足音が響く。入り口から真っ直ぐ進んだところにある本棚の本を抜き取り、パラパラと捲る。中は全て白紙で、同じように本を捲っていた吉田のほうも同じだった。
溜息をつきながら本を元の場所に戻すと、ガチャリ、と入ってきた扉が開く音がする。
咄嗟に武器を構えると、武器を腰に携え、動きにくそうな服を着た二人組が入ってくる。
「あん? 誰かおんのか?」
その二人組はズカズカと大またで俺達に近づき、突然笑い声を上げた。
「なんだお前らのその装備、舐めてんのか?」
今話しかけてきているのは、小太りのおっさんだ。もう一人の男は、腹を抱えながら大きな引き笑いをしている。
「いや、すいません。まだ二回目なので…」
吉田が高枝バサミを右腕に持ち、軽く平謝りをする。
「そんなんじゃすぐ死んでまうで? それに比べて俺らの装備を見てみいや」
小太りのおっさんが腰につけていた剣を抜き、先をこちらに向ける。
「はぁ、すごいですね」
俺が呆れたような物言いをすると、何を思ったのか剣の先をこちらに近づけてくる。
「なんやその言い方。これは少し教育が必要やなぁ」
小太りのおっさんと、さっきまで笑っていた男も剣を抜き、笑いながらこちらに剣を向ける。
おっさん達から少し距離を取ろうと、俺と吉田が槍と高枝ハサミを前に構えながら少し後ずさる。
その時、二人組のさらに奥、扉の上に点いていた小さな電灯。それが昨日の化け物が出たときよりも激しく点滅するのが見えた。
吉田もそれが見えたのか、身を翻して隣の本棚の間に移動する。入り口から丸見えなところよりは、入り口からは見えない隣の本棚に隠れたほうがいいだろう。
バタン、と大きな音を立てながら扉が開く音が聞こえる。その次に聞こえるのはおっさん達の怖気づくような声。
「ひっ…」と声を上げた後、棚を一枚挟んだ向こうから獣の方向のような、人間が意図して出せるレベルではない程の声量が聞こえてくる。
隣では何が行われているのかは全く分からない。口を手で押さえながら吉田の方を向くと、吉田も顔を真っ青を通り越して白くなりながら口を塞いでいる。
声が全くしなくなった後、ビチョ、ビチョ、と濡れたモップを地面に叩きつけるような音が鳴り響く。
再度扉が大きな音を立てながら開く音が聞こえる。
しばらくどちらも身を動かすことができず、その場でただただ震えているだけしかできなかった。
あなたは近くで初めて人間の死の間際の声を聞いたことにより、ショックを受けました。
1D3で振ってください。
登場から死亡までが早すぎる。
改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。




