第十三話「ハード」
ところどころ黒く変色した肉の塊に、
全身に付いた目。
人間の手を数十倍大きくしたような手が体を前半分支え、
後ろ半分は地面に擦りながら動いている。
引きずった後ろ半分からは緑の粘っこい汁が飛び散り、
その汁は前に付いた大きな口からも垂れている。
「さすがにイージーって見た目じゃないな…」
吉田が剣を構えながら言った。
同じように剣を構える。
身が震えるほどの声量で化け物が咆哮をあげる。
すると、化け物が全身に緑の汁を覆いはじめた。
「うわ…。何やってんだあれ?」
吉田が若干引きながらそう言った。
しかし、肉の塊が緑に染まるという光景に、ある既視感を覚える。
「なあ、あいつもしかして――」
突然、化け物が恐ろしい速度でこちらへ向かってくる。
体を支えていた右手を、
体制を崩しながら横へなぎ払ってきた。
とっさに飛びのき、
手から避けることはできた。
しかし、化け物が体に覆っていた緑の汁が一滴、
手の甲に落ちた。
瞬間、落ちた部分が緑の、
腐ったような色に変色する。
それと共に走る激痛。
神経をすり鉢で潰されるような、
傷口を無理やりかき回されるような、
耐え難い痛み。
あまりの痛さに涙を流しながら、手の甲を再度見る。
腐った色に変色していた部分が徐々に肌色に戻っていく。
それに伴い、痛みも消えていった。
「お、おい! 大丈夫か?」
吉田がこちらに走ってくる。
「…前に、肉を腐らせる化け物がいただろ? 多分、あいつだ」
化け物の方を見ると、右手を元の位置に戻し、
体制を立て直しているところだった。
「体にまとってる緑の汁、あれに触れたら手の甲が一瞬腐った。一滴かかっただけでも、すさまじい激痛が走る」
それを聞くと、吉田は悩むように言った。
「それだと、あいつに攻撃するどころか近づくことすら難しそうだな」
化け物が体制を立て直し、こちらを見据える。
「…そうだ! 相崎。キツイかもしれんが、少しの間こいつ一人で相手できるか?」
「ほんの少しだけどな。一分も持つかどうか…」
それを聞くと、吉田は「すぐ戻る!」とだけ言い残し、
後ろの方へ走り去っていった。
化け物は、全身から緑の汁を一斉に出しはじめる。
体から吹き出るその圧倒的な量は、あたり一帯の地面を緑に染めた。
もし倒れこんだら、汁が全身につくだろう。
その結果どうなるのかは、あまり考えたくない。
「さて、一分持つかな…?」
剣を前に構え、化け物を見据えた。
誤字報告機能ってどう使うんだろう
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