天井
とある部屋での出来事である。その二人は決して触れ合うことは無い。しかし、常に向かい合い、互いのことを想っているのだ。
「なあ」
「…」
「おい」
「…」
「なんか返事しろよ」
「…」
「はあ…」
二人の間に微妙な空気が漂う。少しして主が入ってきた。
時刻はアフタヌーンティーの頃、優雅な紅茶が香る。
その間も二人は押し黙ったまま。
不意に主がカップを落とす。
「熱っ…」
「大丈夫かっ」
「うん、大丈夫、私、慣れてるもの」
「…」
溢した紅茶を拭き取るため、布巾を取りに主が退出する。
「くそっ、オレが代われたら…」
「…」
「ごめん、ごめんなぁ、床」
「いいのよ、天井、貴方は私と代われない、触れ合えない。わかりきったことじゃない」
「…」
主が戻り、床を拭く。其処にはキレイな顔をした床が、天井を見つめていた。
「貴方には貴方の苦労がある。知ってるわ。紫煙なんてみんな貴方の方へ行ってしまう。私が貴方の元へ行けたら、なんてね」
「床あああああ」
「天井おおおお」