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顔面差別法  作者: カエルの鳴き声
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狂わせたのは金、人、法?

顔が非常に残念な私が、顔が良ければ人生イージーモードだろうなーという安易な考えから生まれた小説です。

「今日から顔面差別法が適用されるようになりました。」

20XX年X月X日、日本は変わった。TVを付けても、ラジオを付けても、インターネットを広げても、SNSを見ても、この話題しか取り上げない。多くの人はこの日が来るのが苦痛だった。この日から多くの人の人生が狂い始めるのだから…


顔面差別法とは何なのか。平たく言えば、美女、イケメンなどの顔の整った人以外は排除されるという法律だ。ただし例外あり。なぜこんな差別的な法律が認められたのかというと訳を話せば長くなるがここは我慢して聞いてほしい。

昔から「いじめ」の対象となるのはこれと言って特技のない顔の整っていないブス、ブサイクと言われる人たちが多かった。もちろん、経済面や生活態度によっていじめを受けるケースもあるが。国のお偉いさんは「いじめ」を無くしたいという一心で、この顔面選定法を作ったと信じている。しかしながら、21世紀から人口減少の問題が問いただされている中、顔が整っていないという理由だけで排除してしまったら国民から総攻撃を受けると考えたお偉いさんは、例外を作った。年収1000万円を超える人、国に認められた運動神経、学力の偏差値を持つ人はよいと。例外を作ったのち、そんな能力を持つ人間は限られている、人口減少は加速するばかりだと国民から総攻撃を受けた。そこで、国はある規則を作った。顔面偏差値が50未満は排除、65以上、又は例外条件を満たす者は夫、妻を無制限に作ってよいという基準を。端的に言えば、一夫多妻制、一妻多夫制の導入だ。不倫や浮気が合法となった瞬間だった。

顔面差別法が適用される一年前、国会議事堂前ではデモが連日行われていた。「ブス差別」「ブサイクにも人権はある」という看板や旗を掲げる者たちで溢れかえった。中には「総理死ね」などその法に関わった人たちへの恨みが含まれている看板もあった。察しの通り、総理の支持率は急激に落ちた。どうにか支持率を上げなくては…追い込まれた総理はある事をした。この宣言はTVで生中継された。

『排除になってしまった人たちへの救済措置として、排除された年齢からその人が仮に生きていたならば定年まで稼げる額、生涯賃金に1000万円上乗せした額を国から差し上げます。ただし、この法に従わずに生きてしまうと対象となる人、関わった親族、友人含めて皆死刑となります。この法が適用されるのは学生を除く23歳以上の方です。どうぞ文句のある方は来てください、学力も見た目も運動神経も劣っている方が来られるかと思います。その方々はブラックリスト登録され、逃げ場がなくなりますが、それを承知で来てください。』

このことは世界的にも大きく話題になった。人の価値は学力、見た目、運動神経だけなのか、生命の排除をお金で片づけてしまって良いのかと。

声明直後は多くの人たちの反感を買ったが、後に国民は総理の言うことを聴き、この法に従うようになった。なぜなら特技のない顔面偏差値の低い者たちには辛すぎる現実が待っていたからだ…



【女Aの場合】

『顔面差別法がー』『顔面偏差値がー』

TVはこの話題しか取り上げないのかと思うくらいに、どのTV局も同じ報道をしている。正直こんな法律が通ったことも不思議でしょうがない。人それぞれ個性って物があるんじゃないの?目に見えるものだけで人の価値なんて分かるわけないのに…。

大学の講義でもこの問題を取り上げ、レポートを書かされることになった。レポート課題で悩んでいると私の友人Aが話しかけてきた。

友人A「やっほー。課題終わった?」

女A「まだだよ。何書けばいいかも分からない」

友人A「あいつ(教授)は賛成派だっけー?イケメンではないけど頭いいからあの人生き残ってるんでしょ?」

女A「頭いいって羨ましすぎる。顔とか運動神経みたいに生まれ持った能力だけじゃないから、あいつも努力したのかね?」

友人A「前に浮気いっぱいしたいから、いっぱい勉強したって言ってた。」

女A「何それ、動機が不純すぎ。私達みたいなFラン未満の大学に通う人達は人生もう終わりだよね。」

友人A「確かに。そういえば、もうみんな就活始めてるみたいだよー。内定貰った子も結構いるらしいよ。」

女A「まじかー。私スーツすら買ってない」

友人A「それは買えよ、もう私達4年生だよ。」

女A「みんな早いなー。私が遅いのか」

友人A「合同企業説明会ぐらいは行ってみる?」

女A「だるいけど、行くか―」

私の数少ない友人Aがいるお陰で毎日が楽しかった。あの日が来るまでは…。

女A「遅いよー、遅刻だよ。」

友人A「ごめんごめん。やっとスーツ買ったんだ」

女A「さすがにねー。まあゆっくりマイペースに就活やっても大丈夫でしょ、だって人口減ってるし、売り手市場だってTVでも言ってたし」

友人A「人足りないんだから、あっちから来てくださいって言う立場じゃね?」

女A「確かにー。あっちがもっと努力しろよってか」

友人A「言えてる。あっ、あのジジイ、暇そうにしてるから私達行ってあげようよ。」

女A「この場でジジイはだめだろ」

私達2人は暇そうにしているジジイの会社の説明を聞くことにした。

ジジイ「えーと、2人ともよく来てくれました。えーと、私の会社はですねー、えーと…」

友人A「このジジイ『えーと』が多すぎ」

女A「だからジジイは辞めなって」

友人Aがひそひそと話しかけてきた時だった。私の肩をポンポンと誰かが軽く叩いたのだった。そこにいたのはこのイベントの役員の人だった。私は友人と話していたのが悪かったのだと思い、すぐに謝った。

女A「説明中に話していてすみませんでした。」

役員「いや、それではない。君に用があります」

女A「私にですか?分かりました。」

友人A「何かやらかしちゃった?頑張って~」

女A「何もしていないと思うけど…頑張るわ~」

私は友人と離れ、役員にイベントの裏の方に連れていかれた。

役員「このイベントに入る前にQRコード見せなかった?もう1度あれ見せてくれないかな?」

女A「あー、あれですね。ちょっと待っててください。今出します。」

最近の就活イベントでは参加者へ事前にQRコードが配られる。このQRコードを発行するのに生年月日等の個人情報を求められるため、正直とてもめんどくさかったがQRコードが無くては参加できないため仕方なく友人と一緒に発行した。

女A「はい、私のQRコードはこれです」

役員「はい、ありがとう。個人写真の登録はまだしてないんだね」

女A「すみません。任意だったのでまだです」

役員「こっちで写真撮ってあげるからおいで。写真ないと駄目な企業もたくさんあるから」

女A「わざわざありがとうございます。」

私は役員のやさしさに感動した。同時に友人Aも写真を登録していないことに気づいた。

女A「友人も連れていていいですか。確かあの人もまだ写真撮っていない気がして…」

役員「あの子なら大丈夫だよ」

女A「そうですか…」

友人Aは自分が知らぬ間に登録してたんだと分かり、1人でいるのが恥ずかしくなった。

私は小さな会議室のようなところへ連れていかれた。そこにはパイプ椅子とカメラが一台あった。

役員「ここに座って。緊張しなくていいからね。はい、撮れましたよ。」

女A「ありがとうございます。」

役員「うーん、映りが悪いね。もう2~3枚撮るね」

女A「よろしくお願いします」

私はただただ撮られるのを待っていた、それだけだった。一気に周りが騒がしくなった。

「なんで紛れ込めた?」「なんで来れたんだ?」「どうやって入った?」等の声が聞こえる。私のいた部屋に何人もの大人が一気にやってきた。

役員「この子です」

大人A「どうやって入った?」

役員「写真が任意だったそうです。」

大人A「分かった。この子には非はないんだな」

役員「私に責任があります」

私はただその光景を見ているしか出来なかった。すると大人が話しかけてきた。

大人A「君ね、せっかく来てくれたけど帰ってくれるかな?」

女A「どうしてですか?写真が無かったからですか?」

大人A「いや…写真は関係ないんだ。関係あるのは君の顔。顔面偏差値が45しかないんだ。このイベントは顔面偏差値が少なくとも50なくてはならない。」

女A「そうですか…私の一緒にいた友人は大丈夫でしょうか?」

大人A「一緒にいた子は大丈夫、52だったから。しかし君苦労するよ。あの大学であの成績。しかも顔面偏差値が45となると、高確率で国に排除される君に内定をくれるところなんてないよ。そもそも説明会すらパス出来ないから採用試験すら受けられないけどね。」

私は言葉を失った。顔面偏差値が低いのは察していたけど、高校受験や大学受験等で今までもどうにかなっていた。だから顔面偏差値が低くても、頭が悪くても、運動神経なくても、どうにかなるんだって心のどこかで思っていた。『排除』される側になって分かる、今まで自由が与えられえていたこの20数年の間にもっと努力しておくべきだったと。なんとかなるなんて幻想だったのだ…。役員に囲まれ、他人に会わないようにと裏口から私は家へ帰った。友人Aからは「なんで急に帰ったの??どーした?」とLINEが入っていた。私はどう説明すればいいのかわからず、未読のままだった。夕飯も喉を通らず、親には心配されたが体調が悪いの一言で片づけた。風呂に入り、私はTVも見ず、ベッドの上でぼーっとしていた。これからどうしようか、あと人生1年もないのか、こんなことがずっと続くのか…私は眠れなかった。友人から2時間おきくらいに「おーい、大丈夫?」「体調悪い?」「返事してー」などのメッセージが来たが返す気力も無かった。今まで努力しなかった自分も悪いが、もし顔がもっと良かったら、せめて顔面偏差値が50以上だったらこんな思いはしなかった。悪いのは自分じゃない。親の遺伝子が悪いのだ。親がブス、ブサイク同士で子供を作ったから、私はこんな思いをしなくてはならないのだ…。友人Aを見てみろよ、自分よりも成績が悪く、私よりも運動神経が悪い。なのに説明会はパスできる、なぜなら顔がいいから。友人Aはこれからも楽しく人生生きていくのだろう、顔に対して何の苦労もなく…。

そこまで考えた時、親が私を呼んだ。

女Aの親「学校行かなくていいの?遅刻するよ」

女A「もう行きたくないよ。どうせ死ぬんだし。」

女Aの親「ちゃんと行きなさいよ、大学。あんたが悪いことして、最後に責任取るのは親なんだから。」

女A「親のために行かなきゃいけないの?私が行きたくないって言ってるんだからいいじゃん。何がダメなの?私の気持ちなんて何も分かってないのに…」

女Aの親「あんたの気持ちなんてあんたにしか分からないんだよ。あんたのせいでこっちも迷惑なの。さっさと学校行って。」

女A「私のせい?こんな私にしたのはお前ら、親だろ。こんな見た目にしたのもお前らのせいだ。お前らがいなければ、私だって存在することはなかったのに」

女Aの親「私はお金が欲しいから、わざとブスなあなたを作ったの。あと1年で大金が手に入ると思うと、嬉しくてたまらないわ。そのためにも今勝手な行動されたら困るの。わかる?」

私は泣きながら外へ出た。親が私を作らなければ、こんな顔の子ども産まなければ私は楽に生きれたのに、もっともっと長く生きれたのに。私は大学に向かった。もうとっくに1限は始まっている時間、講義には出るつもりがないので図書館へ行った。するとそこには友人Aがいた。いつもなら話しかけるが、今日はそういう気分ではなかった。適当に本を選び、近場の椅子に座った。私に気づいた友人Aは近づいてきて話しかけてきた。

友人A「やっほー。昨日どうした?」

女A「…」

友人A「体調悪かった?急にいなくなるから心配したよ。あのジジイの話聞いたらさ、全然面白くないの、絶対あの会社倒産するね、ジジイに覇気がないもん。それにさ…」

女A「…だけいいよね」

友人A「ん?なんか言った?」

女A「説明会行けるだけいいよね。私なんて説明会に参加する資格がないって言われて強制退場させられたのにさ。顔面偏差値が50無いんだって、私。もうあと1年も経たずに排除されるってさ。あんたは余裕だよね、50超えてるし」

友人A「今まで知らなかったの?自分の顔面偏差値。」

女A「知ってたよ。でもどうにかなるって思ってた。」

友人A「バカじゃん。私はあんたが50未満って分かってたし、排除対象とも思ってた。だからずっとそばにいたんだよ。ブスが近くにいれば、自分がより引き立って見えるからね。大変なんだよー、自分よりブス探すの。」

私の周りになど味方なんていなかった。親も友人も自分がブスであることを利用してたんだ。急いで私は図書館で法律の本を調べた。顔面差別法について知るためだ。あれほどたくさん報道されているはず、たくさん耳にしていたはずなのに、その法律についてほとんど知らない自分がいた。調べてみると『排除になった方は生涯賃金+1000万円。(ただし、国に排除された場合のみ。故意的に死ぬこと(自殺等)、災害(地震等)で死ぬ、誰かに殺されるなどは適用外となる。)』つまり、私が今死ねば親にはお金が入らないということ。私は大学の購買で必要なものを買って、屋上へ向かった。もうすぐ昼休み、下に見える校庭には人がたくさんやってくる。ブスの復讐を見るがいい。

昼休みになり人が増えた。今がチャンスだ。私は購買で買った複数のカッターの刃を小さく切ってカッターの雨を降らせた。けが人は続出。もちろん、あの友人も被害者になった。私は気分よく屋上が飛び降りた。



【友人Aの場合】

『顔面差別法がー』『顔面偏差値がー』

私には関係のないことだ。なぜなら顔面偏差値50は超えているから。自分は排除されることのない人間だ。しかし私は50を超えていると言っても恐らく、50前半くらいだろう。つまり、ギリギリのライン。このままでは下手したら50未満と思われてしまうかもしれない、今のうちに自分よりもブスを探さなくてはと思ったのが小学校のころだ。手ごろなブスを探すのが意外と苦労した。あまりにも顔面偏差値が低いやつと一緒にいると自分まで変な奴、排除仲間と思われる可能性もある。また、ブスの奴は「あなたのような顔の綺麗な方とは一緒にいたくないです」というやつが多い。こっちだって一緒にいたくないけど、いてあげてもいいよって思っているのに。ブスは陰キャラが多いから、友達になってくれそうなやつはいなかった。そんな時、手ごろなブスが現れた。それが女Aだった。女Aはなぜかブスなのに陽キャラで、がり勉でもなく、顔面偏差値が40代後半くらいの理想のブスだった。私は女Aと仲良くした。もちろん、自分を引き立たせるためにいつも一緒にいた。女Aは私よりも若干頭が良かった。だから女Aのレポートや課題をいつも写させてもらっていた。非常に私は良いブスを見つけ、このまま人生はイージーモードだと思っていた、あの日までは。

最悪なことに女Aは自分が排除されることに気づいてしまった。私はもう闇落ちした女Aには用が無かったから、真実だけ伝えてその場を去った。また手ごろなブスを探さないとな…もうすぐ排除対象は処刑されるから、排除されない程度の50レベルの子探すか…と思っていたその時、自分の頬を何かが触れた。次から次へと降ってくるそれ。確かめようと上を向いた時、いくつものそれが顔に触れた。目の前が真っ赤になった。血だと気づくのに結構な時間を要したが、そのころには周囲がパニックになっていた。私はどうすることも出来ずにその場で倒れた。

目が覚めると病院だった。私は担当の看護師に大学であったことを話した。すると看護師が、犯人が女Aであったこと、女Aは自殺したことを伝えてくれた。私は女Aの恐ろしさを知った。それから少し経って、担当医がやってきた。担当医は鏡を私に手渡してきた。私は鏡の中の真実を知った。私の美しかったはずの顔は包帯だらけになっていた。担当医は「大丈夫。包帯取れたら綺麗になる」と言ってくれた。私はそれを信じた。

私の両親が病院に到着した。担当医と両親が話しているのをたまたま聞いてしまった。

担当医「残念ながら娘さんのお顔はもう戻りません。包帯が取れても傷が多く、また、菌などが入り、膨れ上がっています。包帯を付ける前に顔面偏差値を計測しましたが、40台前半から30代後半で、50には届きませんでした。」

私の両親は泣いていた。そりゃそうだろう、今まで普通に排除対象でなかった娘が急に排除対象になってしまったのだから。イージーモードだったはずの人生が、女Aによって壊された。女Aは自分の人生だけでなく、私の人生まで終わらせたのだ…。



【イベントのジジイの場合】

『顔面差別法がー』『顔面偏差値がー』

私はそんなこと気にしてもいない。ただ真面目に働いてくれればそれでいいのだ。町の小さな町工場だが、一応年収は1000万を超えている。ほとんどの人には知られていないが、それでも今まで必死にやってきた。私のところには誰も来なかった。正直私の身体はあと数年で限界が来る。若い子に引き継いでほしかったのだが、跡取りがいないため今回参加した。若い女性2人がやってきた。1人は普通の女性、1人はギャルのような女性だった。どうやら友人のようだ。私はとにかくなんでもいい、待遇はうんと良くするからと言っていたのだが、普通の女性が連れていかれた。残ったギャルの女性は全然話を聞いてくれず、その日は終わった。連れていかれた女性を採用したかったのだが、役員に聴いてもそんな人はいなかったの一点張り。私は数か月後、持病が悪化したため止む無く工場を畳んだ。



【イベント役員の場合】

『顔面差別法がー』『顔面偏差値がー』

連日TVで報じられる話題だ。そんなに見た目が大事だろうか。もっと大事な物はないのかと考えてしまう。

役員「これってどう見えます?」

同僚「えー…50くらいじゃね?」

役員「くらいじゃなくて、ちゃんと明確に、この写真の人顔面偏差値いくつに見えます?」

同僚「50!」

役員「残念でした。49です。」

同僚「わかるかよ、そんなの」

僕は疑問に思っていた。顔面偏差値50の壁を。たった1下がるだけでこの人の人生は短くなる。普通の人から見たら49も50もわからないのに…。

同僚「今年から説明会でも写真が必須になるらしいですね。顔面偏差値が50未満の子は参加すら出来ないとか聞きましたよ。」

役員「僕も52なので他人にあれこれ言える立場では無いんですけどね…。国の方針でそうなったみたいです。かわいそうですよ、顔で全て判断するなんて。」

同僚「一応例外もあるじゃん」

役員「あんな厳しい例外、ほとんどの人が当てはまらないよ。」

僕は写真が「必須」となっているホームページを同僚にバレないように「任意」に変えた。顔面偏差値が40台の人だってバレなきゃ大丈夫だろ、1人でも多くの人が来てくれればいいやと軽い気持ちで。

説明会当日。

ほらね、正直、顔面偏差値なんてパッと見じゃわからないだろ。仮に40台がいたとしても判別がつかないよ。そう思っていると、一人の女性に話しかけられた。

友人A「私、友達と来るつもりだったんですけど、遅刻しちゃって…。今から入っても大丈夫ですか?」

役員「大丈夫ですよ、入退場は自由です。」

友人A「私の友人探してるんですけど、もう来たかどうかって確認できます?」

役員「大丈夫ですよ、友人さんのお名前は?」

友人A「女Aです」

僕が女Aさんについて検索している途中で、その女性は女Aさんを見つけたらしく、大きな声と手ぶり、お辞儀で感謝された。女Aさんのデータを閉じようとしたとき、同僚が気付いた。

同僚「あれ?写真ないね、この子」

役員「さっきの女性もありませんでしたよ。きっと任意なんでしょう。」

同僚「必須になったって聞いたんだけどな―。まぁ、さっきの子は可愛かったし、多分大丈夫だろうけど、この女Aさんの顔見てくるわ。どうせ一緒にいるだろ。」

役員「どうせお前が見たって、分からないだろ。前だって49と50の差分からなかったくせに」

同僚「あー、女の子いっぱいいすぎて、可愛い方の子見失っちゃったよー。役員、お前も協力して。どうせ暇でしょ?」

役員「そろそろ見回りの時間だし、少しだけだぞ?」

同僚「あざーす」

僕たちは見回り兼女Aさんと一緒にいるであろう(可愛い方の)子を探した。すると人気のないブースに2人で座っていた。僕は同僚に無線で伝えた。すぐに同僚がやってきた。

同僚「おっ、相変わらず可愛いな、あの子。」

役員「さっき見失ってたくせに」

同僚「隣にいる子が女A?」

役員「多分ね」

同僚「あの人、普通にブスじゃね?あっても45だろ。ちょっと調べた方がいいな。お前行け。」

役員「え!ちょっと…」

僕は女Aさんに話しかけることになった。さすがに君の顔がブスだからとも言えずに、個室へ呼び出した。僕はカメラに見える特別な装置で彼女の顔面偏差値を何回も測ったが、50を超えることはなかった。そうこうしているうちに、同僚が他の職員を呼び出し彼女は強制退場させられた。僕にもまた、必須である写真を任意にした責任があると、半年間のイベント不参加と1週間の謹慎を命じられた。僕は謹慎中彼女のことを考えていた。僕が必須にしていれば彼女は参加できずに、現実を知ることもなかったのかと…。もう一度会って彼女に謝りたいと思ったが、僕の願いは叶わなかった。TVで彼女がカッターの雨を降らし、自殺したことを報じていたからだ。



【教授の場合】

『顔面差別法がー』『顔面偏差値がー』

またこれか。国のお偉いさんが考えた法に対して、あーだこーだとお笑い芸人などの学のないタレントがコメンテーターしているのが滑稽だ。国はちゃんと顔が整っていない人にも救済措置として頭の良い人は顔の優劣に関係なく残すと言った、それはつまりどんな人にも平等に与えられる20数年の間の努力を認めるということなのに、何故それに対して文句を言う人が出るのだろう。確かに顔、運動神経、経済力等の生まれた時に決まってしまう優劣もある。でも、学業のように自分でどうにかできるものだってあるのにな。

生徒に顔面差別法についてのレポートを書かせた。自分がこの法に賛成だからと言って反対派の意見を書くやつは単位を落とすということはしない。自分の研究として今20代の学生がこの法に対してどのような意見を持っているのかを知りたかったのだ。多くの生徒は「教授の仰る通り~」とか「教授の講義を受けて~」など私に媚びた意見が多い。別に媚びたからと言って単位をあげるわけでも、点数を加算するわけもでもないが…。

友人Aは賛成派で、女Aは反対派か。あの2人はいつも一緒にいるのに意見が違うのか。やはり、相対的に自分の外見が良いと思っている人(顔面偏差値が50以上の人)は賛成派が多く、悪いと思っている人(50未満)は反対派が多いのか。人は外見が全てではないと講義で言っているのに、本当に伝わってほしい人には伝わらないものなんだな…。

生徒のレポートを1つ1つ読んでいると、ドアがノックされた。

教授「はい、なんでしょう?」

相手「大学のスタッフです。教授の講義を受けていた生徒がカッターの刃を屋上からバラまいた後自殺しました。」

教授「女Aかね?」

相手「どうして分かったのですか?」

教授「さあね。勘だよ。」

やはり、伝わらないのだな。また国に報告しなくては…「反対派が期限を待たずして自殺しましたよ。」と。



【総理の場合】

『顔面差別法がー』『顔面偏差値がー』

いじめを減らしたい、という一心でこの法を適用したと世間は思っている。間違いではないが、正解ではない。残念な顔に対してのいじめは減るが、他の種類のいじめは増えるから意味はない。ではなぜか。それは役立たずの人間を減らすためだ。運動神経や頭の良さはもちろん国のために役立つ。顔を贔屓した意味は東京五輪が開催された時までさかのぼる。私はまだ学生だった。五輪のボランティアをやっていた時、応援に来ていた外国人の方に言われた。「ブスよりもイケメンや美女の方が好感が持てる。私は日本のアニメ、漫画を見てきた、その世界にはかわいい子やイケメン、強いものしかいなかった。弱いものはみな潰されていった。だから日本はもっと美女、イケメンがいると思った。」と言われた。アニメや漫画を見て日本に来た外国人は、日本には2次元のようなかわいい子、イケメン、美女のような人で溢れていると幻想を抱いてやってくるのだと知った。幻想を壊してしまってはもう2度と日本に来てくれなくなる、逆に幻想に近い状態であれば何度も日本に足を運び、お金を落としていってくれる。日本人は比較的倹約家であるが故、経済が回らない。これからの日本の経済を支えてくれるのはこのような外国人であると確信した私は、この法を思いついた。良い遺伝子だけをうまく大量に残していくことで外国人の幻想に近い日本になると。

この法に対して反対者が減ってきた。いい調子だ。やはり、お金さえバラまけば自然とこの法を認めざるを得ないのだろう…そう考えていた時、妻が私を夕飯に呼んだ。

総理「今日の夕飯は豪華だな。」

妻「ええ、あなたの支持率が75%を超えたお祝いよ。」

子供「おめでとう。」

総理「まだまだだよ。反対派がまだ4分の1近くいるんだ。反対派がいる限り僕の夢は完成しない。」

妻「素晴らしいわ。」

子供「頑張ってね。」

総理「僕の子供は排除外だから大丈夫。いざとなったら整形すればいい。お金はたくさんあるのだから。」

妻「あなたが総理でいる限りは大丈夫よ。それにこの子だって特別ぶすではないわ。」

総理「そうだな。でも周りの目が気になるようだったら言いなさい。いつでも整形出来るようにはしてあるから。」

子供「うん。ありがとう。」

総理「こうやって家族全員で落ち着いて食事するのも久しぶりだな」

妻「あなたずっと忙しそうだったもの」

総理「寂しい思いをさせた。これからは…」

これからは家族水入らず仲良くしよう、休暇も取れそうなんだという話をしようとしていた矢先、秘書が走って向かってきた。

秘書「総理。また自殺者です。」

総理「またか…。前のようにもみ消しておけ。」

秘書「今回の犯人は派手にやったようで…もうTV等で取り上げられていて、手遅れの模様です。」

総理「どうにかできないか?今大事な時期なんだ…。」

子供「それって女Aさんのこと?学校で見たよ、実際に。」

秘書、総理「「見たのか!?」」

妻「言わないで方がいいって言ったじゃない。なんで言うの?」

子供「あの人、怖かったんだもん。笑いながらカッターの刃バラまいてるの。まき終わったと思ったら静かに落ちてきた。ずっと頭から離れなかった。」

秘書「総理、明日会見を開きましょう。きっとマスコミは今までもみ消したものも調べ上げてくると思います。」

総理「分かった。」

私の夢をここで終わらせてたまるか、やっとここまで来たんだ、もうすぐ完成するんだ…あと少しの辛抱だ…



【子供の場合】

『顔面差別法がー』『顔面偏差値がー』

私は総理の娘。この法は父親の夢がかかってる。反対派なんて知らない。お金さえ出せばすぐにコロッと意見を変える国民の意見なんて当てにならない。

数日前に

生徒A「あなたってあの顔面差別法作った総理の娘よね?その割に可愛くないわよね?なんであなたのお父さんあんな法律作ったのかしら?バカなの?」

子供「お金はあるの。だからいつでも顔を変えられるの。お父さんの悪口はやめてね」

生徒A「だったら早く変えなさいよ、ぶす。あんな法を作った父親の娘もバカなのね。」

と言ってた人も、今日は

生徒A「ねぇ、総理に私のお父さんの会社贔屓してもらえるように言ってくれない?」

子供「前、悪口言われたから嫌」

生徒A「お父さんの作った法、いいと思うわ。お父さん、大変賢いのね。あなたのお顔も頭もお父さんに似て、凄く素敵。」

子供「…」

信頼できるのは家族だけだ。そう思っていた。

昼休み、校庭が騒がしい。行ってみると屋上に女性が一人大きな声で笑いながら何かを落としている。全て落とし終わったのか、静かになり、その女性が落下してきた。周囲は悲鳴に包まれた。

少しして私を常に擁護するSPがその何かを調べに言ってくれた。

SP「これは…短く切られたカッターの刃ですね。」

子供「どうしてこんなものを…」

SP「死ぬ前に物理的に傷つけたい人、モノがいたのでしょう。」

子供「例えば?」

SP「今なら顔がきれいな人に対する恨みとかでしょうね。」

子供「それお父さんの法と関係ある?」

SP「ここでは関係ないとは言えないので、お父さんには黙っておきましょう。」

この女性の自殺が父親の作った法と関係していたことは、私とSP、そして母だけが知っているはずだったのに、TVを付けたら当たり前のように報じられていた。そして私の知らない父親の法に対する多くの反対者の自殺のニュースが報じられていた。ニュースによると、父の法に対する支持者はお金での救済措置を図ったことで一定数は増えた。しかしながら反対者が格段に減ることはなかった。そこで反対者や反対者になるであろう人を事前に排除するため、反対者の多くが顔面偏差値50未満であることを利用して、顔面偏差値の低いものには学校、会社の成績、仕事、雇用などを厳しくする措置を取っていた。そうすることによって、成績不振、解雇、再雇用不可など厳しい現実を突きつけることができる。つまり国側が自殺を促していたのだ。期限を待たずして自殺をすれば国側はお金を払わなくて済むし、反対者は自然に減る。国としては一石二鳥だったのだ。私は唖然とした。父は自分の夢のためにそこまでやるのだと…他人の命などどうでもいいと言っているようだった。

次の日父は会見をした。たった一夜で何年ももみ消していたことは全てばれていた。父は辞任に追い込まれた。



父が辞任し、日本に残ったのは顔面差別法だけだ。いつの時代もこんな法律があっても無くても、顔が整っている人は優遇され、顔の整っていない人は損をするのです。

お父さん、あなたが作ったこの法は誰を幸せにする法なの?

お父さん、あなたが辞任したせいで、あなたがいっぱい色んな所と裏取引したせいで私の家にお金無くなっちゃったね。

お父さん、お金も地位も名誉も無くなった今、あなたの作った法の恐ろしさを痛感しています。

お父さん、お金のあった時代に整形しておけばこうならなかったのかな。

お父さん、私は今から排除されます。50まであと1足りなかったんだって。

お父さん、お母さん、総理大臣時代に整形をさせてくれなかったのは、こうなることを予測してさせてくれなかったのですか。

お父さん、お母さん、娘よりお金が欲しかったのですか?




自分自身がブスということもあり、今まであまり良い思いをしてきませんでした。こんな法律が出来る世の中は嫌ですけど、現代もなんとなく美人やイケメンが優遇されてるなーって思ってしまいます。思い切って数値化することが出来ればブスはブス、美人は美人、イケメンはイケメンと分かることで「え~、そんなことないですよ~」という無駄な謙遜会話も減るのかな…なんて(笑)

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