遠吠えはもう聞こえない
雪が降っていた。とても暖かい雪だ。
嵐の後は、暖かいものなのだ。
あの雪の日、ウルが吼え、妖精が叫んだあの日を、随分昔に感じる。
強くなってきた雪から逃げるために、二人は今、洞窟にいた。
暗い暗い洞窟に、熱が二つ。それは寄り添って並んでいた。
「━━ねえ」
「なんだ」
「私、ウルに会えて良かったわ」
「そうか。俺もだ。」
ウルの傷は、もう癒えていた。わんわん泣きながら妖精の蜜を使うエリーの姿は、今でもウルの眼に焼き付いている。
結局あの狩人は蜜を持っていかなかったのだ。妖精の蜜が一滴あれば一生遊んで暮らせるというのに、不思議なこともあるものだ。
二人の中に、「孤独」はなかった。
O
それは、草木が湧き立ち、命が芽吹く季節のことだ。
「……おい」
「何よ?」
「雪が解けたら、二人で旅をしないか?」
「……!あなた、覚えていたの?」
「なんだ?嫌か?」
「いっ、嫌なんて言ってないわよ!」
「そうか」
顔をリンゴのように赤くした妖精は、照れ屋になっていた。
すまし顔で赤い妖精を見つめる狼は、素直になっていた。
季節は春。春なのだから、仕方ない。
二人を包み込む静寂は、とても優しい風に乗った。
風はどこまでも吹き抜けるのだ。
おしまい。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。もしよろしければ下の方までスクロールしてポチっと評価をお願いします。
私の生きる糧となります。




