1/6
狼は遠吠えする
しんしんと落ちる雪の静けさに、邪魔が入る。
ザッザッザッと、狼が走れば、新雪には真っ赤な血が流れた。
しばらく走った後、狼は立ち止まり空を見上げた。その堂々たる立ち振舞いは、彼が確かに群れの長であったことを窺わせた。
けれど、今、其処にいたのは只の負け犬だった。
人間に仲間を殺され、故郷を追われ、一体自分はどこへ行くというのか。
行くあてなどない。遂に独りぼっちになってしまった。
激情のままに、狼は大きな遠吠えを一つ響かせた。
どうか、願いが叶うならば━━
山彦となった遠吠えが聞こえなくなったとき、狼の姿はどこにもなかった。




