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9 新緑までの数メートル

足掻こうとしてやってきたいくつものことが、

勝ち目のない戦いそのものだった。

痛みの不治のことではなくて、その承認のこと。

私は私の生き方が欲しかっただけ。

歪んだ正義感に閉じ込められた私は、

無駄な治療と同情をもらえることに。

私はーーあの新緑に手を伸ばして、

「私とは違う瑞々しさがあるね」って、言いたい。

その周りに漂うたくさんの意志たちと話をして、

最後には「面白いね」って笑いたい。

痛みを持ったまま、

叫び声をあげて止めようもなく涙を流して、醜く顔を歪ませながら、

痛み止めもケシの夢もなくていいから、

「クソみたいな世界!」って罵りながら、でも、

「面白いね」って笑っていたい。


今日も点滴……


音もなく落ちていく薬液のなかに、

私の欲しいもの全部が閉じ込められている。

体のなかに入ってきた時、

それらはすでに死んでいる。でも、

手の届かないわずかな距離の先にあるあの緑色、

立ち昇る嬉しさを見せつけてくる木々の揺れ方が、

痛みの浸透する体を苛立たせる。

私は、

死を丸めてペットにしたい。

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