29 思い出
全身に33カ所の刺し傷。
生きていたのが奇跡、と言われたがそうじゃない。
全て急所を外されていた。
後遺症でいつまでも痛みが残ることに。
神経のいたるところが傷付けられ、手足はまともに動かない。
目が覚めた時、死にたいと思った。
それでもパパとママのことが気になって、少しだけ生きていようと思った。
でも二人とも来てはくれず、誰に聞いても答えてくれず、
私は、やっぱり死のうと思った。
不自由な手足で頑張って窓辺まで辿り着き、これから飛び降りるという時、
ズュートがやってきた。
これが彼との出会い。
彼は血相を変えて私を捕まえ、ベッドに戻してくれた。
「どうして助けるの! もう死にたいのに!」と言うと、
「ごめん。君があまりにも可愛いかったから」と言ってくれた。
これが、私たちの初めての会話。
ズュートには、私の痛みが見えていた。
私が世界のあらゆるものに痛みを見るようになると、
ズュートは痩せ細った私の体を抱きしめながら、
「おめでとう」と言ってくれた。
この人は、頭がおかしい。でも、他の人はもっとおかしい。
だから、きっとこの人ならーー私の本当の涙を見つけてくれると、そう思った。




