22 土がため
昼寝からの目覚めは最悪な鉄の味。
口のどこかから出血している。
そのうえ渇いていて、まともに開けることもできない。
背中も腹部も手も足も痛くて動けない。
見ていた夢は体中を八つ裂きにされて、それでもなお生きているという内容。
私の肉片が部屋のそこら中に散らばって、どす黒く沈殿している。
意識だけはしっかりしていて、私の体を切断した犯人を探している。
それはいつも両親。顔ももう覚えていない、私の両親……。
ナースコールすら押せないまま喘いでいると、
ズュートがバケツを持ってやってきた。
「痛み止めを……」と言う私の声は自分にも聞こえないくらいかすれていて、
ズュートはただ、立っている。
「痛み止めにしようか。それとも土がいいかな」
彼は私の苦しみを積極的に止めようとはしてくれない。
痛がっている私をいつも側で見つめている。
白衣のポケットにはたくさん薬が入っていて、
そのひとつを私の口に入れさえすれば、とりあえず落ち着く。だけど、
彼はそうしようとしない。
私も、それを望んでいない。
「もっと見ていたいけれど、今日は時間もなくてね」
突然、ズュートはバケツの中身を床にぶちまける。
それは土だった。濃い茶色の柔らかそうな土。
床に広がった土を、ズュートは踊るように踏みしめる。
私の呻き声を聞きながら、彼はしばらく土を踏み続けた。
「まあ、こんなものでいいかな。
あとはポラリス、君がこの土を固めるんだ。
そうすればこの部屋でだって冬が感じられる」
たまらなくなって喚き声を出し、私は暴れるようにベッドから落ちた。
そこには冷たい土があって、すぐ側にズュートの足がある。
「お願い、私の顔を踏みつけて!」
「そう言ってくれると思ったよ」
彼の足が、土まみれの彼の靴が、
私の右頬にゆっくりと力を加えていく。冷たくて重くて痛い。
左頬には土の痛みを感じて、私はただ喘いだ。
体全体が痙攣ーーそれが落ち着きそうにないのできっと、
私は失禁している。
意識が朦朧としてきて、耳鳴りと割れそうな頭痛のなかで、
ズュートの声が聞こえた。
「かわいいね、ポラリス」
何度も何度も、こだまするように、彼の声が聞こえた。




