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18 いななきの高い空
「あのいななきが聞こえるかな?」とズュートが訊いてきたので、
「今日は誰が死んだの?」と返すと、
「まだ幼い少年だよ」と答えてくれた。
「いまだに分からないの。
あのいななきは、光のほうからやってくるの?
それとも闇のなかから現れるの?」
「君がいななきの鼻息を感じ取った時に教えてくれよ」
空にはもう何もないから、
私はきっと落ちていけると思いながら、宇宙までの道のりを見つめる。
暗闇にただよう太陽の熱と光も、痛みの表情で通り過ぎていく。
めまいが意識にノイズを生んで、
ひとつひとつ視界の色を消していきながら、私の存在そのものを切り刻んでいく。
自分の苦痛の呼吸が聞こえたら、
まだここには空気があったのだと知って、床へと墜落する。
頭はまるで、自分とは違う物質のように大きな音を立て、
全身を痙攣させる。でもーー
まだ私のためのいななきは聞こえない。




