表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/30

10 生まれ変わり

「もう季節が終わっていくね」と、ズュートが言った。

「あなたも春が好きなの?」と訊くと、

「まさか! 浮かれているやつを見ると憂鬱になる」

と、とても攻撃的な口調で返してくれた。


「殺したいとは思わないの? いつかのコオロギみたいに」

「何人も何人も殺したよ。でもしぶとく生き返るんだ」

「それは魂の話?」

「生き返るなんて、もちろん肉体さ」


ズュートはきっと病気だ。だけど彼は嘘を言わない。

自分の思考が現実に対して歪んでいるとは思っていないだろうし、

事実、彼はとても正常だ。


「今度は私の前で殺して。例えば、トン・イータとか」

「冗談じゃない。顔も見たくないよ」

「じゃあ、どんな人なら殺せるの?」

「生きてる実感のないやつらさ。でもそんなやつでも生にしがみついている。

 この世界には、素材がたくさんあるからね。

 でもそんなやつらの魂まで大事にする必要があるのか?」

「悪を知らないがゆえに滅びていく。いつもあなたが言っているじゃない」

「放っておけるほど、僕は人でなしじゃないんだ」


ズュートはいつも、窓を開けてくれる。

風が暖かくなってきたら春の終わりだと看護師は言った。

医者は興味がないと言った。

ズュートは、風の中身が興奮してきたら春が消える、と言った。

私の呼吸が興奮してきたら、薬の量は少しでいい。

痛みが消えるわけじゃない。ずっと続く永遠を真実と呼ぶのなら、

私の痛みは間違っていない。


今日はもう一本点滴を頼んで、

春にさようならと言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ