10 生まれ変わり
「もう季節が終わっていくね」と、ズュートが言った。
「あなたも春が好きなの?」と訊くと、
「まさか! 浮かれているやつを見ると憂鬱になる」
と、とても攻撃的な口調で返してくれた。
「殺したいとは思わないの? いつかのコオロギみたいに」
「何人も何人も殺したよ。でもしぶとく生き返るんだ」
「それは魂の話?」
「生き返るなんて、もちろん肉体さ」
ズュートはきっと病気だ。だけど彼は嘘を言わない。
自分の思考が現実に対して歪んでいるとは思っていないだろうし、
事実、彼はとても正常だ。
「今度は私の前で殺して。例えば、トン・イータとか」
「冗談じゃない。顔も見たくないよ」
「じゃあ、どんな人なら殺せるの?」
「生きてる実感のないやつらさ。でもそんなやつでも生にしがみついている。
この世界には、素材がたくさんあるからね。
でもそんなやつらの魂まで大事にする必要があるのか?」
「悪を知らないがゆえに滅びていく。いつもあなたが言っているじゃない」
「放っておけるほど、僕は人でなしじゃないんだ」
ズュートはいつも、窓を開けてくれる。
風が暖かくなってきたら春の終わりだと看護師は言った。
医者は興味がないと言った。
ズュートは、風の中身が興奮してきたら春が消える、と言った。
私の呼吸が興奮してきたら、薬の量は少しでいい。
痛みが消えるわけじゃない。ずっと続く永遠を真実と呼ぶのなら、
私の痛みは間違っていない。
今日はもう一本点滴を頼んで、
春にさようならと言った。




