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1 ポラリスーー北極星
たくさんの人のなかで道標のような存在になってほしいーー
それが私の名前の由来。
小さな頃から何度も母親に聞かされて、その度に呪いの言葉を噛み殺してきた。
友達はいない、明るい顔ができない、声は小さい、
人見知りが激しい、運動が苦手、それから、何を考えているのか分からない。
十歳の夏に不治の病を発症。
全身性の強い痛みが悪夢のように延々と続く体。治療法はなし。
大きな病院に入れられて、いつの間にか……
両親は来なくなった。
私は病院から出ることもなく、毎日、点滴と検査の日々。
繰り返される激痛のため、どんどん痩せ細り、何度も死を考え、そのたびはっとしてきた。
私の目に映る、無数の痛みたち。
そう、世界はどこも痛みを抱えている。
すれ違うどんな人も、病院の白い壁も、点滴のバックもチューブも、
無限に青い空も、そよ風も木々も花々も、電柱も塀も屋根も、スーツもスカートも、
ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ、痛みがあることを見つけて死ねなくなった。
そして私は十六歳。この全ての激痛は私のもの。だから……だから誰か、
私の涙を見つけてほしい。