エヴァンジェリン・スワロ―
お姉様視点です。
私の可愛い妹。
私のかわいそうな妹。
その名はガートルード。
私より一つ年下。
この世に生まれてすぐにお母様が亡くなられてしまった。
もちろん私にはその時に記憶などないけれど。
たった一人の妹なんだもの。
誰よりも何よりも大切にしなければ。
この私が、お姉様が守ってあげるの、いつもそう思ってる。
ガートルードは少し気難しい性格をしているみたい。
すぐに怒って、暴れて、わがままを言う。
きっとお母様がいなくて寂しいの。
お父様も仕事で忙しくしていらっしゃるし。
だから、私がちゃんとしなければいけないのに。
どうしてかうまくいかないの。
どうしてもうまくできないの。
もっと私が年上だったら、きっともっと上手にガートルードをあやしてあげられるのに。
困った時は、いつもお母様から贈られたというぬいぐるみのグウに相談するの。
もちろん返答は返ってくることはないけれど。
なんだかとっても落ち着くの。
かなしい気持ちが、寂しい気持ちが、薄くなる気がするの。
だから、グウは私にとってとっても大切なお友達。
だけど、あの日。
ガートルードはこのグウを欲しがった。
他のものなら何でも譲ってあげる。
だけど、グウは駄目。
グウだけは駄目なの。
でも、ガートルードはなかなか諦めてくれなくて。
逃げても追いかけてきて。
無理やり取ろうとした。
だから、つい押しのけてしまった。
突き飛ばしてしまった。
その結果があんなことになるなんて。
まったく思いもしなかった。
池に落ちたガートルードは、溺れて、何とか助けられたけど高熱を出して寝込んでしまった。
私、とても怖かった。
可愛くて大事な妹を、私が殺してしまうところだった。
実際あの時大人の人に助けてもらえなければ、子供の私一人じゃガートルードは助けられなかった。
どうして、いいよと言ってあげられなかったんだろう。
どうして、大事にしてねと言ってグウを渡すことができなかったんだろう。
あの子には、お母様から贈られたぬいぐるみはないのだから。
きっと、だから、私のグウが、お母様から贈られたぬいぐるみが羨ましかっただけなのに。
私、お姉様なのに。
ガートルードのたった一人のお姉様なのに。
お母様の代わりに私が守ってあげなければいけないのに。
後悔して、すごく後悔して、たくさん泣いて。
ガートルードに早くよくなってもらいたくて、無理を言って看病もさせてもらった。
幸い、ガートルードがすぐに回復してくれた。
だけど、何故か池に落ちた後のガートルードは様子が変わっていた。
大人しいし。
わがままも言わない。
どこか急に何歳も年をとってしまったかのよう。
きっと、池に落ちたことがショックだったに違いない。
その原因は私。
だから、私は決心したの。
グウをガートルードにあげようって。
今のガートルードならきっと大切にしてくれると思うし。
だけど、ガートルードはそれを断った。
私の大事なぬいぐるみだからって。
貸して欲しい時に貸してくれるだけでいいって。
そんなこと、もちろん。
いつだって貸してあげる。
だって、ガートルードは私の大切な妹なんだから。
何て、良い子な私のガートルード。
大好き。
大好きな、私の妹。
今まではあまり一緒に遊べなかったけれど、その分これからはいつも一緒にいましょうね。
ね、私の大好きなガートルード?
姉から見た妹は美化200パーセント増し。