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エヴァンジェリンのぬいぐるみ

この話、サブタイの付け方に迷います。

 朝食も食べ終えて、しばらく寝たきりだった身体をほぐす意味も込めて庭の散策をしていたところ、「ガートルード!」という呼び声とともに、姉エヴァンジェリンが駆け寄ってきた。


「おはようございます、お姉様」


 何をそんなに慌ててるんだろうと思いつつ、朝の挨拶をしてみる。


 そんな私に、「お、おはよう」と返しつつ、エヴァンジェリンは心配そうな顔で私の顔を覗き込んできた。


「駄目じゃない、ベッドから離れちゃ。まだお医者様から起きてもいいって許可がおりてないでしょう?」


 この姉、本当に善人だ。


「いいえ、お姉様。もう大丈夫です。熱も下がりましたし、頭も痛くありません。逆に寝てばかりでは回復によけい時間がかかると思います」


 ……貴族の五歳時女児の話し方ってこんなもんでいいだろうか。


 いきなり十八歳口調、しかも庶民ベースで話し出してもおかしいだろうし。


 記憶が戻る前のガートルードは論外だし。


「……本当? もう大丈夫?」


 確認してくる姉に、「本当です」と返した。


「……そう」


 エヴァンジェリンは一応は納得したように頷くと、何やらもじもじとしだした。


 何だろう、トイレだろうか。


 怪訝そうに見る私に、エヴァンジェリンは決心したような顔で、手に持っていた何かを差し出してきた。


 その手に抱きこまれていたのは、ピンクのウサギのぬいぐるみだった。


「この間は本当にごめんなさい。私、お姉様なのに、可愛い妹のおねだりにあんなひどいことをして……。だから、これ、ガートルードにあげる……!」


 これは……。


 確か、姉が大事にしていたぬいぐるみである。


 自室に置いておくだけではなく、よく持ち歩いているのも見かけている。


 先日の事故は、実はこれが発端だった。


 性根の腐った性格の悪いガートルードは、よく姉の物を欲しがり強請ってもらってはすぐに興味を失くしポイしていた。


 このぬいぐるみも軽い気持ちでいつもの通りの強請ったが、姉がしぶった。


 そこで諦めればいいものの、無理に奪い取ろうとした。


 拒んで逃げる姉を走って追いかけてまで。


 無理にとろうとし、それを阻止しようとした姉がガートルードを押しのけたところ、押しのけられた先が池だった。


 うん、本当に事故以外の何物でもない。


 というかガートルード最低だろう。


 ガートルドは私であるけれど。


 その、そこまでして守った大事なぬいぐるみを、差し出そうというのか。


 姉、本当に天使の具現化した存在なんじゃなかろうか。


 善人すぎて将来が心配でもある。


 そして、その気持ちは嬉しいのだが……。


 私は姉の手にあるピンクのウサギのぬいぐるみを再度見やった。


  

 正直、本気でいらんわ。


次回もお願い致します。

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