目が覚めて
ガートルードをガードルードと書いたりガードルートと書いたりガートルートと書いたりミス連発。何故この名前にしたのか……。
目が覚めた。
私は取りあえず、手をワキワキと握ったり開いたりしてみる。
身体の方はもう問題ない。
頭もスッキリと冴えている。
記憶の方も……、大丈夫。きちんとある。
どうやら、私は私の望む私で定着したらしい。
ゆっくりとベッドから身を起こすと、服を着替えることにした。
以前のガートルードであればメイドにさせていたが、正装のドレスならともかく日常着まで人の手を借りるのは今の私には面倒なだけだ。
しかしドレッサーの中を見て改めて思う。
ゴテゴテした装飾過剰なものが多すぎではないか。
これでは動きづらくて仕方がない。
後でもっとシンプルなものへ交換してもらおう。
身支度が終わったところで、扉をノックする音がした。
「どうぞ」
そう声をかけると、「失礼致します」の声の後メイドが部屋に入ってきた。
すでに衣装チェンジ済の私を見て、メイドは慌てたように駆けよってきた。
「も、申し訳ございません。お着替えもうおすみになられたのですね。こちらにくるのが遅すぎましたでしょうか」
心持ビクビクしているような気もする。
確かに、先日までのガートルードなら「この私を待たせるなんてどういうつもりなの!」と叫びがしらに花瓶でも投げつけていてもおかしくない。
以前の自分ながら、ここで服や毛布ではなく割れ物危険物の陶器やガラスなどを投げつけるのがより始末に負えない気がするが。
しかし、もう私は以前のガートルードではない。
「問題ないわ。これからは自分のことは極力自分でするから」
そう宣言してみる。
本音で言えば、「自分のことは自分でするから放っておいて。一々手出しされると逆にうざったい」になるわけだが、これからの私は伯爵令嬢。庶民ではない。物言いには気をつけなければ。
「は、はい……」
しかし昨日までとは百八十度別の指示を出されるメイドにとっては寝耳に水。
しかし慣れてもらうしかない。
ここで、今までもことを謝罪して、心を入れ替えたとでも説明すれば話が早いかとは自分でも思う。
が、それは嫌。
頭を下げるなんてことは極力したくない。
いらないプライドだけはその辺の山よりよほど高いのだ。
自覚はあるが、直すつもりも下げる予定も今のところはない。
性分なので仕方がない。
幸いこのガートルードはまだ五歳。
いくらでも変わっていくお年頃だ。
外見も内面も。良い方へも悪い方へも。
成長したと思って周囲の人間の方に慣れていってもらおう。
「それより、私、お腹が空いたのだけれども」
反応に困りかたまったまま動かないメイドに、そう要求を出してみる。
この家の朝食は個別に部屋でとるのだ。
もちろん使用人は違うのだけども。
「は、はい。かしこまりました。すぐにご用意いたしますので今しばらくお待ちを」
そう言うとメイドは頭を下げ、慌てるようにして部屋を出ていった。
慌てすぎて途中で転びそうになったのもしっかりと目に入った。
そんなに急がなくても、今の私はもう椅子など投げたりしないのに……。
次回もお願い致します。