プロローグ
また連載スタートです。ぼちぼちお願い致します。
「あんたなんかいなくなっちゃえばいいのに」
そこからの記憶は、ない。
世界は暗転し、そのまま途切れた。
意識が切れる前、頭に強い衝撃を受けた。
いや、衝撃だった?
水に落ちたのではなかった?
それで息が出来なくて、吸い込もうとしても水がどんどん喉の奥に入ってきて苦しくて……。
いや、本当にそうだった?
何が本当で、何が真実?
ああ、頭が痛い。
「…………」
何か、聞こえる?
なん
「…………ド! ……ルー……、……トルード……!」
何? 何を言ってるの?
「……ガートルード!」
「…………っ」
ふっと弾けるように、意識が浮上した。
その瞬間暗闇だった世界に、光が差した。
いや、正確に言うと閉じていた目を開けたことによって、日の光が目に入ってきただけのことであるが。
「…………?」
「ガートルード!」
状況が呑み込めず、ぼんやりと目を開けた状態のままの私の前に、影が差した。
見上げると、そこには。
金のふんわりとした巻き髪が日の光を浴びてキラキラと輝き。
白い顔には二対の輝く新緑の宝石のような瞳。
そこから溢れ出る涙は真珠のような煌めきを持っていて。
淡い桃色の唇は、何かの言葉を紡いで震える。
そんな可愛らしい女の子が、私を覗き込むようにしてそこにいた。
何これ天使?
え、私死んだんだっけ。
混乱する私に、その女の子はボロボロと涙を零しながら謝ってきた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ガートルード! でも良かった。本当に良かった。ガートルードが無事で、本当に……。ごねんね、本当にごめんなさい……!」
そんなに必死になって謝れても、状況がよくわからない。
何だか頭がぼーとする。
身体は妙に重くて寒い。
これは、全身びしょ濡れなんじゃないだろうか。
ここはどこなんだっけ。
この子は天使ではないみたいだけど、誰なんだっけ。
私は、一体誰だったんだっけ……。
ああ、頭が重い。
何も考えられない。
目がもう開けていられない。
意識がまた、深く、深く沈んでいく……。
「……? ガートルード? ……ガードルード!?……」
おそらく私の名前を呼んでいるのだろうけど、返事も反応も出来ない。
ただただまた暗闇に取り込まれていくのを感じるだけ。
その意識が途切れる寸前、またあの声が耳にこだました。
「あんたなんかいなくなっちゃえばいいのに」
次回もお願い致します。