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とある高校の365日

文化の日

作者: 照月雫

少し人工的な光が、チカチカと輝く。


「よし……」


準備は万端。僕、海堂悠馬は最後の点検をしていた。今日、僕はずっと好きだった彼女に告白する。


受験の日、消しゴムを忘れた僕に声をかけて、まっさらな消しゴムを貸してくれた。お互い志望校に合格したが、運悪く同じクラスにはなれず、一方的に見つめるだけという長く辛かった日々。それも今日で終わりだ。


文化祭の出し物という名目でプラネタリウムを作った。彼女はきっとキラキラしたものが好きだから。二人だけの星空の下、かっこよく想いを伝えるのだ。


「完璧……」

「何が完璧なの?」

「へっ!? は!? え!? ち、千島さん!?」


いつの間にか、その彼女が目の前に立っていた。千島りか。十五歳。隣のクラスの小柄で可愛い女の子で、僕の想い人。


「え、えーと……サイエンス部へようこそ! プラネタリウムの見学でよかったかな?」

「うん。海堂くんが誘ってくれたんじゃない。忘れたの?」


ふふっ、と千島さんが笑う。もう星なんてなくても十分明るい気がする……。本当に可愛い。


「あっ、こ、ここ座って! ええーと用意するね!!」

「うん。……凄いね、これ全部海堂くんが作ったの?」

「う、うん! 一応」


残念ながらサイエンス部は一人なもので。一人でコツコツ作っていた。


褒められたことに照れながらも、プラネタリウムを起動させる。


「わぁ……!!」


千島さんが驚き、そして笑顔になって星空を眺める。


綺麗だった。プラネタリウムの光なんかよりもずっと。ああこの人が好きだ。なんとなく思った。


「千島さん」

「なあに?」

「あの……」


好きです。


言うはずの言葉は発されることはなく。


「あの……す、好きな人とかいる?」

「え?」


おいおい、と自分でも思った。ああなんでこうなるんだ。もしサッカー部のイケメンとか言われたらどうするんだ。ああもうなんで。もうだめだ。変な人だと思われた。ああ……。


悪い予想がグルグルと回る。返事よ来るな。誤魔化せ。早く……!


「や、やっぱり今の無しにーー」

「いるよ」

「あ…………」

「……うん。いるよ」


照れ臭そうに笑う彼女から目をそらした。ああ本当に僕は意気地なしで馬鹿だ。聞きたくない。聞きたくないのに、口は意思に反して言葉を発する。


「……どんな、人?」

「うーんとね」


嫌だ聞きたくない。きっとクラスのあいつや噂のあの先輩のことだ。嫌だ。知りたくない。


「運動が苦手で、イケメンでもないし、全然目立たないの」

「え?」

「それにちょっとロマンチストだし、独り言言ったりするし……。でもね、素敵な人だよ」


そんなの当てはまるのは……。希望を持ってもいいのだろうか。恐々とその答えを求めて口を開く。


「その人って……」

「あ、そろそろ帰らないと! 海堂くん、誘ってくれてありがとう! すごく綺麗だったよ」

「え、あ……」


行ってしまう。今、言わないと、行ってしまう。


「あの!」

「どうしたの?」

「千島さん!」


大きく息を吸う。








「貴女が好きです!!」








「知ってる」








彼女の香りがすぐ近くでする。


「私はねーー私の好きな人はね」


耳元に吐息がかかり、高熱が出た時のようにくらくらする。



「内緒」



ふわりと彼女が離れる。


「またね、海堂くん」


いたずらな微笑みにぐらりと心が揺れる。


ああ、やっぱり僕は貴女がーー




ーー大好きだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 待っておりました。 今回は他よりも比較的、直球な恋の物語でしたね。 >「知ってる」 >「内緒」 >「またね、海堂くん」 完璧なコンビネーション。キュンキュンさせて頂きました。
2016/12/16 06:58 退会済み
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