#2 失われた過去。一つの光。
どうも私です。投稿ペースはだいぶ遅いです(汗)。不慣れな点もあり、時間もあまりないため、次話投稿が遅れてます。今回が第一章第二話です。不適切な点などがあれば、ご指摘いただけると幸いです。
(うぅ……気持ちわりぃ…………)
朦朧とする意識の中で、確かに感じる気持ち悪さ。
体を動かすことすら、目を開けることもできない。
あれからどのくらい落下したのだろうか、今もまだ落ち続けていた感覚が残り、身体が浮いているようだ。
そういえば頭は?
血が出るほどの衝撃を喰らい、無事なのだろうか、俺は。
一体何なんだ。突然、変なコスプレロリが現れたと思えば、突然変な魔法を使われ、突然落とされる。
ドッキリと言っても度が過ぎる。今時そんなことすれば、すぐにどっかのサイトのトップニュースにランクイン間違いなしだ。まったく。
とにかく白黒の巫女……だっけか、あいつ次会ったらただじゃおかねぇからな。
心の中でそう決心する。
いきなり何の説明もなくこんな目に合わせたやつに一矢報いたいのだ。そうしないと、腹の虫が治まらない。
心の中で憤りを感じていると、突然誰かの声が聞こえる。
「――丈夫――か――!――――」
(……ん?……なんだ?)
優しそうな女性の声が聞こえる。
その声は徐々に鮮明になって薄れていた意識の中に響いてくる。
「――きて――。」
「起きて――――。」
「起きてください!!」
ハッ!と意識が戻る。
眩い光が、まず目に映った。そして、仰向けで寝ている自分を取り囲み、剣や杖などを持っている沢山の人がいることがわかった。そんな中一人、さっきの声の女性だろうか、二十代ほどで金髪のショートヘアに花の髪飾りした、豪華な衣装の女性は自分の傍らに座り、心配そうな顔をしていた。
「ここは……」
寝起きの時と似た感覚、それに加え若干の気持ち悪さがある。
それまで傍らで、心配そうな顔をして座っていた女性は白い眼をキラキラと光らせ、パッと笑顔になり周りに顔を向けた。
「あぁ!よかった!皆さん、無事生き返りましたよ!」
その言葉を聞き、一瞬唖然とした。
「――い……生き返りま……した?」
歓喜の声を上げる周囲の人々。
女性は手を合わせ、こちらに向き直して喜んでいた。
まて、おかしい。
俺……死んだのか?そりゃまぁ結構な高さから落ちたはずだ。それで気を失って……。
(そうか、死んだのか……)
色々と考えた結果、この結論に至った。
受け入れられないとかそんな感情はない。
ここは異世界だ。魔法という概念があってもおかしくはないだろう。
それで、瀕死……というか死んだ俺を、ザ◯リク的な復活魔法でも使って蘇生させたってわけだ。
強ち間違ってはいないだろう。
「立てますか?」
女性が少し心配そうな顔をして問いかけてきた。
「え……あ、はい、立てます」
返答しながら立ち上がる。
「広っ……」
立ち上がってようやく気付いた。
ここは洞窟だ。それもずいぶん大きい。
真上は円柱のような形をしていて、光が差し込めている。恐らくそこから落ちてきたのだろう。
辺りは、鍾乳石や水晶のような鉱石が散りばめられ、光を反射して綺麗に光っている。
少々肌寒いくらいの気温で、うっすらだが風も感じる。
あまりの広さに目が輝く。
「三人目の定召人様、お体は大丈夫ですか?」
女性は笑顔を見せ話す。
今はちょっと気持ち悪い以外別段悪いところはない。
「はい。 多分大丈夫だと思います……」
「えーっと、三人目? サダメビト?」
すぐに疑問に思った。
三人目ってことは一人目二人目がいたということだろう。
サダメビトってなんだ?
「はい。 あなたはこれで三人目の定召人様です。定召人というのは……」
そこまで言うと、何かに気付いたのかハッとした表情をし、少し照れて話し続けた。
「すみません! 申し遅れました! コホンッ……私は、王都ローグァルド第百五十六代目王女 レナ・グリムクォーツです」
「定召人様をお迎えにやって参りました。詳しい説明は私どもの城でご説明します」
王女?
今王女って言った?
王女といえばあれだよあれ。権力とか地位とか半端ない人だ。
ていうかいきなりそんな人に出迎えられるとか、俺持ってるな。
これはもう、ついていくしかないだろ。
「わかりました。 行きましょう!」
なんかよくわかんないけど、様付けで呼んでいるあたり、俺は相当優遇されているらしい。
これは、快適で順風満帆な異世界ライフを満喫できそうだ!
「そうですか! それでは城の方まで案内させていただきます!」
「はい、お願いします!」
そう言ってレナ王女の後を追って、歩き始める
これからどうなるんだろうか。
まずは、この世界やその[サダメビト]とかいうやつを説明してもらわなきゃな。
それで、城で過ごして、いろんな人と出会って、何不自由なく刺激満載の楽しい生活を送るんだ!
希望ある未来が次々と想像できる。
こんな待遇、最高過ぎる。
暫く歩いていると洞窟の出口だろうか、あたたかな光が差し込んでいる穴が見えた。
それまでこちらに背を向けて歩いていたレナ王女は、振り向きながら、
「ここを出たら、奥の方に見えるのが王都ローグァルドです。」
と丁寧に説明してくれた。
なるほど。王都っていうくらいだ、そりゃあもう、すごいんだろうな。
これまで、ゲームやアニメで見てきた壮大な姿が想像できる。
徐々にあたたかな光の中に入っていく。
それまで肌寒かった気温はだんだん暖かくなり、体全体を包み込んでいく。
(これから、俺の新しい人生が始まるってわけだ!)
そう思った刹那。
言いようのないほどの痛みが、ユキヤの心臓を深くえぐった。
「うぅっ……!?」
視界が九十度回転し、全身の力が一気に抜けていく。
「な……んで……?」
言葉にできない言葉が、喉を掠れて消えていった。
うっすら見えた視界には、驚きで目を見張った姿のレナ王女や、俺を取り囲む沢山の人たちが見えた。
完全に倒れきったユキヤの身体は、今まで感じていた温もりでさえも感じることができない。
「ッ!……ア゛ァ………」
だんだん空気が薄れてきて、息ができない。
苦しい。
こんなはずじゃなかった…。
さっきまであんなに幸せだった……。
これからの希望で溢れていた………。
なのに…なのに……!
『契約しろ』
(!?)
『生きたいのだろう?ならば契約をしろ』
その声は、もう何も感じなくなったユキヤの中で響いた。
契約?なんのことだ?
低く図太い声は続けて話した。
『お前はまだ、灯を消してはおらん』
(ともし……び?)
『だがその灯も、あとわずかで消えるだろう』
『助かる術は契約するのみ』
『我の力を少し分ける。その力で左手を伸ばせ』
『そうすればこの状況を打破できるだろう』
(契約?……なんのこと……だ……?)
『さぁ審判の時だ』
そう言うと、突然うっすらだが力が増えた感覚がした。
突然倒れた俺、そしてその中で語りだしたあの声。
契約契約と、五月蠅かったのを覚えている。
そして奴はこう言った。
『その力で左手をばせ』『そうすればこの状況を打破できる』…と。
奴が言うには、≪左手を伸ばせば、この状況を打破≫できるってわけだ。
俄かには信じがたいが、迷っている場合じゃないことくらいわかる。
最後の力を振り絞り、左手を力いっぱい伸ばす。
「ッ……うぉぉぉぉッ……!!」
その左手は、空を切ることなく、温かな何かをしっかりと掴んだ。